マツダ、金属積層造形でダイキャスト型入れ子を補修
- 投稿日時
- 2026/03/09 13:47
- 更新日時
- 2026/03/09 13:51
最終的には製品へのAM適用目指す
マツダが金属AM(積層造形)を活用し、量産鋳造用金型の補修プロセスを着実に確立している。技術本部 パワートレイン技術部 PT先行技術グループの西昇一シニアエキスパートは「補修で蓄積したノウハウを起点に、最終的には製品適用へつなげたい」とロードマップを語る。
同社はダイキャスト金型の修理に取り組み、昨年11月から2部品で量産投入を実現した。「従来は使い捨てにするか、TIG溶接で修理しても、熱影響による硬度低下や品質ばらつきが課題だった。AMなら熱影響を極限まで抑えながら、必要最小限の肉盛りで形状を復元できることが分かってきた」と西氏。具体的には、ダイキャスト型の入れ子部品を対象にAM補修を適用した。
シリンダーブロック量産素材の入れ子は、構造部の損耗は比較的少ない一方、形状部で摩耗・欠損が起きやすい。一般に熱間金型用合金鋼SKD61は切削加工を前提とした材料で、耐熱・耐摩耗の要求が厳しい領域では限界も指摘される。しかし近年、熱伝導や耐摩耗性を高めた粉末材料が登場し、適用の現実味が増した。「物性値としては“わずかな差”でも、鋳造現場では効果がはっきり出る。DED方式で一粒一粒を積み上げることで、高機能材による局所強化や冷却性能向上も狙える」とする。
難所は材料選定だけではない。「ポイントは、どこに何層積むか、どの面を仕上げ面として成立させるか。希釈(母材との混ざり)や材質差による熱膨張率の違いなど、複数の要因が絡み合う。答えは条件の最適化の先にしかない」と西氏は言う。実際、同社は1〜5層まで多様な条件で検証を繰り返し、最適な積層パターンと仕上げ面の取り方を割り出した。
さらに量産適用では『採算』が絶対条件となる。「AMを使ってもコストが下がらないなら、結局は車両価格としてお客様負担になる。だからこそ、すでに量産している膨大な部品群に対し、AMでコストダウンのメスを入れるほうが顧客価値になる」。設備メーカーが提示する一般解ではなく、各社の鋳造条件・金型思想・現場の運用まで含めて詰め切る必要がある点を踏まえ、「すべてを合わせた最適解は、現場のデータと経験を持つ我々にしか出せない領域。金型づくりや鋳造・鍛造で蓄積してきた膨大なデータを、どうAMプロセスへ融合させるかが要になる」と強調する。
鋳造には完成車メーカーごとに流儀があり、工程は各社最適化されている。「各社に適した形でAMを使いこなすのが現場力だ」。その結果、シリンダーブロック量産素材の入れ子では寿命2.2倍、入れ子コスト50%減(3万ショット換算)を達成した。
横展開の鍵は現場の実装力にある。「条件設計やプロセスは生産技術側が用意するが、実際に回すのは現場のオペレーター。類似事例をもとに展開できれば、現場が“使い倒す”ことでコストダウンにも機能向上にもつながる」。AMを“特別な技術”として扱うのではなく、改善の選択肢として定着させる狙いだ。
■ロータリーを砂AMで
「AMを使うこと自体が目的ではない。お客様の期待に応え、快適性や価値向上に寄与するために、量産車メーカーとして“安くつくる”責任がある。レースカーやスペースシャトルを作っているわけではない。多くのお客様の手が届くところに収めるのが量産車メーカーの役目だ」。そのうえで西氏は、「最終部品の製造」を目標とするロードマップを並走させながらも、まずは採算が取れる領域を一層一層、AMのように積み上げ、事業基盤を強固にしていく考えを示した。
この積層的な実装は金属AMに限らない。量産終了後の金型保管・管理という課題に対しては、中子製造に金型レスの砂AM工法を採用。ロータリーエンジンを象徴する“三角形のおむすび型”ローターのサービスパーツ提供にもつなげている。顧客満足度を高めるため、従来はメーカー指定の人工砂を用いていたが、鋳造量産で使用する珪砂とそのリサイクル工程を砂AMに組み込むチャレンジも進め、目途が立ちつつあるという。「価格貢献でお客様に返したい」という姿勢は一貫している。

西昇一シニアエキスパート
(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)