対象広げるレーザー加工
- 投稿日時
- 2024/12/10 09:00
- 更新日時
- 2024/12/10 09:00
微細、脆性材、厚板も非接触で
レーザー加工の能力が飛躍的に高まっている。微細・高速加工に厚板の切断、酸化被膜の付加……と切削や放電では難しい加工をこなす。非接触なので自動化しやすいという利点もある。
東京で11月10日まで開かれたJIMTOF2024で目を引いたのはフェムト秒レーザー加工機だった。このマシンはフェムト秒(1000兆分の1秒)という超短パルスでレーザー発振し、ワークの周囲に熱が伝わる前に加工を終えてしまう。半導体の材料であるシリコンやSiC(炭化ケイ素)、高純度アルミナなど脆性材の加工に向く。同機で先行するGFマシニングソリューションズは切削では難しいダイヤモンド、ジルコニア、セラミックなどの加工を睨み、「切削の前提となる刃物の研究には限界がある。フェムト秒レーザーは光を通す材料なら何でも対象になる」と訴える。レーザースポットの直径は30ミクロン。金型の切削加工で求められる1000分台は出ないが、100分の3㍉の形状精度を出せる。1億円以上と一般的な加工機に比べると高価だが、「商談になると割と早い。非接触で衝撃のない加工が重宝されている」と手応えを話す。
ソディックも同展にフェムト秒レーザー加工機「LSP4040」を出品。後発メーカーとしてのウリは価格を抑えたうえでの柔軟性だ。「スポット径、波長などお客様の希望を聞いてからつくり始める。発振器も選べる。他社製ではオプション追加で高くつく」とする。加工精度は表面粗さでRa0.5ミクロン。金型表面のテクスチャリング(微細な凹凸の付加)などの用途を想定する。ガルバノスキャナヘッドを用いてストレート穴があけられる機種を開発中という。
■垂直断面や50㍉切断も
ストレート性の高い切断面を特長とするのは牧野フライス製作所のウォーターガイドレーザー加工機「LBシリーズ」。レーザー加工は通常、光を絞って焦点付近で加工するため切断面はどうしても斜めになる。ところがLBシリーズは水ジェット(細い水柱)でレーザービームを誘導することで板面に対して垂直にカットできる。水に最も吸収されにくい波長532ナノ㍍のグリーンレーザーを利用することで、レーザーは水ジェットからはみ出さない。半導体分野を中心に航空機(タービンブレードの冷却穴)、切削工具(PCB、cBN工具のチップ先端部)、医療(ステント)分野の脆性材部品の切断と穴あけを狙う。
レーザーといえば板金加工のイメージが強いが、もはやそうとも言えない。アマダのファイバーレーザー加工機「REGIUS-3015AJe」(出力26㌔ワット、発売日は未定)は出力を従来機の2倍以上に高め、軟鋼で厚さ50㍉(参考)の切断ができる。1つのモジュールで15㌔ワット(これまでより25%アップ)を出せる発振器を開発したことで実現。だが同社はこうした数字にこだわらない。「(大きな)数字も大切だが、ビームの品質のほうがもっと大切。パワーが無駄になるので。薄いものから厚いものまでビームを変えて高品質にカットできる」と利点を話し、需要の高まる建機・農機分野の高速切断を睨む。
GFマシニングソリューションズが金型加工向けに機能強化したフェムト秒レーザー加工機「LASER S 500 U」で酸化被膜を施したステンレス鋼
(日本物流新聞2024年12月10日号掲載)