1. トップページ
  2. ニュース
  3. 食品業界、工場用地取得半導体越え

食品業界、工場用地取得半導体越え

昨年の「食品工場スマート化総合展」の様子

旺盛な設備投資意欲も進まぬ自動化・省力化

 経済産業省の工場立地動向調査によると、2023年に食料関連業種(食料品および飲料・たばこ・飼料製造業)が新たに取得した工場立地は、敷地面積ベースで前年比7.5%増の193㎡だった。大規模な助成を背景に新設に湧く半導体関連を含む電子・デバイスが167㎡であり、件数・敷地面積ともに他の製造業種を大幅に上回る水準だ。一方、「食品産業の生産性向上・事業承継について」(農林水産省)を紐解くと、食品産業の労働生産性(従業員1人当たり付加価値額)は、全産業平均や同業種と比較して約6割程度と低い。インバウンド需要などを見越した旺盛な設備投資意欲と裏腹に、進まぬ自動化・省力化に喘ぐ業界の姿が見えてくる。
 日本惣菜協会の荻野武氏は「製造業のなかで食品製造業は働いている人が非常に多く、また労働生産性が低い。自動化をすべきとはわかっていても、人間の手の機微な動きをロボットに置き換える困難さはもちろん、中小事業者が多い食品業界ゆえに大きな投資もできない」と話す。労働生産性の低さは賃金の低さにもつながり、平均年収250万円前後と全産業平均や同業種と比較して低い水準にある。これがますます人手不足に拍車をかけている。
 食品業界の専門紙「日本食糧新聞」の平山勝己副社長は「価格競争が激しかったこと、中小企業が多いことなどで自動化は遅れていた。コロナ禍や円安で外国人技能実習生が受け入れにくくなり、主婦パートが高齢化したことなどで人手不足が深刻化して切羽詰まっている。食品メーカーは大なり小なり、みんな工場を持っているので今後自動化省人化の需要は膨大にある」と話す。他方、金属加工や自動車産業で培ったノウハウや技術を、食品業界を含む三品業界に展開したいと考えているSIerも多い。しかし大手SIer幹部は「もっとも問い合わせが多いのが食品業界。そしてもっとも成約に至らないのが食品業界。パートタイマーさんの時給と比較されるとなかなか価格が合わない」と苦笑する。中堅即席めんメーカーの社長も「製造した食品を持って帰ってもらったり、まかないがあったりと時給以外のプラスαやアットホームさがあり、外国人技能実習生の受け入れも含めて、なんだかんだでこれまで人は来てくれていた」とする。
 しかしコロナ禍を経て状況は一変した。「数年前までは人件費と投資額の比較だったが現在は、そもそも人が集まらず事業が立ち行かない」(大手機械商社)としFOOMA JAPANに出展した際も「すぐに来てほしいという案件が増えている。それがこれまでと違う」(同)と実感したという。これまでの様子見から、自動化投資の本格化へ潮目が変わった可能性が高い。

■関西で食品産業の自動化展誕生

 昨年、食の都「大阪」で「食品工場スマート化総合展」が産声を上げた。日本食糧新聞社が主催し、23年に3万人を超える来場者を記録した食品や機器・容器の専門展示会「FABEX関西」と同時開催され、食品製造に関する専門誌「月刊食品工場長」が共催するもの。今年は1016日から18日にかけてインテックス大阪で開催される。出展申し込み締め切りは819日を予定する。FABEXは食品と機械を混合展示する珍しい形式の展示会。その大きな動員力を活用し食品と機械を橋渡しするスマート化技術で自動化・省力化へ貢献する考えだ。
 まだ誕生したばかりの展示会だが「これまでのデータから大阪会場では8割以上が関西からの来場者になる。関西には関西の市場があり東京開催とは違ったアプローチが出来る。インバウンドを見越した旺盛な設備投資意欲と、深刻な人手不足を背景に今後大きく成長していく」(平山副社長)と自信を見せる。昨年の出展者からも「関西では最大規模のイベントであり、思いのほか多くの引き合いを頂きリアル展示会の良さを再認識した」との声も聞かれる。西日本では食品工場の自動化・省人化をテーマにした展示会は少なく、西の「FOOMA JAPAN」へ成長していくか、第二回目が試金石となる。

食品業界02.jpg

2024725日号掲載)