技能五輪国際大会「AM職種」に日本初参戦
- 投稿日時
- 2026/03/12 09:00
- 更新日時
- 2026/03/12 09:00
16兆円市場への「鏑矢」となるか
今年9月、中国・上海市で開催される「第48回技能五輪国際大会」。2022年から種目となった「付加製造(AM)」部門に、日本代表が初めて参戦する。日の丸を背負うのは、宮堂頌也選手(豊田自動織機)だ。欧米・中国に主導権を奪われ、長らく「様子見」が続いていた日本のAM界において、その沈黙を破る待望の挑戦が始まる。
背景には、2028年11月に愛知県で開催される第49回大会がある。21年ぶりとなる自国開催を前に、日本産業界と厚生労働省は、AM部門における日本人選手の不在に強い危機感を抱いていた。
この難局に立ち上がったのが、ダイカスト製品等で国内屈指のAM活用実績を誇る豊田自動織機だった。本来のロードマップでは今大会を経験の場とし、次回の愛知大会で金メダルを目指す計画だが、宮堂選手は「国際大会の出場枠は一度きり。上海で金メダルを狙いに行く」と闘志をみなぎらせる。
AMが次世代の基幹技術と目されながら、普及が足踏みする理由はどこにあるのか。金沢大学設計製造技術研究所の古本達明教授は、その技術的難度を指摘する。
金属AMは熱源による溶融・凝固を繰り返すため、環境因子を含めた膨大なパラメータが相互に干渉し合い、現象の理解を困難にしている。また、一台で完結する工作機械とは異なり、サイズや強度に応じて最適な装置を選定し、後工程まで含めた工程設計が不可欠だ。
古本教授は「AM市場は2034年に1000億ドル(約16兆円)規模に達するとの予測もあり、革新的技術であることは疑いようがない。しかし現状はイノベーター理論で言う『キャズム(深い溝)』の時期にある。品質保証を伴う実装には、技術的なブレークスルーが不可欠だ」と分析する。
■AM EXPO、防衛・経済安保に焦点
AM振興の起爆剤として期待されるのが、5月20日からポートメッセなごやで開催される「AM EXPO名古屋」だ。
今会では「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の展示や、2028年技能五輪愛知大会に向けたセミナーも予定。単なる情報収集の場を超え、国内のAM実装に向けた具体的な「挑戦の契機」とすることを目指す。主催する日本AM協会の澤越俊幸専務理事は「今こそ、挑戦へのアクセルを『踏んで』『踏んで』『踏んで』、踏みまくりましょう」と意気込む。
(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)