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MEX金沢2025レビュー、自動化・工程集約が百花繚乱

投稿日時
2025/06/10 09:08
更新日時
2025/06/10 09:19
ヤマザキマザック 複合機「INTEGREX j-200 NEO」

深刻化する人手不足

今年のテーマを「技術が切り拓く、未来の鼓動」としたMEX金沢が5月15日から17日までの3日間、石川県産業展示館で開催。1号館が新たに会場に加わり、過去最大の279企業・団体、850小間の開催に。3万3181人が来場した。

開会式では来賓を代表して馳浩石川県知事が「過去最大規模であり最先端の展示会だ。そこで県内の大学生の皆さんと企業のマッチングも行う。また過去最大の200社以上の県外からの参加もあった。感謝申し上げる。ぜひ県内企業は県内で学生が就職できるようPRしてほしい」と祝辞を述べた。

人手不足の深刻化により、石川県や近隣県の学生とのマッチング企画や、自動化や工程集約に関する展示が多く見られた反面、今展示会で初めて公開される機械は多く見られず、北陸の産業構造に則した技術的提案はやや薄かった、という印象を語った来場者もいた。

初出展機が少なかった同展で人だかりが出来ていたのはヤマザキマザックの「INTEGREX j-200 NEO」。複合機のエントリーモデルで1スピンドルミル主軸により1本の工具であらゆる方向から切削でき、使用工具本数を削減する。従来機から大幅に出力・トルクを向上させつつ、全長を短縮したコンパクトミル主軸を採用し、干渉の低減を図った。0.0001度割出しのハイパフォーマンス仕様もラインナップする。

デザインを一新、青を基調とした近未来感のあるデザインの平板ドリルマシン「ABP-616SⅣ」を参考出品したのはタケダ機械。重要な機能面にも注力し、軸制御のスピードを25%アップしたほか、ツーリングのストックも12本(従来機10本)に増やし「夜間運転など、省人化に貢献できる」とする。また油圧ユニットにインバーター制御を採用、静穏性と電気代(消費電力)の削減も目指した。

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タケダ機械 平板ドリルマシン「ABP-616SⅣ」

高松機械工業はCNC2スピンドルタレット精密旋盤「XWT-8」に開発中のサポートセンターを搭載したバージョンを出展。テールストックほどの推力はないが「小さなものならシャフトワークにも対応できる」という。またベストセラー機「XC100」の後継機となるシングル旋盤「XTS-6」も関心を集めた。6インチクラス最小のフロアスペースを実現した同機は従来機比で主軸最高回転速度が毎分500回転増、主軸加速時間を35%短縮、主軸減速時間が25%短縮と、高速化でサイクルタイムを短縮する。

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高松機械工業は「XWT-8」に開発中のサポートセンター(簡易テールストック)を搭載して展示

牧野フライス製作所は2024年10月発売の立形マシニングセンタ「V300」をアピール。従来機V33iを刷新した上位機種と位置づけられ「Y軸とZ軸の摺動面の冷却が追加され、ATCの電動化、スケールの分解能が4分の1になったなどの特徴で、高精度を実現するとともに長時間運転の安定性が上がっている」と話した。昨年、十数年ぶりの出展だった同社は「反響が良く」引き続き出展した。

新開発100本マガジン搭載のSPEEDIO「U500Xd2-100T」にパレットチェンジャー「PC-1」を組み合わせた自動化パッケージを訴求したのがブラザー工業。「100本の工具を省スペースで収めたことに来場者は驚かれている。パレットチェンジャーと組み合わせることで、ワーク交換をすると自動でツールを交換し、対応する加工プログラムを呼び出す」、「夜間無人加工などに活用できる、中小企業でも導入しやすい自動化システムだ」と自信を見せた。

■中国との競争激化

澁谷工業はファイバーレーザー溶接機を再訴求。勝田宏也執行役員は中国製との競争に苦労を滲ませ「ファイバーレーザー溶接機はパッケージ化されており、出張修理などのサービスを提供しにくい。代替機さえ用意していれば中国製でも構わないというユーザーは少なくない」とする。ただ、中国製を長期間安定稼働させるのに不安をもつユーザーも多い。同社は食品のボトリングシステムを提供しており、自社ファイバーレーザー機によるステンレス溶接で使用実績が多く「そこから得たノウハウを強みとしていく」(同)とする。

ソディックは水仕様ワイヤ放電加工機「ALN600G」のハイコラム仕様を提案した。Z軸を350㍉から500㍉に伸ばし、3Dプリンターで作った厚みのあるワークの切り出しに向く。無消耗のワイヤ面で仕上げ加工するワイヤ回転機構(i groove)はZ軸が長いことで能力をより発揮しやすい。

コマツNTCは最も目立つ位置に横形5軸マシニング「CX500」をパネル展示。切粉がワーク下に落下することで巻き込み傷などが軽減される、横形の利点を訴求するとともに空間誤差補正の標準搭載や、テーブルの段取り高さ1120㍉という低さをアピール。また昨年から新展開したFSWを展示。「当社はラインが得意で、FSW単体ではなく、搬送や検査装置も含めラインの提案が出来る。またロボットFSWも提案可能だ」とする。

3軸機ユーザーに5軸機を体験してもらい、導入のハードルを下げる提案をしたのはニデックオーケーケー。高速加工性、省フロアスペース性、良好な作業性を実現した「VB-X350」を使い、デモや操作盤の操作体験を通じて「『割り出しでも使えるよね』『うちでも使えるよね』と確認していただく」。そこからタクテックスとコラボレーションしたCAD/CAMの提案につなげていた。またVB-Xをベースにしたニデック・マシンツールのマルチタスクギアセンタ「MGC300」を展示し、北陸での建機向けのリングギア需要の掘り起こしを狙う。

回転軸にダイレクトドライブを採用したNC円テーブルを30番機に搭載して、複合加工仕様を強調した提案をしたのが津田駒工業。切削と旋削加工対応モデルで「微細な加工やEV関連の箱もの、例えばモーターのケーシングなどをターゲットに、ワンチャッキングで加工が行える」とする。

ZOLLER Japanはツールプリセッター「smile」を初だし。測定の高さや径の制限はあるが「venturion」と同性能で価格を半分以下に抑え「上位機種を使い大は小を兼ねるともいえるが、そこまで機能が必要のない現場もある。販売面では提案のバリエーションが増えるので待っていた機種」とした。

ジェイテクトとコラボして円筒研削盤の治具「ケレ」の自動装着を実演したのは松本機械工業。ロボットシステム「スマートテラスAIO」によるもので、「一直24時間」・夕方5時から翌朝8時までの15時間、ケレも含め様々な無人段取替を、最大8回可能にするという。

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松本機械工業はジェイテクトとコラボし円筒研削盤の治具「ケレ」の自動装着を実演

超音波カメラを使用して、さまざまな設備からのエア漏れ発生箇所を特定し、推定漏れ量を測定する富士機工。数本のチューブを並べ、そのうち一本がエア漏れを起こしている模型を設置。実際に超音波カメラを来場者がかざして確かめられる展示で、わかりやすく伝えていた。






【INTERVIEW】中村留精密工業 代表取締役社長  中村  匠吾 氏


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中村留精密工業 中村匠吾社長「NT-Flex」の前で

――今年の状況は。

「数字は公表していないが販売増を見込んでおり、10~20%の生産業務増を組み込んだ体制をとっている。新組立工場『MAGI』の稼働によって、納期でお客様を待たせず販売機会を増やす」

――引き合いが多い理由は。

「中村留は何々業界に強い、をやっていてはダメで、変化に強い機械をつくっている。コロナ禍で航空機向けから電気部品に製造を転換した顧客がいたが、それが出来たのは我々の機械がコンパクトだが加工能力が高いから。『中村留の機械を使っているところは変化に強いから倒産率が低い』とお客様から言われた」

――メーカー冥利に尽きるエピソードだ。工作機械や工具の破損検知を行う「Dr.Tool」は。

「お客様からの要望は『機械の中にデータがあるんだからもっと簡単にやれないか』だ。Dr.ToolはNCアンプ下の導線にセンサをカチッとグリップしNCポートにLANケーブルを接続しエッジデバイスに接続すれば15分で設置完了。AIを活用して摩耗検知機能や破損検知を行うのでAIビジネスでもある」

――他社の機械にも設置できる。その狙いは。

「Dr.Toolはもちろん、新ロボットシステム『RoboSync』も他社機搭載できる。旋盤だけじゃなくマシニングセンタにも搭載できる。『現場の負担を削る』という理念を広げるには、当社の複合旋盤のみではインパクトが弱い。自社の機械を売る差別化技術で終わっては意味がない」

――プラットフォームビジネスを目指すのか。

「そこまでかっこいいことを言える段階ではない(笑)。ただ、日本でIoTプラットフォームがなかなか成功しないのは『これが出来るという価値』を提供するキラーアプリケーションがないからではないか。破損検知はキラーアプリケーションと考えている」

――今展で出展コンセプトは。

「『限られたスペースを価値に変える』をテーマに出展し、1年以内の新機種『AS-200』、『N

T-Flex』、『WY-150V』などを展示した。『こんな小さなスペースでここまで加工能力が高いのか』と驚かれる。複合加工を始めやすい提案を強化している」






【INTERVIEW】京町産業車輌  代表取締役社長  大野  雅隆 氏


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京町産業車輌 大野雅隆社長。右は投入機

――景況感は。

「当社製品は物流関係向けが多いので、トランプ関税の影響は少ないと思っていたが4月ぐらいから出てきた。受注が3分の2ぐらいになっている。ただ、一時的な様子見であり回復傾向になるだろうが、その時間が長くなりそうだ」

――MEX金沢での一押しは。

「投入機だ。生ごみなどを投入するのに使われ、環境関連の設備投資は活発で、投入機の動きがいい。現在、高さ8mに投入する大型のオーダーメイド機の受注を受けて第二工場で製造中だ」

――ほかの製品群の動きは。

「ひっぱるぞうは自動車関連で動きが良く愛知や静岡で引き合いが多い。北陸で言えば、医薬品事業者が多い富山でステンレス製の商品群が動いている」

――新製品は。

 「フォークリフトで横の荷物に対応する機種が一部あるが、リフターで横取り機能を実装する『横取りリフター(仮称)』を開発中だ。国際物流総合展で披露する予定だ」






【INTERVIEW】石川県鉄工機電協会 専務理事 稲葉 良二 氏


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石川県鉄工機電協会 稲葉良二専務理事

――景況感は。トランプ関税の影響は。

「トランプ関税に関しては発注企業側も明確な方針が出ていないし不透明で影響はこれから。石川県の景況感は、それ以前から悪い。コスト増、人件費増、そして人手不足の深刻化だ。50人以下の企業では日本人を採用するのは難しい現状がある。富山・福井県の大学にも声かけて学生とのマッチングで700人以上来てもらった」

――新たな試みは。

「当協会としてブースを構えて、会員企業のDXや省力化に貢献する11社・1団体とデジタルマッチングをするもの。MEX金沢と別会場でやっていたが、内部化して、出展企業も、接客の合間に寄ってもらえるという狙いだ」

――県外企業の参加も多い。

「今回、初めて200社を超えて210社になった。県内企業は固定しているから、県外の出展者や来場者を増やしていくことが活性化に繋がる。新幹線の開業に合わせて県外の参加者が増えてきている」

――石川県産業展示館の建て替えを県に要望している。

「震災復興の影響で遅延しているが、そろそろ動き出すとみている。今回、出展者の駐車場を別場所に移動した。それにより会場の交通渋滞が緩和された。来年以降、来場者も別の駐車場を使ってもらいピストン輸送する。これは建て替え工事中の施設内駐車場不足を想定した実証実験の意図を含む」

(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)