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高まる冷食需要を支える最新物流倉庫

投稿日時
2025/11/07 09:00
更新日時
2025/11/06 17:07
2階にある無人稼働の冷凍自動倉庫エリア。取材当日は7割ほどの保管状況だった

霞ヶ関キャピタル・LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ
開所1年で9割超の高稼働

タイムパフォーマンスの重視や家事の軽負担化など暮らし方が変化する中、冷凍食品の需要が高まっている。一方、都内の冷凍倉庫はひっ迫し、設備の老朽化も深刻化している。こうした課題に対応すべく、霞ヶ関キャピタルは昨年、保冷保管エリアの無人化を目指す冷凍自動倉庫「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」を開設。子会社・X NETWORKの冷凍保管サービス「COLD X NETWORK」と組み合わせ、猛暑の今夏は9割超の稼働率を記録した。人手不足や過酷な作業環境の改善を図る最新物流拠点に迫る。

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X NETWORKの轟木和誠氏。LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰをほぼ一人で管理する

首都圏北西エリアに位置する「LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ」は延床面積約1万平方㍍を有する冷凍自動倉庫。地上2階建てで、吹き抜け構造の2階部(通常の建物の4階相当)にはマイナス25℃の保管エリアを、1階にはチルド帯(約5℃)の入出荷エリアを備える。2階部にはIHI物流システム製の高さ約20㍍のスタッカークレーン方式のパレット自動倉庫を導入。4190パレットを無人で保管できる。

自動倉庫と組み合わせるのが、1日・1パレット単位から荷物を預けられる冷凍保管サービス「COLD X NETWORK」だ。霞ヶ関キャピタルの子会社であるX NETWORKが提供し、ユーザーは専用のサービスサイトから利用申込みが行えるため、電話やFAXベースのやり取りなく最短翌日から荷物を預けられる。

一見すると“絵に描いた餅”に思える倉庫とサービスだが、今夏の稼働率は94~95%。冬の「クリスマス」「おせち」商戦に向けて既に97%以上の受注を得るなど波に乗る。

「この1年ほどでサービスサイトへの登録数は300社超。食品大手のお客様にも利用いただいていますが、意外と中小企業や個人事業主の方からの利用の方が多いです」

そう話すのはX NETWORK オペレーション企画部 海外事業部 シニアヴァイスプレジデントの轟木和誠氏。轟木氏によると主な利用目的は「既存の倉庫や業務用冷凍庫などでの保管キャパシティから溢れた製品の一時保管」だという。

■自動化設備で誤出荷防ぐ

冷凍冷蔵倉庫を中心とした物流不動産ディベロッパーであった霞ヶ関キャピタルが、全くの新業態でなぜこれだけの成功を収めているか。その成功の一端は「オペレーション業務の効率化にある」と轟木氏は語る。

立体自動倉庫に保管する商品は全て専用のパレットに乗せ換えて格納する。各パレットにはバーコードが貼付され、積載貨物とパレットが常に紐づけられている。入出庫のたびにデータがWCS(倉庫制御システム)に自動で記録が残り、トレーサビリティを確保する。

「荷物に人が直接触れるハンドリング回数≒誤出荷・破損のリスクです。もちろん、自動倉庫前後の前処理段階では人手による作業も発生しますが、例えば、パレットの載せ替え作業にはオムニヨシダ製のパレットチェンジャーを活用するなど極力自動化しています」(轟木氏)

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オムニヨシダ製のパレットチェンジャー。人が介在する作業も極力手をかけない

実際、荷捌きを行う作業者は2~3人ほどで、現在まで誤出荷はゼロだ。最小の人手と高い保管効率で、最上の物流品質をほぼ実現する。オペレーションの効率化はユーザー企業にも波及する。専用のサービスサイトは利用までのリードタイムや契約業務を削減するだけでなく、「WMSなどの大規模システムを入れにくい小規模事業者も、当社のサービスに乗っかれば同等の高効率な入出庫・在庫管理にアクセスできる」。

轟木氏は「まだ改善余地はあるが、1号物件としては完成度が高い」と自信をのぞかせる。同グループはすでに他地域での展開を進めており、来年以降も、自動倉庫を伴った同様の冷凍保管サービスが全国で順次展開される予定だ。9月にはマレーシアにも土地を取得。冷凍倉庫の新たな「標準形」の世界展開を急ぐ。LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰは、霞ヶ関キャピタルが描く冷凍インフラの未来をすでに実装段階へと押し進めている。

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入荷前にコンベヤ上でパレットのバーコードを読み取りWMSと紐づける。併せて外寸も確認し貨物が規定通りに収まっているか検査する

(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)