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金属3Dプリンターが普及しない理由をメーカー4社が語る

投稿日時
2026/03/09 13:39
更新日時
2026/03/09 13:43
左から三菱電機 産業メカトロニクス製作所 レーザーシステム部 AMシステム設計課 堀尾一哉氏、ニデックマシンツール マシニングセンタ事業部 第2営業部 微細加工グループ 部長代理 成瀬貴規氏、大陽日酸 イノベーションユニット イノベーション事業部 AMイノベーションセンター所長 尾山朋宏氏、DMG森精機セールスアンドサービス 5軸コンペテンスセンタ AMグループ グループ長 萩森紗季氏、日本AM協会 専務理事 澤越俊幸氏

日本の品質要求が普及の壁か(日本AM協会×TCT Japan共催セミナーより)

日本国内における積層造形(AM)特に金属分野の普及は、欧米や中国と比較して依然として遅れている。技術的な課題なのか、コストの問題なのか、あるいはもっと別の何かが壁になっているのか。1月29日、AM技術の総合展「TCT Japan 2026」内で行われた(一社)日本AM協会とTCT Japanの共催セミナー「AMの闇~AM普及を阻むものとはメーカーに聞く!」では、国内3Dプリンターメーカー4社が一堂に会し、この問いに正面から向き合った。議論の中で浮かび上がったのは、一つの逆説「日本の製造業を支える高い要求品質が、AM普及の最大の障壁になっているのではないか」だった。


澤越(俊幸・日本AM協会) 日本でAMがなかなか普及しない理由について、メーカーサイドとしてどう考えていますか。

萩森(紗季・DMG森精機セールスアンドサービス) 海外のAMユーザーを見ると「AMでしか作れない新しい設計」を起点に導入を検討されています。一方、日本のお客様は既存工法の改善の延長線上でAMに辿り着くケースが多い。取り組み方が根本的に違うと感じています。

尾山(朋宏・大陽日酸) 日本のモノづくりスキルは世界で他に類を見ないレベルです。確定図面がなくても、職人さんが驚くようなものを短期間で仕上げてくる。ただ、その前提が高齢化などを理由に崩れ始めていています。また、技術的な基盤が薄い海外ではどんどんAMが活用され、新しいモノづくりの在り方が模索されています。日本の強い製造業を維持していくためにも、新たなモノづくりに対応するためにも、危機感を持って向き合う段階にあると思います。

成瀬(貴規・ニデックマシンツール) 日本は「今の工法と比べて品質はどうか、コストはどうか」と減点方式です。こうした、大量生産・高品質で成功してきた日本の製造業と、少量多品種に強いAMではそもそも評価の土俵が違う。ここのマインドセットが必要になると思います。

堀尾(一哉・三菱電機) そうですね。例えば、アメリカのお客様は「とりあえず作って機械につけて動いたらOK、後から検証しよう」と入り口がポジティブです。日本はまず試験片をたくさん作って、データを積み上げて︱︱その検証のプロセスから抜け出せなくなってしまう。品質は重要ですが、それが足かせになっている面は否定できません。

■品質への不安どう乗り越える

澤越 品質への不安はAMが採用されづらい理由の一つですね。この点、メーカーとしてどう見ていますか。

萩森 共通の評価規格がまだ存在しないことが、お客様との会話を難しくしている一番の要因だと感じています。ただ、規格がない状況は海外も同じです。結局、品質への向き合い方の違いに行き着くと思います。

尾山 成瀬さんがおっしゃったように「ないものの証明」に陥ってしまっているケースが多いと思います。海外で実用化されているものと同じ用途で、全く同じAM工程を導入しようとしても、日本だけ品質問題として扱われるのはなぜか、と思うことはあります。

成瀬 AMに対し従来技術と同じレベルの品質を求める必要がはたしてあるのでしょうか。長年技術を蓄積してきた工作機械だって不具合は出ます。新しい技術に過剰な品質保証を求めていては永遠にスタートラインに立てないと思います。

堀尾 弊社がワイヤーレーザー方式を選んだ理由の一つがここにあります。レーザー溶接を自動化したものと捉えると、既存の溶接技術の延長線上にある。熱処理を施せばJIS規格も満たせるものも多い。既存技術との連続性を持たせることで、品質面のハードルを下げています。

■ビジネス化が普及の要

澤越 厳しい環境の中、業界を発展させていくために取り組んでいくことを聞かせてください。

萩森 機械側の機能や技術はある程度成熟してきています。あと不足しているのは本当にビジネスになるアプリケーション。当社では自社製品へのAM活用も進めていますが、価格やリードタイムが既存工法に勝てなければ採用しません。お客様に対しても、機械を買っていただくことがゴールではなく、10年・20年後もビジネスを続けられているか。本当に有効な場面を見極め、しっかりと会話をしながら提案していくことが責務だと思います。

尾山 当社は1910年の創業以来長きにわたり産業ガスを通じて日本の産業近代化に貢献してきた会社です。AMもガスの特性が重要な役割を担っていますし、熱意を持ってお客様のお困りごとに全力でソリューションを提案していきます。近代化のプロセスを一緒に並走できるような関係を築いていきます。

成瀬 一番効く宣伝は口コミなので、「この機械を買って良かった」と言ってもらえる、極端な話お客様が仕事で儲かるお手伝いができればと常に考えています。また、金属3Dプリンターは世界でオンリーワンのモノづくりができる可能性が残っている領域です。切削や溶接と同じレベルで、一つの工法として積極的に選択される未来を目指して取り組んでいきます。

堀尾 設計者の方々に、ぜひ夢を持ってほしいと思っています。失敗を恐れる気持ちはよくわかります。でも、既存の固定観念にとらわれない設計︱︱「こんなことできたらいいな」がAMなら実現できるかもしれません。その実現のために我々は、より使いやすく、より品質の高い装置の開発を続けていきます。

澤越 今日登壇いただいた皆さんに共通しているのは、AMが日本のモノづくりに絶対必要だという確信です。ぜひ「情報収集」で終わらず具体的な対話をしていただきたい。その一歩が、日本のAM普及を加速させる原動力になると信じています。



(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)