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堀井鉄工、新東工業の省力化システムをテスト導入

投稿日時
2024/12/16 09:00
更新日時
2024/12/16 09:00
新東工業のショットブラスト「KACX-ⅡA」を使って省力化に寄与する新システムをテスト中

堀井鉄工 (富山市八町)

堀井鉄工(富山市八町)は、北陸地域を基盤としたHグレード認定を受ける鉄骨ファブリケーター。富山を中心に北陸地域の公共施設や病院など、特に耐震性や精度が求められる建物の鉄骨製造を担い、2000年代からは関東周辺地域にも目を向け活躍の幅を広げている。昨年から今年にかけては、新東工業のショットブラストをリプレイスすると同時に、同社が開発中の機器保全作業を省力化するシステム商品をテスト導入。こうした最新設備をいち早く取り入れる姿勢が同社の成長を支える。新東工業との取り組みについて同社・顧問の白山肇氏に聞いた。


北陸地域を基盤とする鉄骨ファブリケーターである堀井鉄工は、主に北陸から関東の建築構造物に向けて年間2~3万㌧弱の鉄骨を製造する。2015年に長野・金沢間が開業した北陸新幹線関連では、富山駅の鋼製シェルターや黒部宇奈月温泉駅舎などに、関東地域では物流倉庫や海の森水上競技場などのランドマークにも製品を納めている。

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堀井鉄工・顧問の白山肇氏(左)と取締役製造部長兼資材部長の栗山拓也氏

同社・顧問の白山肇氏が「堀井ブランド」と言うように、特に海洋土木(マリンコンストラクション)に強いゼネコンからの信頼は厚く、「北陸・関東の物件では真っ先に声がかかる」(白山氏、以下同)という。

「当社だけで4000㌧を超える大型案件を手掛けたこともあるため、北陸地域で大きな仕事があると何らかの形でお声かけいただく。それは、やはり堀井ブランド。納期内に製品を納める姿勢や、鋼材の温度による伸び縮みや水分量による変化なども踏まえた加工ノウハウに裏付けられる物の仕上がりによって勝ち取った信頼が支えています」

そうした優れた生産体制を支えている理由の一つが、新設備を積極的に採用する姿勢だ。今でこそファブリケーターの間で一般的になった、タケダ機械の全自動ドリルマシンと表面処理機などを組み合わせたスプライスプレート(接合板)向けの自動化ラインを導入したのも同社が全国で初。今年7月からは新東工業が設備稼働の無人化に向け開発を進めているシステム商品の商品検証も全国で初めて同社で行っている。

■ショット機のメンテ省力化

建物の鉄骨製造におけるショットブラストの役割は、H形鋼とプレートそれぞれの表面を粗面化することで、鋼材同士をがっちりと組み建物の強靭性を確保するもの。建築工事標準仕様書(JASS6)でもすべり係数(0.45以上)を確保することが求められている。

一方で、1.4㍉程度の鉄球(投射材)を鋼材に高速で叩きつけるショットブラストは、使用していくうちに投射材が摩耗して小さくなってしまい、そのまま使用していると仕上がりが悪く、規定の粗さを出せなくなってしまう。また、鋼材からはがれた黒皮が粉塵となって集塵機に溜まるため、高頻度でメンテナンスをする必要がある。

「掃除機を思い浮かべてもらえれば、ごみを集めるフィルターが目詰まりしてくると性能が落ちますよね。ショットブラストも同じ。集塵機に粉塵が溜まると集塵能力が落ち、細かくなった投射材も機内に残ってしまうため、ショットのかかりが悪くなる。確かな仕上がり面を確保するには、始動前稼働後点検をしっかり行うことが重要ですが、オペレーターは鉄骨を何本処理するかという生産に意識が向きやすいもの。最終的に、集塵機に溜まった粉塵の払い落しや投射材の補給などが十分できておらず、ショットのかけ直しや設備故障によるライン停止が発生してしまう」

現在テストをしている新東工業のシステムは、セパレータ定風速制御や投射材自動補給、自動シェイキング、稼働監視といった機能からなる。例えば、セパレータ定風速制御では、粒度が細かすぎて使用に耐えない投射材を機外へ排出するセパレータ部の風速を監視し、集塵機の目詰まりによって目標風速が低下してきたら、集塵機の回転数を上げ風速を一定に維持するもの。投射材の粒度を安定化できるため加工品質を保つことができる。さらに集塵機の目詰まりが深刻になり設定よりも差圧が高くなると、自動でシェイキング(払い落し)を行う機能も搭載しているため、品質を担保しながら、オペレーターのきつい汚い作業も軽減できる省力化システム。

「まだ導入から3カ月程度なので具体的な改善数値を示すことはできませんが、オペレーターが逐一機械の状態を監視しながら対応しなくても、ほぼ自動で一定の加工ができるようになっています。また、今回のシステムには稼働監視機能もついているため、投射材自動供給装置の電源プラグが抜けていた際には、新東さんから数値がおかしいと連絡いただいたことで迅速に原因を特定できました」

これまで培ってきたノウハウと最新の技術を掛け合わせながら成長してきた同社は現在、本社の南側に約2万平方㍍の土地を取得。溶接ロボットなどを追加するとともに、第一工場(9千平方㍍)の約半分の仕事を移管した第五工場を2027年にも稼働予定だ。更なる発展に期待がかかる。

(2024年12月10日号掲載)