ロボット、EVで高精度化加速
ニデックマシンツールとニデックドライブテクノロジーは電気自動車(EV)シフトにおける歯車加工とロボット分野の波動歯車減速機の開発でグループシナジーを発揮し世界と戦っている。ニデックドライブテクノロジーの西村幸久常務執行役員とニデックマシンツールの谷村昌秀歯車機械システム事業部統括部長に戦略と展望を聞いた。西村常務は「同じ歯車の高精度化でもEVは研削工程に、ロボットでは歯切りに力点が置かれるなど大きく違う」と難しさを語る。
ノイズの低減や伝達効率の向上が求められるEV用に高精度歯車が求められている。谷村部長は「15年ほど前のエンジン車の歯車では焼き入れ前に、熱処理歪みを計算に入れたうえでシェービングする工法が主流だった。その後EVだけでなくエンジン車でもより精度を出すため焼き入れ後の歯車研削の重要性が増してきている」とする。
はすば歯車の歯すじ方向にクラウニングを付与した時に生じる歯面のねじれを打ち消し、ノイズを静穏化する「バイアス修整加工」が不可欠になってきている。「サイクルタイムを犠牲にせずバイアス修整を実現出来るかが重要」(同)とし、歯車研削盤(外歯研削)ZE?Cシリーズで実現する。同機では砥石を成形する際にドレスホイールを旋回しながらドレスする新たな機能を取り入れた。また砥石一つを通常ドレス域(粗加工)とバイアス修整域(仕上げ加工)に分割し、砥石の使い方を見直した。
さらに歯車を高精度に仕上げるために、歯車の面取り部(角部)を切削で除去する切削面取り盤「CF26A」と、専用の工具「EdgeCut」も昨年発売した。フレージング加工後に出る2次バリの発生を無くすとともに、前工程のホブ加工で生じる端面バリの除去も可能にした。「バリと面取りはお金にならないがクレームの元。できるだけ機械を安く提供することにもこだわった。仕上げ加工の時に砥石を攻撃するバリをここで除去しておくことで研削工程を含めたライン全体としてのランニングコストも下がる。ニデックグループは歯車加工の全工程に知見があるので、一工程で解決するのではなく全体を見て総合的にソリューションを提案できる」(同)とする。
■ロボット用波動、歯車減速機に注力
多関節ロボットに使われる主な減速機は、手首・関節に使われる波動歯車減速機と根本軸に使われるサイクロイド減速機となる。「われわれが力を入れているのは波動歯車減速機である。ロボットの生産は、波動歯車減速機の供給に依存しており、日本の産業発展のために供給に力を入れる」(西村常務)とする。
波動歯車減速機は「楕円の入力軸が回り、薄い歯車がふにゃふにゃ動くので、動作や精度は出せても耐久性の問題があり多くの企業が挑戦するがなかなか満足するものができない」が「耐久性の部分をクリアできたのでさらに世界に打って出る」(同)と話す。耐久性については企業秘密であるが、もう一つのポイントに角度伝達誤差の最小化がある。「耐久性があっても精度が高くないと価値がない。そこでロボット向け歯車の加工に特化した外歯と内歯を削るGE15FR PlusとSE25FR Plusをニデックマシンツールに開発してもらった。波動歯車減速機は非常に歯数が多いので高精度かつ高速に削る必要がある。また加工した歯車の精度から減速機の精度を推定できる」(同)とする。EVの歯車は研削により精度を高めるが、よりピッチ精度が高いロボット用歯車は切削加工により生み出す必要がある。「波動歯車減速機はグループシナジーがあってこそ完成できた」と二人は声をそろえる。
波動歯車減速機にトルクセンサを内蔵することでトルクを感知する「SmartFlexwave」を開発し、次の段階を目指す。現在の協働ロボットはトルクセンサにより安全性が担保されているが、SmartFlexwaveにより省スペース化と性能向上も叶うという。
(2023年8月10日号掲載)