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職場の熱中症対策6月から義務化、熱中症対策グッズに関心増

投稿日時
2025/06/12 09:00
更新日時
2025/06/12 09:00
昨年はシーズン初めに売り切れた山善の水冷服「DIRECT COOL」。首元までしっかり冷やすタイプも用意する

61日から職場での熱中症対策が義務化された。職場での熱中症による死傷者数がこの10年で2倍以上に高まっていることを受けたもので、死亡災害に繋がる「初期症状の放置・対策の遅れ」への対応強化を求めている。今回の義務化に付随し、熱中症対策アイテムへの関心も高まっているようだ。


義務化の対象は基準「WBGT(暑さ指数)28度以上又は気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上又は14時間を超える作業」を行う職場で、見つける・判断する・対処するを迅速かつ適切に行うための「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられた。



250610最終面_トップ_写真1.jpgそのため、今回の改正では熱中症の「予防」に対する取り組みが義務化されたわけではない。しかし、改正を機に、2021年に改訂された熱中症予防基本対策要綱を軸とした予防対策にも改めてスポットが当たっている。

要綱には、WBGT値の活用とそれらの基準を超えた場合の熱中症予防対策などが記されている。対策方法は「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」「労働衛生教育」「救急処置」の5つの項目からなり、「休憩所の整備」や「水分および塩分の摂取」など具体例を交えながら、それぞれの現場に則した形での対応を求めている。

■注目の熱中症対策品

今現場で求められているのが、例示された対策方法を具体化するアイテムだ。まずは作業環境を管理するため、現場ごとのWBGT値を測定し作業環境の暑熱リスクを評価する必要がある。WBGT値は気温・湿度・輻射熱から算出する暑さ指数で、湿度と輻射熱も測れる黒球付熱中症計が使用される。主に建築業界向けの製品を扱う商社によれば、「まずは職場環境を評価する必要があるので、黒球付熱中症計はマストアイテム。既に多くの現場で活用いただいているが、対策義務化を契機に更に関心が高まっている」という。

評価した後は、適切にWBGT値を低減していく必要がある。しかし、現場全体の対策には限界があるため、近年、街中でも見かけるようになったファン付きウェアをはじめとする作業者ごとに身に着けられるアイテムへの関心も高いという。

「日本の夏は暑すぎるため、昨年ごろから水冷服やペルチェ素子搭載の機能性衣類など、身体を直接冷やす製品に注目が集まっている」(山善・家庭機器事業部商品企画3部の俣野剛志部長)

熱中症の早期発見に繋がる「サーマバンド」も同様だ。スマートウォッチ型のウェアラブルデバイスで、外気温や皮膚温度などから深部体温を算出し、熱中症リスクを音や振動、ディスプレイの色などで通知する。価格もこなれており引き合いが増えているという。

一方で、休憩時間などに体を冷やすことができるアイテムも注目の的だ。作業前に体を冷やす「プレクーリング」は、作業中の体温上昇を抑え熱中症のリスク低減や作業パフォーマンス向上に寄与することがわかっている。そのため、エアコンを効かせた休憩所の整備や微細な氷が深部体温を迅速に低減する飲める氷「アイススラリー」製品の配布なども進んでいる。テントと移動式エアコンを組み合わせた簡易タイプの休憩所も出て来ており、現場ごとに適切なものを取り入れやすい環境が整いつつある。

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シャープが開発した市販のペットボトル飲料から簡単にアイススラリーを生成できる冷蔵庫。523日からレンタルを開始した

(日本物流新聞2025610日号掲載)