ビル向けで施工時間3分の1に
YKKグループは3月5日、都内で2023年度の連結業績(推定)と24年度の経営方針を発表した。AP事業を担うYKK APは売上が前年比106・2%の5399億円、営業利益が同140.4%の250億円と増収増益を見込む。売上、営業利益ともに計画には届かなかったが、売上は3年連続で過去最高を更新するとみる。
同社の魚津彰社長は「昨年12月に公表した業績予測時よりも国内外ともに市場が低迷した。特に着工件数が住宅もビルも思った以上に悪かった。3省の補助金に向けた動きも昨年ほどではなく、2月3月の立ち上がりが遅い」と状況を分析。
24年度の市況感については、物流・建築業界での2024年問題の影響が深刻で、97億円のコストアップの主要因がロジスティクス費用の上昇であると明かした。魚津社長は「10%以上の価格転嫁の要請をいただいている。加えて、荷待ち・荷役作業時間を2時間以内に収めるための補助作業員の配置などもコストアップ要因」とし、製品価格への転嫁の可能性も視野に入れる。
建材メーカーとして製品の省施工化にも積極姿勢だ。住宅窓やリノベーション分野だけでなく、ビル向けでも省施工商品を拡充する。4月30日発売予定の「SYSTEMA81u」はこれまで高層建築物で採用されてきたユニット工法を中層建築物でも導入できるようにしたもの。足場設置が不要な上、工場で加工から組立て・ガラス施工までを一貫して行うため、「現場では従来の3分の1程度の施工時間で設置でき、工期がタイトな現場での採用が期待できる。美観やデザイン面でも評価を受け、既に標準採用を決めているゼネコンも出てきている」(魚津社長)と好調な滑りだしだ。魚津社長は「全体の流れの中での省施工を全ての商品で追求していく」と話し、建設現場の課題解消に向けた取り組みを加速する考えを示した。
(2024年3月25日号掲載)