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三和ロボティクスのテクニカルセンター本格始動、コア技術活かしスケール拡げる

投稿日時
2025/07/14 09:00
更新日時
2025/07/14 09:00
新設したテクニカルセンター

切削加工用の自動化システムを手掛ける三和ロボティクス(本社・長野県飯田市、沢宏宣社長)が本社工場の近隣地にテクニカルセンターを新設し、今年2月から新たに業務を開始している。

三和精機として1964年に5人で創業。当初から機械加工をベースとした受託加工に専念していたが、95年にオイルスキマー、03年に横型ボール盤を開発して販売、次第にメーカー指向を強めていった。その後、自社工場で培った自動化ノウハウを活かしインテグレーション事業をスタート。今は切削加工の自動化に貢献するバイスチェンジャー、パレットチェンジャーの販売に力を入れる。

テクニカルセンターは、人に貸し出していた旧本社の地に建てた。工場のスマート化に資するシステム開発や顧客支援を行い、営業部隊も置く。同社が長年目指してきた姿を具現化する拠点になる。

沢社長は、父親である前社長(現会長)から「成長に限界がある下請からの脱皮を目指そう」との意思を聞かされてきた。振り返るとその一歩が前記オイルスキマーだった。その後、2010年にトップのバトンを継いだ沢社長は、受託加工のロボット化を自社工場内で進めつつ、2年後に三和ロボティクスへ社名を変更。翌13年に本社工場を移転拡充し、17年には自社開発のバイスチェンジャーを「NEXSRT(ネクサート)」の名で市場に投じた。

沢社長は「前社長とは激しい言い争いが絶えなかった」と述懐する。平たく記せば、よい商品創りに専念すべきとの前社長の考えに対し、営業やサービス支援を厚くして事業を拡げる必要があると沢社長が主張、両者の意見が正面衝突した。「ただし仕事上の意見対立であって、親子関係が悪くなったわけではありません」。沢社長は言葉を足して苦笑した。

その後、業容を拡げるなか、社員は17年までの4年間で約3倍の120人規模に増えた。だが「当時は5人雇用して1~2人が短期で辞める状態」(沢社長)。ロボット化を進めても追いつけないほど受託加工が多忙なうえ、メーカーとしての仕事量も増え、社員の負荷は相当に高まっていた。

「加えて、社員を増やしてもマネジメント体制は40人規模のままでした。コンサルの指導を受けてマネージャーを育て、各部署それぞれの仕事内容にあった体制に再構築し、なんとか乗り越えました」という。QC活動もこの時期本格化させた。

プロセスも見直した。受託加工は「受注生産から見込み生産」へ大胆転換。計画生産で効率を上げた。この場合、万一顧客が注文をストップしたら丸ごと不良在庫になるが、そこを想定しても「現場の効率向上の方がプラス」と判断した。

現在の事業は、受託加工が7割強、自社商品販売が約3割という割合だ。受託加工はFA大手からの受注を増やし増収ペース。自社商品は大量生産から多品種変量まで対応する、工作機械連結型のバイスチェンジャー、パレットチェンジャー「ネクサート」が主力に育つ。特に22年からのブラザー工業とのコラボで、好調なブラザー小型マシニングセンタ(30番機)向けを中心に販売台数を伸ばす。ブラザー話題の最新機の専用オプションとして、OEM供給もこのほどスタートした。

営業も強化方向。今年3月、埼玉に営業拠点を設けたほか、近々、大阪にも拠点を置く計画だ。沢社長は「飯田は陸の孤島、本社から出向いての対面営業は厳しいんです」と笑うが、攻めの経営が続く。

新設のテクニカルセンターを訪れると、フィットネスクラブを思わせる社員向けスポーツ施設が広いスペースに設けてあった。月一回の全体朝礼にはパートタイマーも含め本社全従業員で仕事の進捗や目標、課題を共有し、一丸で仕事に向かうという。業容を広げつつも社員と共同で策定した経営理念「人々が大切にしたい会社をつくろう」を掲げ、顧客や地域への貢献と、社員の幸せ重視の姿勢を貫く。

沢社長とPC-1.jpg

宏宣社長。主力商品のパレットチェンジャーはブラザー工業製マシニングセンタの専用オプション(名称PC-1)としてOEM供給もスタート



(日本物流新聞2025710日号掲載)