
1700万円助成
(公財)マザック財団は2024事業年度の研究助成・優秀論文表彰・国際会議助成の対象を発表し、5月15日に美濃加茂製作所で表彰式を開いた。
研究助成は切削や機械要素などの分野で21件を選定。名古屋大学の李炅耆助教による「工具動剛性を用いた新たなびびり振動抑制技術の提案」等の研究に1350万円を助成した。論文では18件に220万円を助成。東京大学大学院生の手嶋勇太氏の「工作機械における熱的誤差の推定のための低次元モデルに基づくセンサ配置戦略」などが選ばれた。国際会議はライフサイクル工学を含む3件に130万円を助成した。
表彰式ではヤマザキマザックの山崎智久会長が「時代や環境が変わっているが、大きな雇用と付加価値を生みだす製造業は国を挙げて再度、競争力を強めなければならない。製造業の発展には技術開発や生産に携わる人材育成、いわゆる人づくりが重要だ」と財団活動の意義を語った。
【技術のひろば】工作機械に更なる進化の芽
工作機械やその関連技術はまだまだ進化する――(公財)マザック財団が助成した研究や論文には、そう思わされるものがいくつもあった。
名古屋大学の李炅耆助教の研究は旋削加工の再生びびりを抑える新技術の提案だ。従来は主軸の回転数を変えて抑えていたが、短時間での主軸の加減速は難しく高速加工に対応できなかった。これに対し、研究では工具ホルダのクランプ部に圧電素子を組み込んでクランプ力を変動させてびびりを抑える新たなアプローチを行う。
東京大学大学院生の手嶋勇太氏の論文は工作機械の熱変位補正に関するもの。工作機械の熱変位補正には従来、多くのセンサーによる測定が必要だった。しかしどの測定点が機械の熱変位に強く影響するかを定量化することで、測定の精度を落とすことなくセンサー数を従来の302個から150個に半減できたという。いずれも社会実装を期待したい。
(日本物流新聞2025年6月10日号掲載)