台頭するBRICS経済圏、現実味帯びるか「脱ドル化」
- 投稿日時
- 2025/05/20 09:00
- 更新日時
- 2025/05/20 09:00

BRICS経済圏の拡大が著しく、国際秩序を多極化する勢いだ。2009年の初期加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国。この4カ国の頭文字に複数形を意味するsをつけたBRICsという経済用語だったものが、のちに南アフリカを加えてsは大文字になった。今年4月現在で10カ国が正式加盟し、さらに9カ国が「パートナー国」として協力関係を結んだ。BRICSが目指す戦略目標の一つ「脱ドル化」は実現するのか。
2023年の南アフリカ・ヨハネスブルクでの首脳会議を転機に、BRICSの正式加盟国は10カ国となった(状況が不明確なサウジアラビアを除く、表参照)。正式加盟国だけでなく「パートナー国」という枠組みも設けられた。今年3月現在、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、カザフスタン、マレーシア、ナイジェリア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタンの9カ国がパートナー国として協力関係にある。
BRICSの経済・人口規模はますます拡大している。日本貿易振興機構アジア経済研究所(IDE-JETRO)が5月1日にまとめたレポートによると、BRICSのGDPは23年時点で初期メンバー5カ国だけで世界全体の25.2%を占める。この割合は50年には34.9%まで上昇すると予測される。24年と25年に新たに追加加盟した5カ国を加えた10カ国では、23年のGDPシェアは27.9%、50年には38.8%に達すると見込まれる(「第1回BRICSのこれまでとこれから」より)。
このレポートは人口面でのプレゼンスがさらに大きいことを指摘する。初期メンバー5カ国で23年の世界人口の40・8%を占める(追加加盟5カ国とパートナー国まで含めると54%と過半数を占有)。これは世界1、2位の人口をもつインド、中国を含むためだ。
この影響力をもってBRICS諸国は単独主義に反対する。4月末、ブラジルのリオデジャネイロで開かれた外相会議で、トランプ米大統領の中国製品への145%の関税に対する懸念を表明した。
■低い域内貿易シェア
たが、域内貿易シェアは低く、そこがBRICSが抱える最大の課題の一つだとこのレポートは指摘する。23年時点で、BRICS初期メンバー5カ国間の域内貿易が世界全体の貿易に占める割合はわずか3.0%にとどまる(グラフ)。新たに追加加盟した5カ国を加えてもそのシェアは5.2%と依然として低い水準だ。
「パートナー国まで含めても8.1%であり、東アジア16カ国の域内貿易シェア(13.1%)やEU27カ国のシェア(17.3%)と比べると大きく見劣りする。(中略)この低い域内貿易シェアは、BRICSが目指す重要な戦略目標の一つである『脱ドル化』を実現するうえで大きな障壁となる」
ただ、このレポートの分析によると、50年にはBRICS初期メンバー5カ国の域内貿易が世界貿易に占めるシェアは5・0%、追加加盟5カ国を含む10カ国では8.9%、パートナー国まで含めると13.7%まで上昇すると予測する。この13.7%という数字は、50年時点の東アジア16カ国の予測値(15.5%)に近く、EU27カ国の予測値(10.5%)を上回る。「この予測が現実のものとなり、BRICSがさらに加盟国やパートナー国を増やすならば、国際貿易決済における脱ドル化も、より現実味を帯びてくるだろう」と見る。
7月にブラジルで開催予定の首脳会議に向けてBRICSはグローバル・サウス(南半球の新興国)との連携を深めるなど、国際的な影響力をさらに強化しようとしている。
(日本物流新聞2025年5月15日号掲載)