シェービング兼ね、面取りするホブ盤

世界規模でのロボットや電気自動車(EV)、工作機械、半導体製造装置の市場拡大を背景に歯車需要が増している。歯車で構成する減速機、減速機とモーターで構成するイーアクスルの息の長い成長が確実視されていることが大きな要因だ。この動きを睨み歯車加工機メーカー各社は生産性の高いマシンを用意し、時流に乗る。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】カシフジの「KN81」
【画像3】イーアクスル
【画像4】安田工業
【画像5】マーポスの「ギア検査用レーザーシステム」

特殊ギアの仕上げも担うMC

EVの減速機に使われる段付きギアの下歯車を加工するカシフジの「KN81」。上歯車は物理的な制約からスカイビング盤で加工した。




歯車と歯車装置の市場が拡大している。(一社)日本歯車工業会が経済産業省機械統計を基にまとめた2021年の生産額はそれぞれ前年比16.8%増、19.4%増とともに10年ぶりの2ケタ増となった。ロボットの関節や制御用モーターに利用される小型・精密減速機の需要が増しているためだ。

減速機メーカーは「国内は工作機械・搬送・食品業界の回復、海外は食品と搬送業界での需要増がある」(ニッセイ)、「この1年以上は上り調子」(加茂精工)、「納期の長い製品の受注は増える傾向で、この半年の売上高は前年同期比で1割ほどのプラス」(マキシンコー)と好調だ。

中・大型の産業用ロボットの関節部分に使う精密減速機で6割程度の世界シェアを握るナブテスコは、浜松市に新設する精密減速機の工場で2030年にも同社最大規模となる年間120万台を生産する方針。同市場が「今後も年率10〜15%で成長する」と見込む。

モーター・ギア・インバーターが一体となったイーアクスルを本格的に市場投入すると話すジヤトコの佐藤朋由社長。左は3軸、右は同軸仕様(今年5月に開かれた「人とくるまのテクノロジー展2022YOKOHAMA」で)

相次ぐ異業種参入

日本電産が昨年8月、歯車加工機を手がける三菱重工工作機械(現日本電産マシンツール)を買収した主な狙いはEV駆動用モジュール「イーアクスル」(減速機とモーターで構成)の量産に向けた、部品の内製化にあるとみられる。イーアクスルへの投資について永守重信会長・CEOは「2030年度頃までに累計1兆円は必要」と表明しており、30年度に売上高10兆円を目指す同社にとって成長のカギを握る事業になる。

調査会社の富士経済は、イーアクスルの世界市場が35年に21年の38倍となる5670万台に拡大すると予測する。ギアを巡ってはこの流れを受け、異業種からの参入や異なるタイプの減速機の市場投入が相次いでいる。自動車・産業機械部品の世界的サプライヤー、独シェフラーが精密ギアボックスメーカーMelior Motion GmbHを12月1日付で買収したのもその1つ。シェフラーは「産業用ロボット向けの精密遊星ギアボックスが加わったことで、ポートフォリオは一段と充実したものになった」としている。

専用機と汎用機

歯車加工の工程は一般に荒加工である「歯切り」、歯面を滑らかにする「シェービング」、歯車の強度を高める「焼入れ」、焼入れ後の仕上げ「研削」で構成される。ただ、小型減速機用の外歯車では生産コストの観点からホブ盤による歯切りが最終工程となることが少なくない。またEV用の減速・変速機の歯車はこれまで以上に高トルク・高速回転に耐えねばならず、また小型化・静音性能も求められる。

こうしたニーズに歯車加工機メーカー各社は対応する。日本電産マシンツールが昨年5月に発売したホブ盤「GE15HS」「同25HS」は、1台の加工機でシェービング並みの歯面精度の加工ができるという。ハイスでなく超硬製の独自のホブカッター(寿命は5倍以上に)を用意し、カッターの最高回転数を一般的な毎分2000から6000に向上。その理由を「ワーク1個あたり何秒で削るかが重要になる。超硬製カッターで加工精度も高めた」と説明する。

カシフジのホブ盤「KN81」はベッドとコラムを一体型にし、剛性とメンテナンス性を高めた。「ホブカッターとテーブルをダイレクト駆動で同期して細かく制御するため高精度を維持する。EV化でお客様のニーズが変わりつつあり、それを意識した製品と言える」と言う。ギア加工に付随するバリに対しては、オプションでフレージング加工(面取り)機能を用意した。

横形ホブ盤に特化する浜井産業は小型ワーク向けに「N70」を提案する。「大物加工は機械にセットしやすい立形が向くが、小物加工には横形のほうが精度が出しやすく、段取り替えもしやすい」と話す。機械幅2mの小さな加工機ではあるが切削外径70mmまでに対応し、オプションでバリ取り装置を付けられる。

安田工業や牧野フライス製作所、三井精機工業などは歯車加工機としてマシニングセンタ(MC)を提案する。MCなら特殊形状のギアも面仕上げを含めて加工できる利点がある。たとえば安田工業がジグボーラーと呼ぶ5軸MC「YBM Vi 50」「同40」がそれにあたる(MCのなかでもとりわけ高精度を誇るものを昔からの名残でジグボーラーと呼んでいる)。同機が減速機メーカーに採用される理由について安田工業は「長時間にわたり高い加工精度を維持できることと汎用性の高さを評価していただいているのかもしれない」と話す。ホブ盤では難しい、焼入れ後の仕上げ加工が担えることも長所のようだ。

安田工業がYBM Vi 40で割出同時4軸で加工した歯幅27mmのインターナル・ヘリカルギア(YXR3、58HRC)。荒から仕上げまでに要した総加工時間は41時間

EV向けでノイズはNG

歯車の騒音・振動の低減、長寿命、静音につながる高精度を担保するため、測定の重要性が増している。マーポスが先月のJIMTOF2022で披露した「ギア検査用レーザーシステム」(2023年5月発売予定)はギアの切込みや角度を4つのブルーレーザーでスキャンして手早く測定する。レーザーを4つも利用するため段付きギアなどを死角なしに扱える。

トータル・ギアソリューションの世界提供を謳うグリーソンは加工機、治工具、構造解析ソフトなど歯車製造にかかわる製品群を揃える。だが、JIMTOFで比較的大きなブースを構えた日本法人・グリーソンアジアが、実機として出品したのは測定機だけだった。「加工はできて当たり前だから」と説明する。「今回はEVのトレンドに対してアプローチした。歯車にノイズがあれば、EVではNGだから」。同社はソフトを用いて設計・製造を支援しつつ、製造工程全体でノイズ(不具合)が発生しないよう気を配る。

マーポスの「ギア検査用レーザーシステム」。段付きギアの上側を奥の2つのレーザーで、下側は手前の2つのレーザーで手早く測定する。

(日本物流新聞 2022年12月25日号掲載)

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