モノづくり企業が挑む医療分野への挑戦

高齢人口の増加にともない医療機器ニーズが増加している。国内の医療機器市場は米国に次ぐ第2位の規模だが、メーカー別売上高でみると、欧米メーカーに押されている。今後は日本人に最適な医療機器の開発が課題であり、そこにはモノづくり企業の参入余地もまだまだ残されている。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】米山金型製作所のマイクロニードル
【画像3】hakkaiの超微細メッシュフィルタ

医療機器産業は、多品種少量という市場構造を反映して大手から中小まで多様なメーカーが存在する。また部材・部品から最終製品に至るまでのサプライチェーン構築に当たっても、その事業化は医工連携や産学連携による研究開発プロセス、医療機器のリスクに応じたクラス分類による事業承認プロセス、企業や事業所との許可登録プロセス、さらに保険収載プロセスなど固有の条件を満たす必要がある。

モノづくり企業がその技術、生産基盤を活用して医療機器産業への参入を目指す場合、医療機器産業の特性を踏まえることが重要になる。医療機器は高度な機器や大量の汎用品を扱う大手メーカーが存在する一方、限られた市場に独自の技術で対応する多くの中堅・中小利用機器メーカーがある。薬機法(医薬品医療機器等法)における一般的名称で4000種類以上、品目は30万以上にも及ぶ。

厚生労働省の医療品・医療機器産業実態調査を紐解いてみよう。医療機器の製造工程を持つ国内の登録製造所については、企業規模(1カ月の生産金額)ごとの製造所数を見ると、1417カ所のうち31カ所が10億円以上の生産金額である一方、4割超の608カ所が100万円未満でもある。こうしたことから、技術に強みを持つ中小企業が多彩な受注の中のひとつとして医療機器生産をしていることが窺え、参入の余地がおおいに残されているとも言える。

医療機器は大きく分けて(1)治療系、(2)診断系、(3)その他系に区分される。(1)の代表例はカテーテル、人工関節、注射器、人工心肺システムなど。(2)の代表例はPET、内視鏡、MRI、超音波診断装置、X線撮影フィルム、体温計など。(3)は歯科材料、家庭用マッサージ器、手術用手袋、コンタクトレンズなど。

このうち(1)と(2)の治療系においては、専業系が多く外資比率も高い。参入しやすいのは③のその他になるが、高付加価値を望みづらいという側面もある。

微細加工から医療機器へ参入

こうした中、自社技術を活用して医療機器製造に挑んでいるのが米山金型製作所だ。同社は微細・精密加工に定評があり、部品加工から金型、成形までの技術を提供し、付加価値の高いワーク制作を行っている。

同社が得意とするのが、医療分野において、DNA検査や生体分析、薬品開発等で活用されている高精度の「マイクロ流路」や美容現場でも使われる「マイクロニードル」の製造。マイクロ流路は微細な溝状の流路で、同社では最小溝幅0.1㎜以下、面粗さRa0.005㎛の高精度ワークが製造できる。

またマイクロニードルは直径1㎜以下の針の集合体。同社では直径0.5㎜以下の微細マイクロニードル製造が可能。「1000本以上のマイクロニードルで、先端径φ0.02㎜、高さのばらつき精度±0.002㎜以内の加工が可能です」(同社)

同社が微細精密分野に本格参入したのは今から10年ほど前。展示会への出展を機に、マイクロニードルやマイクロ流路などの金型を手掛けている。またこうした微細加工を実現するために、恒温環境の整備や碌々産業や芝浦機械の微細加工機や東京精密、ミツトヨの高精度測定機を相次ぎ導入するなど、積極的な設備投資を行っている。

さらに昨年9月には既存設備よりも大型の射出成形機を導入し、ユーザーへ微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立。より付加価値の高い金型ソリューションを提供している。

hakkai(新潟県)は腕時計や自動車や家庭用ゲーム機、ブルーレイプレーヤーなどに搭載されるプラスチック製の精密小型機構部品の製造に強みを持つ。同社は医療分野での活用をされるメッシュフィルタを射出成型による一体成形を可能にしている。超微細のメッシュ部分は独自の微細金型加工技術と成形ノウハウにより、目開き0.07㎜、線径0.13㎜と「髪の毛すら通らない」精度を実現している。

「自社で磨いた技術を電機や自動車といった既存の産業だけで活用するのはもったいない。特に微細加工のジャンルは医療のみならず、さまざまなモノづくりにおいてビジネスチャンスがある」(hakkai・関聡彦社長)

この2月には米カリフォルニア州アナハイムで開催された全米最大規模の製造技術・医療関連技術に係る見本市「メディカルデザイン&マニュファクチャリング」に微細加工工業会と共同出展。医療関連のプラスチック成型品を展示するなど、国内のみならず海外への事業展開にも意欲的に取り組んでいる。

(日本物流新聞 2023年3月25日号掲載)

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