国内初、工作機械の本格Web展「JIMTOF2020 Online」開幕
- 投稿日時
- 2020/11/26 12:45
- 更新日時
- 2024/08/19 13:20
オンラインとリアルが連動、先端加工技術を深く広く発信
「工作機械の一大祭典」の名にふさわしく、過去最高15.3万人の来場者を集め、通勤電車並みの大混雑だったJIMTOF2018から約2年。史上初のオンライン開催となった今回展「JIMTOF2020 Online」は2020年11月16日、あまりにも静かなスタートを迎えた。
コーヒー片手に自宅PCから1人そっとアクセスし、複数の動画を視聴し続ける―。「祭典」の賑わいからほど遠いかに思えるが、距離と時間にとらわれない便利さは多くの人にとって魅力。目に見えないモニタの向こう側では「よっしゃ」の声が聞こえてきそうな熱気が、ネットワークを介して徐々に、確実に広がっているようだ。
「JIMTOFに連動する自社特設サイトの初日アクセスは数千件以上。事前の想定を大幅に超えた」。会期2日目の11月17日、手ごたえに声を弾ませたのは、牧野フライス製作所の井上真一社長だ。(「MAKINO MEET NEXT2020」https://info.makino.co.jp/jimtof2020/
「全社員がデジタルコンテンツ作成の腕を磨き、動画やウェビナーなどの準備に汗をかいてきた。今回のJIMTOFを起点として、全社員が参加するZ作戦でデジタル革新を一気に進めていく」(井上社長)。環境性能に優れ、既存モジュールのアップデートを容易にする新コンセプトマシン「e・MACHINE」やレーザー加工機事業への本格参入など新しい話題も豊富で、随時追加されるコンテンツは複数回アクセスを誘う。100人限定の各種ウェビナーも即日満席になる盛り上がりをみせている。
会期3日目の18日。同じく特設サイト「WEB OKUMA MACHINE FAIR JIMTOF2020(https://www.okuma.co.jp/womf202011/)」を設けたオークマでも、「評価には時期尚早だが、メルマガでの事前周知などが功を奏し、登録者数の立ち上がりはかなり良い手応え。引き合い分析などからリアルな商談につなげていきたい」(経営企画室)。同社特設サイトは、機種、ワーク、ソリューションの3つの側面からユーザーの求める技術・機種に簡単にたどり着きやすい構造。ポイント説明や動画も分かりやすい。
いかに売るか、ファンを増やすか
ユーザーとのつながりを重視し、「いかに売るか」の工夫を凝らしたのが、岡本工作機械の「OKAMOTO WEB SHOWROOM」(https://www.okamoto.co.jp/)だろう。相談コーナーに各エリアのスタッフの顔写真を並べて掲載する思い切りの良さ。リアル展示会と同様、馴染みの担当者を簡単に「指名」して相談できる安心感がある。実機見学(オンラインかリアルが選べる)の予約は希望候補日を複数選択して選べるフォームで「美容院アプリのように、気軽に予約できる」(同社)ほか、期間限定のウェブセールも用意した。
逆に、ソフトなコンテンツで試聴のハードルを下げる試みも。イワタツールでは製造業系ユーチューバーとして知られる「なんとか重工」と直前予告のコラボ動画をアップし、岩田社長とのゆるい対談で幅広い層から興味を引いた。また、中村留精密工業では特設サイト「バーチャルショールーム」(https://www.nakamura-tome.co.jp/virtual_showroom/)を設けるとともに、会期3日目の18日、YouTube生放送で注目ワーク(アルミの団子)制作の裏側を紹介しつつ、オーエスジーの人気キャラ「タップくん」ともコラボ。タップ君の主食(切削オイル)を聞く等まったり試聴の流れから「ボールエンドミルで側面加工の加工時間を大幅に削減」など新技術ポイントをチラリと聞くと、次はそっちを見てみようと自然に思えてしまった。
このように出展各社ではJIMTOF2020 Onlineと、独自の自社WEBサイトやウェビナーなどのほか、小規模な内覧会を連動させる動きが多数。オンラインとリアルが連動しながら、工作機械技術をより広く、深く伝える試みが進展しそうだ。特設WEBサイトやの開催情報を別表にまとめた(入場登録が必要なサイトも多数)。
ちなみにリアル会場での内覧会は人数制限や来場時間の指定などで、感染防止対策を強化している関係から、一般に広く周知していないものも多数ある様子。「JIMTOF2020 Online」で気になるマシンや技術を発見したら、各メーカー担当者に詳しく尋ねてみるのもよいだろう。
「easy to use」が工作機械でも
肝心の技術トレンドは日本物流新聞12月10日号の特集「検証JIMTOF2020 Online」で詳しく紹介するが、ザっと見た中で特に目立っていたのは「機上計測」「自動化」の進化だ。この2つは、ロボット業界で普及課題とされてきた「easy to use」(熟練スキルレス)の流れがさらに加速し、非加工時間のボトルネック解消を導きだそうとしている。
実際の展示場をデジタルツインで見せるなど独自のコンテンツをふんだんに用意したDMG森精機(DMG MORIオンラインテクノロジーデイズ、https://www.dmgmori.co.jp/sp/otd/)はウェビナーで、レーザースキャナによる機上計測技術(現状は5軸MC対応)を歯車部品の加工で説明し、「接触式測定と比較した誤差は±2ミクロン以内。専門の計測技術も不要」とした。工具の3D形状登録、工具への切りくずの巻き付きや折損も1~2秒で測定でき、自動加工中のトラブルも防げる。
オークマでは門形MCの新機種「MCR-BⅤ」に3次元計測機並みの寸法計測を可能にする機能を標準搭載した。岡本工作機械では研削盤上の機上3次元計測を実現するソフト「OKAMOTO NCゲージ」を披露し、測定プログラム作成の自動化をサポートする。
中村留精密工業では加工プログラム作成支援機能「3D Smart Pro AI」の進化を披露。「従来は完全自動化ができなければ部分的な自動化が不可能だったプログラムでも7~8割までを自動化し、オペレーターの負荷を大幅に下げられる」(同社)。ナガセインテグレックスでも、推奨加工システムを自動提示する「研削加工支援アプリ」を発表した。牧野フライス製作所も加工方法を音声で「相談」しながら加工できるソフトを発表予定だ。
ワーク着脱ロボットのセットアップもスキルレス化に進む。ファナックではPC上でロボットの動作開始・終了点を指定するだけで、干渉しないロボットの経路を自動生成する機能「QSSRオートパス」を紹介。ティーチングにかかる時間を大幅削減できる。
工作機械はここ数年で、ハードよりもソフト面がクローズアップされるようになりつつある。DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI、IoTなどをうたう製品も多数。機械の稼働監視や遠隔保守などよく知られる機能のみならず、5軸MCの自動運転(キタムラ機械)、高度な機上計測と自動補正、切りくず洗浄をAIが効率化(DMG森精機のAIチップリムーバル)するなど様々なソリューションが続々と登場し、今回展でも新発表に期待がかかる。それらソフト面の進化によって自動化がいっそう進み、周辺機器との融合を強く意図した5軸加工機も現れている。
ウェブ展のアピール効果は?
従来のリアルな催しに比べてJIMTOF2020 Onlineは、どれくらいのアピール効果が期待できるのだろうか?
日本物流新聞社では「JIMTOF2020 Online」の出展各社に、アンケート調査を実施した。有効回答のあった76社で最も多かったのは「40〜60%未満」(34.2%)。意外だったのは「100%以上」(7.9%)の回答が6社あったことだ。
「100%以上」の理由として「展開できる情報量は以前よりも大きくなっている」(研削盤メーカー、120%と回答)、「史上初のオンラインだからこそ、どう出展するのかをお客さまが期待しており、注目度がいつもより増している」(旋盤メーカー、100%と回答)を挙げた。
一方で、「40%未満」(18.4%)と悲観視する出展者も。「名刺交換機能もあるがどこまで引合に結び付くか不透明」(工作機器メーカー)、「情報発信が一方通行になりやすい」(旋盤メーカー)、「お見せできる情報量や説明時間はリアル展と比べものにならない」(放電加工機メーカー)と厳しい意見が寄せられた。
工作機械業界にとって、オンラインでのここまで大規模な展示会開催は初の試み。JIMTOF2020 Onlineのプラス面、マイナス面の両方を糧としつつ、営業・広報活動においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)がより一層加速するきっかけになりそうだ
<JIMTOF2020Onlineと連動する自社WEB展まとめ>
オークマ
「WEB OKUMA MACHINE FAIR JIMTOF2020」➡ https://www.okuma.co.jp/womf202011/
期間:2020年11月16日(月)~12月25日(金)
内容:最新鋭の主力機種20台を展示。次世代ロボットシステム「ROIDシリーズ」、門形マシニングセンタ3台を含む多様なラインナップの主力機種20台を展示。機種・ワーク・ソリューションの選択で、見たい加工機の動画・説明にたどり着きやすい。
DMG森精機
「DMG MORI オンラインテクノロジーデイズ」➡ https://www.dmgmori.co.jp/sp/otd/
期間:2020年11月16日(月)~27日(金)
内容:5軸化・複合化/自動化/デジタル化がテーマ。伊賀グローバルソリューションセンタなどを「デジタルツインショールーム」をみせる。新製品ステージやウェビナーも。
ソディック
「Sodick World Tour」➡ https://www.sodick.co.jp/jimtof2020/
期間:2020年11月13日(金)~
内容: 放電加工機や射出成型機の新製品を多数披露。JIMTOF2020 OnlineとIPF JAPAN 2020 Virtual(https://www.ipfjapan.jp/)に連動。
オーエスジー
「OSG WEB SHOWROOM × JIMTOF2020 Online
内容:常設。JIMTOF2020 Online開催に合わせて、特別プレゼントがもらえるスタンプラリーなどを開催中。
三菱マテリアル
「DIAEDGE WEB展示会2020」➡ http://carbide.mmc.co.jp/virtual_exhibition/
期間:2020年11月9日(月)~27日(金)
内容:動画や写真、3DCGでの製品展示やWEBセミナー、360°カメラでの工場見学などを予定。
岡本工作機械製作所
「OKAMOTO WEB SHOWROOM」➡ https://www.okamoto.co.jp/
期間:2020年11月16日(月)~
内容:新製品のMAP研削ソフトUPG3010CHLiシリーズなど製品・技術を動画中心に紹介。JIMTOF期間中の特販セール、実機確認予約コーナー、加工やサブスク相談コーナーも。
牧野フライス製作所
「MAKINO MEET NEXT 2020」➡ https://info.makino.co.jp/jimtof2020/
期間:2020年11月16日(月)~
内容:ウォーターレーザー加工機をはじめ新製品・ソフトウェアを豊富なデジタルコンテンツで紹介。ウェビナーも多数。
中村留精密工業
「バーチャルショールーム」➡ https://www.nakamura-tome.co.jp/virtual_showroom/
期間:2020年11月16日(月)~
内容:国内初披露の世界最小主軸を搭載した複合加工機など最新機種のみなrず、NCプログラムを自動生成できるソフト、セットアップが短時間でできるロボットシステムなどを動画などで紹介。リアルタイムに質問できる生放送のウェビナーなども。
(2020年11月10日号掲載)