モノづくり入門
【第8回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/01/24 14:18
- 更新日時
- 2025/01/24 14:22
割出5軸と同時5軸――加工の違い
前回みた5軸マシニングセンタ(以下5軸MC)の活用法として、割り出し(位置決め)5軸加工と同時5軸加工の2つがあります。
XYZの3軸に付加した傾斜軸と回転軸の2軸を、それぞれ任意の角度に固定しておいて加工する方法が割り出し5軸。対して同時5軸は、5つの軸が同時に動きながら連続的に加工を行います。

例えば立方体のワークに斜め穴だけあける場合、傾斜軸を利用した割り出し5軸でカバーできます。しかし曲面形状に削ろうとすれば同時5軸が欠かせません。同時5軸では各軸が連続して自在に動くため、加工不可能だった箇所でも加工できる部位が増えます。
また割り出し5軸加工の場合、「位置を決めておいて加工するパターンの連続」ですから、刃物はワークへの接触・非接触を繰り返し、切削痕がつくなどダメージが生まれやすくなります。紙に描いた絵をハサミで切り抜く時を思い出してください。用紙から何度もハサミと外すとガタが出てうまく切り抜けませんが、用紙を回しながらハサミも同時に動かすと割とスムーズに切れます。後者が同時5軸加工をイメージさせます。
しかし同時5軸を躊躇する工場もあるようです。複雑な機械動作に抵抗感があるうえ、軸とワーク、工具、ホルダ類の衝突(干渉)が起きれば高価なMCが大ダメージを受けます。それが「怖い」。
解決には事前の3Dシミュレーションが欠かせず、工具パスを出す5軸CAMも干渉を避け、どう作動させて削るか試行錯誤してきました。CAMのアプローチは、膨大数の形状例をベースにしたものや、3軸加工を5軸へ発展させる方向で開発を進めた例もあるなどそれぞれです。幸いなことに今は、同時5軸を支援するツールが増え、例えばシミュレーション時間を「実加工の1000分の1時間に短縮させた」NCや、「ぶつけたくても絶対にぶつからない」システムなどが普及しています。
先端の5軸加工をうまく活用するには、過去から必要とされた技術ではなく、新たな技術がモノを言います。「デジタル加工の匠を育てなきゃ」と某自動車関連の取材で聞いた話が印象的です。
同時5軸はいずれ急普及?
同時5軸加工は近年浸透中とされますが、「商品でなく現場での加工方法」のため、実際には普及の度合いがよく見えないのが本当でしょう。その証左に今も5軸MCの販売営業で「割り出し5軸加工をやりましょう」と提案するケースが多いと聞きます。「割り出し加工ならユーザーが事前にできると確信してくれる。同時5軸の話はしばらく置いていますよ」とは5軸MCが主力のメーカー営業。もっとも、デジタルネイティブの技術者は増えており、まもなく状況一変へ?
(日本物流新聞1月25日号掲載)