1. トップページ
  2. モノづくり入門
  3. 【第7回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 

モノづくり入門

【第7回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 

投稿日時
2025/01/10 10:06
更新日時
2025/01/10 10:09

マシニングセンタ【Part.2】

前回みたマシニングセンタ(以下MC)は、5軸MCの登場によって2段飛びの進化を成したといえるでしょう。5軸MCは半世紀も前に考案・開発されたといわれますが、NC(制御装置)や3DCAMがしっかり機能するまでは「一般に使えたわけではないはず」(機械メーカー)です。やはりPCがさくさく動き、3次元データが使える環境が必要でした。ヨーロッパから遅れること数年(10年遅れ説もありますが)、5軸MCは国内で90年代にかけて市場が芽生え、90年代後半から徐々に普及しました。ちなみにモノづくりの3次元化は95年頃から本格化しており、5軸MC市場も、この流れに呼応して広がっています。

さて、5軸登場前の3軸MCを見ると、立形は基本上からの1面加工ですが、横形はイケールをつけて4面加工を行うケースが多くありました。対して5軸MCはタテヨコ高さのXYZ3軸に付加して傾斜軸と回転軸の2軸を備え、一気に5面を加工します。加工効率がグンと高まるうえ、ワークの段取り換えが不要なため、段取り時間のロスと位置精度のズレを解消できます。被削材への刃物の接近性もよく、工具の能力を最大化した切削加工が可能です。

もっとも、各軸の精度誤差が5つ(5軸分)累積されるため、3軸機と比べた精度悪化は理屈からやむを得ません。それでも近年は高精度3軸機と同等精度を実現する5軸機が増え、あくまで印象ですが「5軸MCは精度が出にくい」と言った声は聞かれなくなった感があります。

自由曲面加工などもカバーする5軸MCに対し、CAMやNCも高度化しました。例えば切削工具の進入時の角度と速度をスムーズにする機能や、「ここはRではなく、滑らかで意匠的な曲面が求められている」などと先読みして加工面を整える機能がそうです。

MC販売額に占める5軸機の割合は国内において2割程。関心の高さに比べ実績が追い付いていないとの見方もあり、今後5軸市場がどう育つか注目されます。次回は5軸MCに関連して割出(位置決め)5軸加工と同時5軸加工をみていきます。


5軸機普及で加工賃が下がる? 


5軸MCにより、MCの加工機能は飛躍しましたが、これを逆風と捉える受託加工会社もあります。複数の機械や治具類を使い、工夫とノウハウで複雑形状物を加工していた某町工場などがそう。この会社のトップには取材以外にも何かと教えをいただきましたが、「誰もやりたがらない加工」で付加価値をつけていたものが、5軸機普及により「一定の技術があれば多くが短時間でできる」加工となり、今は受託加工料も下がって大変そうです。進化普及する技術はほぼ常に、旧技術を駆逐するシビアな世界を導きます。

(日本物流新聞2025年1月10日号掲載)