モノづくり入門
【第5回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2024/11/25 11:11
- 更新日時
- 2024/11/25 11:19
旋盤 【Part.2】
旋盤には多くの種類がありますが、ここでは大きさの違いに着目してみます。丸物加工に用いる旋盤は、手のひらに何個も乗る小さなネジ、ピン、ボルト類を加工するものもあれば、鉄道の車輪、長さ数㍍以上の大型フィルムロール、原子力発電のタービンシャフト等を削る大型機もあり、大小で大きな違いがあります。
まず大きいほう。超大物加工ともなると、ワークを機械に据え付けるのに半日かかる場合があると前に取材先で聞きました。今は便利な治具も揃い状況は良くなっていますが、ワーク取り付け時の「原点出し(芯だし)」が狂うとブレが出てオシャカ。大物ワークの振れを取る作業も大変です。
大型旋盤と言えば、大戦前~戦中に稼働したワグナー社(独)製が昨年から、ゆかりある広島県呉市で常設展示され一般にも注目されています。
そう、これは戦艦大和の主砲を加工した巨大旋盤で、当時は全長40㍍あったとか。通常、直径300㍉以上のワークを加工するものを大型旋盤と呼びますが、このワグナー旋盤の取付け面の直径は4㍍近く。トンネルを掘るシールド機械のようにも見えます。
こうした大型旋盤は近年もやはり軍事防衛関係、ほかEV車、鉄道、建機、電力などに絡んで需要があり、高精度のニーズも増しています。ただ「設置場所がない」「機械メーカーが少ない」「ノウハウ取得が困難」と聞かれ、需要層はある程度限られます。
対照的に小型旋盤(自動盤)は―。こちらは前述のような小物部品を、主に円柱形状の被削材から連続的に分単位・秒単位で加工します。第一主軸、第二主軸、背面主軸、回転C軸など複数の主軸を持つ機械が増え、機械内加工エリアでは、前、後ろ、横、下からと刃物が伸びてワークを切削。バー材の送り装置がつくケースでは、加工後に切り落とされ、落とされた分の長さのバー材を新たに送って把持して加工と繰り返します。その際、たわみを押さえる装置(ガイドブッシュ)なども同時に機能し…。加工の様子は不思議な「カラクリ仕掛け」に見えるでしょう。8軸以上・加工ステーション20カ所以上のマシンもあります。
某受託加工会社は自動盤で月産〇千万個の小さな丸物部品を生産。経営者いわく「一秒でもタクトタイムが縮まれば、相当に利益が増える」―現場はそんな世界です。
大型旋盤、地球の丸みも考慮?
工作機械の「知」の世界で著名なJ大学S教授(現名誉教授)がかつて本紙取材で「超長尺ワーク対応の巨大旋盤ともなると、製造時に地球の丸みを考慮する必要がある、そんな議論もあった」と驚きのコメント。それほど大型旋盤づくりは大変なよう。加工時もワークのたわみ等の常時考慮・監視が怠れず、機械製造も加工でも特有のノウハウが不可欠です。
(2024年11月25日号掲載)