モノづくり入門
【第35回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
切削工具----その(3) 最近の開発傾向
- 投稿日時
- 2026/03/31 16:40
- 更新日時
- 2026/03/31 16:44
切削工具のポイントは主に「材質」「刃先形状」「コーティング」の3つとみて、前号まで各々概観しました。今回はこうしたポイントの相乗作用や異発想によって、切削工具が新たなソリューションを導き出している点に目を向けます。

まずは「切りくず処理」や「バリレス」の成果。この分野で現場の悩みを軽減する多種のアプローチがみられます。切りくずを良好な形にして排出し、工具などへの巻き込みを無くす取り組みでは、工具内のクーラントホールを大きくかつ吹き出し角度の最適化を行うケース。あるいは工具につけた微小のチップブレーカーで切りくずを細断し、機械テーブルへの堆積も防ぐ工具。高圧クーラントの活用も注目されます。
「バリレス」も大手など複数メーカーが刃先(エッジ面)の形状設計を大幅に見直すなどして顧客にアピール中です。一例、穴あけ加工で現場を悩ませていた穴出口に広がるバリ(陣笠バリ)を無くすドリル加工を、筆者も展示会の実演で何度か見てきました。
また、工具本体から少し離れますが、工作機械のテーブル上でワークともども工具の状態をプローブで計測し、常時適切な状態を確認して加工するプロセスも浸透。ある切削工具メーカーは最近、センシングツールを使って加工中の振動などから工具の状態を監視するサービスも始めています。このケースでは1秒間に約2万回もデータを取得するというから驚き。データは様々活用できます。
他方、工作機械に乗り切れない大物ワークを、移動するロボットで加工する事例が航空機関連などで少しずつ出ていますが、剛性に限界があるロボット切削を可能にすべく、被削材からの反力を極力抑えてロボットへの負荷を低減させる工具も開発進行中。
市場性を加味すれば、軽さと強さが売りの話題のスーパーエンプラ用に、形状やコーティングを大胆に変えた専用切削工具が登場しだしたことも注目点。半導体など超精密分野に向け、大手メーカーの一部が超小径工具に注力中なのも関心事でしょう。グリーン対応工具も増え、時代テーマに乗る開発成果やソリューションが相次いでいます。
工具もスマートに
モノづくりのDX化に呼応し切削工具もスマートに。本文で触れたように工具の状況を常時監視してデータ化し、データ化するだけでなくAIでプロセス補正する流れが一つ。AI分析で加工のばらつき要因を工具のみならずライン全体から発見する取り組みも進んでいます。また自己修復コーティングといって、コート膜の摩耗を加工中の熱などを利用して自律的に補修する技術も。元来「頭(刃)の硬さ」を持ち味とする切削工具ですが、今どきの工具の地頭(じあたま)は硬くても柔軟で賢い?
(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)