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モノづくり入門

【第14回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 

投稿日時
2025/04/25 13:18
更新日時
2025/04/25 13:21

機械加工のトレンド/その1 ――自動化

機械加工では自動化が一番のトレンドだといえます。

過去の話をひとつ。機械オペレータ1人につき2台のマシンを担当していた独立系・十数人の中小金型工場で「オレ一人で8台見ますから給料を3倍にして欲しい」とオーナーに直訴したヤリ手の若者がいました。初期投資はかかるが長い目でみて経費は相当浮く。人手が足りないある時、オーナーから「給料2倍で任せるがどうか」とあり、手を打ったと、その後独立して工場を持った当人から聞いたエピソードです。

似た話はいっぱいあったはずです。かくして、以前は従業員の活気で溢れた工場が成長しているようにみえたけれど、今は静かに機械音だけ響く工場のほうが、よほど儲かっている―といった現象が広く起きています。

ワークや工具着脱の自動化、自動の温度補正、多種のアラーム発信の自動化。情報蓄積の自動化。公差判定は工作機内で加工と同時に自動でまず行い、工具摩耗も自動測定でNG判定。それに複合加工機などを使えば、複数種の加工を行え、工程集約と自動化が合わさって効率はグンとよくなる。NCやCAM、CAEの進化も自動化を後押しし。…多様な自動化技術が加工の世界を変えています。

いまはワークの自動着脱なども交換時間を競うなど先鋭化。事前の干渉チェックもデジタルツイン活用でサクッとできる。膨大数のパレットチェンジャーや、小型MCに工具100本を搭載可能なタイプも登場などとトピックスが続きます。

再びやや古い話(10年ほど前)ですが、工作機械/板金機械大手メーカーの技術幹部が次のように話していました。

「いま研究しているのは完全無人工場。工場に開口部の大きなポスト(搬入口)を用意し、トラック業者が材料を投入すると、AGVが自動搬送し機械にセット。自動で加工し精度判定を行い、ロボットが梱包し再びポストに戻す。それを業者が受け取ってお客へ届ける。これを研究しているんです」。記憶ではたしか、「夢物語じゃなく本気ですよ」と笑って付け加えたような。その時はまさかと思いましたが、今は既存技術の組み合わせだけで、モノによってはできちゃうかも、ですね。


自動化と人


自動化できる工場はたんまりと仕事があるから。とすると仕事の少ない工場との格差は一層広がります。他方、機械技術の「学」の第一人者と知られる清水伸二氏(日本工業大学工業技術博物館館長・上智大学名誉教授)は昨秋、本紙への寄稿で「工作機械の自動化は大いに進化しているが、人が何も考えないでいいようにする自動化ではなく、スキルをサポートするものであって欲しい」と書きました。今後、AIが自動化を一層高度にしますが、それを取り入れられる工場とそうでない工場の優勝劣敗も気になるし、仮に人のスキルが完全不要になったら、それはそれでハッピーなのだろうかと考えさせられます。



(日本物流新聞2025年4月25日号掲載)