ニーズ高まる超精密・微細

超精密・微細と呼ばれる加工分野がある。ミクロンでは飽き足らずナノの領域までどんどん進出してきた。はたしてそこまでの精緻さが必要なのだろうか。いやいや、身の回りのガジェットを見てほしい。スマホにGPSウォッチ、高精細テレビ、ハイレゾ音源……と私たちの生活に大きな恩恵をもたらしている。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】西部電機のワイヤ放電加工機「SuperMM80B」
【画像3】ワークスが直彫りしたレンズアレイ金型
【画像4】はやぶさ2に搭載されたサンプルキャッチャーのレプリカ(ティ・ディ・シーが研磨)

加工機・刃物以外の要素も重要に

超精密と表現するときどれくらいの加工精度を指すのだろうか。この分野に注力して久しいナガセインテグレックスの長瀬幸泰社長はこう話す。

「サブミクロンの形状精度とナノメートルの単位で表すことのできる表面粗さに代表されるものを、マシンを核とした加工システム、転写性で伝達するには超精密加工が必要だろう」

ただそのレベルは不変ではない。長瀬社長はこうつけ加える。「かつて表面粗さと形状精度が明確に分かれていた時期があった。今は形状と粗さがオーバーラップし、粗さの領域で語られていたものが形状精度として望まれてくる。必然的に品位はさらに1けた、2けた高いものが求められ、昨年までの超精密と今日以降の超精密は当然変わってくる」

2018年に会員20社ほどで立ち上げた微細加工工業会(会長=戸田拓夫キャステム社長)は今や70社を超える大所帯(幹事5社、会員66社)になった。そのことからもニーズの高さは窺い知れるだろう。刃物メーカーもこの分野に力を注ぐ。商品ラインナップの多さで知られる三菱マテリアルは「注力したいのは微細加工分野。重切削でなく軽切削の商品レパートリーを増やしていこうと考えている」と田中徹也・加工事業カンパニープレジデントは明かす。

マシニングセンタ(MC)の高速回転化に伴い、切削工具はダイヤ電着、ダイヤコートからPCD(多結晶ダイヤ)への置き換えが進んでいる。だがそれでも不十分とするのは精密部品製造のワークス(福岡県遠賀郡、1991年創業)だ。同社は親指大の円柱材表面に鏡面の凹みがいくつも並んだガラスレンズ金型(超硬合金製)などを直彫りする。加工精度はナノレベル、コーナーは0.01R以下とひと味違う。その加工にダイヤモンド工具を選んだ理由について、「ダイヤモンド砥石では磨耗がつきまとい0.1Rかせいぜい0.05RとコーナーRに限界がある。PCD工具ではナノレベルは出せない」(三重野計滋社長)と話す。

欠かせない洗浄・測定

こうした加工を実現するマシンも多く揃っている。芝浦機械の空気静圧軸受主軸に3軸をリニアモーター駆動としたMC「UVMシリーズ」は、温度制御された媒体液を構造体に循環させることで熱変位を最小限に抑える。安田工業の5軸立形MC「YBM Vi40 Ver.Ⅲ」は、滑りガイド構造による高い剛性能力を継承し高硬度材金型の直彫りや複雑形状部品の高精度加工で威力を発揮。機内を循環する冷却システムにより、工場の急激な温度変化に影響されにくい。

金型の大型・高精度化に応える西部電機のワイヤ放電加工機「SuperMM80B」は、シリーズ最大の加工エリアをもちX800・Y600ミリの加工エリアで他社が保証しないピッチ加工精度±1ミクロンを保証する。碌々産業の機上計測・追い込み加工システム「COSMOS」は、自動洗浄したワークを機上計測し、形状精度追い込み支援ソフトPlanetで補正。加工機内で「加工→洗浄→測定→追い込み補正」をこなす。

超精密分野では洗浄がもつ意味が大きくなる。小惑星探査機「はやぶさ2」(2020年12月に帰還)に使われたサンプルキャッチャーの研磨加工などで知られる精密部品製造のティ・ディ・シー(宮城県宮城郡、1953年創業)は、清浄装置とクリーン環境に注意を払う。面粗さRa1ナノメートル、平面度30ナノメートル、寸法公差±100ナノメートルを金属(受注の25%)、セラミックス(25%)、樹脂・半導体・新素材など様々な材質・形状で実現するためだ。利用する洗浄装置には超音波装置が組み込まれており、水を振動させることで不純物を除去する。4年ほど前からは従来のキロヘルツ帯からメガヘルツ帯の超音波装置を使うようになった。その理由について「研磨剤や切削油など一切の付着物がない状態にするのに必須。メガヘルツ帯の細かな波(波長はキロヘルツ帯の30分の1以下の約1.6ミリ)が微小な隙間に入って汚れを取り除く。化学薬品を使う手法もあるが、環境によくない」(赤羽優子社長)と言う。

超精密は切削工具、加工機だけで実現するものではなく、補正、洗浄、測定を含め、さらに環境にも配慮することが必要になるようだ。

(日本物流新聞 2022年3月10日号掲載)

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