【建設・インフラ特集】最新設備で変わる鋼材加工
- 投稿日時
- 2024/12/11 14:17
- 更新日時
- 2024/12/17 17:59
資材高・人材不足で14年ぶり400万㌧割れ
2023年度の鉄骨需要量は、リーマンショック直後の09年以来14年ぶりに400万㌧を下回る391万㌧に着地した(国土交通省「建築着工統計」=グラフ)。資材価格や人件費の上昇、働き方改革などによって、建設計画の見直しや延期、中止などが相次いだことが理由だ。
今年度もそうした影響は続きそうで、4-6月期の鉄骨需要量は約99万㌧と2四半期連続で100万㌧を下回っている。Hグレードのファブリケーターの見方では「来年までは厳しい状況が続く」ようだ。
「建設コストが高くても収益が見込める首都圏の物件ではそこまで落ち込んでいないですが、地方の中小の物件は建築コストの上昇だけでなく人手不足が深刻で計画の見直しや延期が相次いでいます。26年には止まっていた物件や中止した物件が再度動き出すと見込んでいますが、それも確かなことは言えない状況です」(Hグレード・ファブリケーター)
本来、鋼材価格が上がり需要が落ち込むと、流通在庫が増加し安売りされるのが一般的だが、現状、鋼材メーカーが一般流通向け(店売り)の販売を見送るなどすることで、価格が高止まりしている。
「現在、鋼材メーカーには環境対応が求められていて、高炉を電炉に変えたり、水素を利用してCO2排出量を下げる高炉に多額の投資をするため、メーカー側は鉄の値段を下げたくないという思惑があります。また、海外からの安価な製品が入ってきており、高付加価値な鋼材で生き残りをかけているという側面もあり、結果、需要が落ち込んでも日本の鉄の価格は下がりにくい」(鋼材商社)
■設備投資で効率化・新需要開拓
そうした動きと連動する形で設備投資も25年までは軟調ではないかという見方が大勢を占めているが、新たな取り組みを進める企業もある。富山市八町に立地するHグレードの堀井鉄工は、新東工業が取り組むショットブラストの無人運転化に向けた取り組に賛同し、テスト導入に協力している。
堀井鉄工の白山肇顧問は「(現場の)オペレーターは鉄骨を何本処理するかという生産に意識が向きやすいもの。今回のシステムはオペレーターが逐一機械の状態を監視しながら対応しなくても、ほぼ自動で一定の加工ができるようになっている」とメリットを語る。
構造系BIMソフトを国内でいち早く導入した渡邊鐵工所(静岡県藤枝市)も、BIMの活用段階を一段上げるため、22年に稼働開始した吉田工場(静岡県榛原郡)にBIMと連携可能な墺Zeman社製の梁自動組立てシステム(=写真)を導入。鋼材の切断から梁への部材の仮溶接までをほぼ完全自動化する。新人に手作業の組み立てを教育するとしたら10年かかっていたものが1年ほどでだいたい同じようなことができるようになるという。そのため、吉田工場の平均年齢は20代と、設備投資で超若手が第一線で活躍できる環境を用意する。
渡邊鐵工所では梁自動組立てロボットを導入することで、梁に取り付けるプレートの仕分けからAMRでの搬送、梁への取り付けまでをほぼ全自動化した
一転、鉄骨ファブリケーターに鋼材を供給する鋼材商社も、自社に加工設備を抱えることで事業領域を広げている。さらにはヤマザキマザックの3Dレーザー加工機を入れることで、新たな加工ニーズを既に掴み地場から全国へと活躍の場を広げつつある。
国内全体の数字だけを追うとリーマンショック並みに厳しさが目立つ。しかし、今ある企業の多くがそうした状況を乗り越えてきた経験がある。厳しい中でも次なる時代につなぐ一手を模索する姿に鉄のような強靭さを感じた。
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(日本物流新聞2024年12月10日号掲載)