IT人材難時代におけるモノづくり企業「DX推進」の鍵

我が国モノづくり企業はデジタル化においてライバル国に大きく遅れを取っている—。数年前からそうした調査結果がいくつも挙がっているが、それでも緩やかな変化しか見られないのが現状だ。デジタル人材不足を乗り越え、勝ち残れる企業になるために必要な方策を探ってみた。

国内企業におけるデジタル化の流れは確実に歩を進めている。だが、その足取りは軽やかとは言い難いのが現状ではなかろうか。

2023年の中小企業白書における「デジタル化への取り組み」によると、「デジタル化が進んだ」と回答した企業は2019年の17.3%から、33.8%へとほぼ倍増しており、2025年には過半数を超える58.4%となる見通しだ。

一方でDXへの取り組みは2019年の2.6%から4.6%と微増にとどまり、改めてDXに取り組めている企業が少ないことが窺い知れる。中小企業庁はこの数字が2025年には18.2%まで上昇すると見通しているが、これまでの上昇率を見る限り、かなり甘い見立てにも思える。

総務省の2023年情報通信白書によると、日本、米国、ドイツ、中国の企業にデジタル化の取り組み状況について尋ねたところ、日本では「未実施」と回答した企業が50%を超えており、他の3カ国と比較してデジタル化の実施がかなり遅れていることが浮き彫りとなっている。

国内企業がデジタル化推進に向けて具体的に取り組んでいる事項については、日本では「業務プロセスの改善・改革」、「業務の省力化」や「新しい働き方の実現」との回答が多かったのに対し、諸外国では働き方や業務の改革に加えて「顧客体験の創造・向上」や「既存製品・サービスの高付加価値化」との回答も多く、ひと段階上のデジタル活用が進んでいることが窺い知れる。

さらに、デジタル化の推進により得られた効果については、「新規ビジネス創出」、「顧客体験の創造・向上」、「既存製品・サービスの高付加価値化」、「業務プロセスの改善・改革」、「業務の省力化」、「新しい働き方の実現」の観点でそれぞれ調査したところ、日本では各観点に共通して「期待以上」の回答が最も少なく、「期待する効果を得られていない」との回答は4カ国の中で最も多い。投資対効果を実感できていない、また適切なデジタル投資が行えていないという側面も見え隠れする。

適切なデジタル化を推進する上で障壁となっている点について、日本企業は「人材不足(41.7%」の回答が米国、中国、ドイツの3カ国に比べて非常に多く、次いで「デジタル技術の知識・リテラシー不足(30.7%)」と、人材面に関する課題が挙げられている。

実際に日本企業は、諸外国の企業に比べて全体的にデジタル人材が不足している状況にある。特に、「AI・データ解析の専門家」が在籍しているとする企業は21・2%にとどまる。他の3カ国は軒並み60%を超えており、それと比較すると状況は深刻だ。

システム開発の内製状況についても同様だ。日本では自社主導でシステム開発を行っているのは約44%であるのに対し、諸外国では約80%と大きな差が生じている。すなわち、日本企業は外部ベンダーへの依存度が高いゆえに、組織内でICT人材が育ちにくい環境となっている。さらに外部への委託が主体的なデジタル改革を行う上でのスピード感の欠如にも繋がっていると言えるだろう。

グローバルでデジタル化、DX推進の動きが加速している中、モノづくり企業においても規模の大小に関わらず、迅速な取り組みが今後の浮沈のカギを握っていると言っても過言ではなかろう。

■デジタル人材を社内で育成

デジタル化において遅れを取っている日本企業だが、成功例はいくつも出ている。それらを紐解くと、中小企業でもデジタルのチカラを活用した成長は夢物語ではない。

すでにデジタル化を進めている企業を見てみると、経営者層が自らデジタル化を進めている割合が高い。部分的なデジタルツールの活用なら担当者レベルでも進められるが、全社的なシステム導入や、デジタルによるビジネスモデルの変革となると、経営者層がデジタル化への強い意識を持っているかいないかが大きな違いを生んでいるようだ。

デジタル化にしても何にしても、改革を行うにあたり場当たり的に進めるだけでは思うような成果が上がらないのも事実だ。

戦略的な取り組みを行うにあたり、
(1)ビジョン・目標の設定
(2)業務を棚卸しして問題点を洗い出す
(3)評価指標を設定する
(4)費用対効果を検討する
(5)デジタル化予算を確保する
という5つの項目を実践することが重要とされている。
またデジタル化を行うにあたりデジタル人材の確保が必須となる。しかし、人手不足の昨今においてデジタル人材は引く手数多。中小企業のみならず大手企業間でも熾烈なリクルート合戦が繰り広げられている。こうした人材を中小モノづくり企業が獲得するのは極めて難しい。

一方で、デジタル化をうまく進めている中小企業においては、自社内のリソースを活用してデジタル化に取り組んでいるケースも少なくない。バリバリのデジタル人材でなくとも、インターネットや書籍を読めばある程度、社内に必要なデジタル化の知識や方法を導き出せる人間は少なからずいるはずだ。

また、デジタル化を進める企業において、経営者層主導のケースに次いで多いのが社内からの「デジタル化遅延に対する危機意識」から生じた変革だ。登用できる可能性の低いデジタル人材を外に求めるより、今後は自社内でのデジタル人材育成へ舵を切るほうが賢明であろう。現場の社員なら外部の専門家では分からないことや気づきにくい部分も把握しているという大きなアドバンテージもある。

(日本物流新聞 2023年3月25日号掲載)

関連記事

mt:ContentLabel>サムネイル

【REPORT】 第5回 関西物流展

ほんのひと昔前まで、ケース自動倉庫はスタッカークレーンがラックの間に敷かれたレー...

mt:ContentLabel>サムネイル

INTERMOLD2024レポート

INTERMOLD2024(第35回金型加工技術展)/金型展2024/金属プレス...

mt:ContentLabel>サムネイル

生産性を飛躍的に高める切削工具

切削加工における生産性向上を図る上で、もっとも費用対効果が高いと言われている「切...

mt:ContentLabel>サムネイル

狭まる「脱炭素包囲網」

すでに深く浸透したカーボンニュートラル(CN)というワード。「またその話か」と顔...