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工場の暑さと寒さに挑む

投稿日時
2024/10/10 13:01
更新日時
2024/10/10 13:16
BXテンパルの遮熱シート「はるクール」。車のサンシェードをイメージすればわかりやすいが、それより大幅にアルミ箔の純度が高いため性能も高い。

働き方改革を進めるうえで適切な温度環境の整備は外せないテーマ。国内は断熱性の低い工場が多く、放置すれば外の暑さ・寒さがダイレクトに伝わる過酷な環境になりやすい。暑さ・寒さは作業者の体力を奪い集中力の低下や熱中症で労働災害の引き金にもなる。今いる働き手を守り新たな人材を獲得するためにも、対策を急ぎたい。


思えば、今夏の暑さはまさに災害級だった。6~8月の平均気温は平年(過去30年平均)+1.76℃と昨年同様で、2年連続で過去最高をマーク。7月の全国における熱中症による救急搬送者数も同月としては過去2番目に多い43195人に。気象庁は特に7月以降の暑さについて「異常気象だと言える」と振り返った。

秋分の日を迎えても暑さは収まらず、「暑さ寒さも彼岸まで」の諺はいまや死語になってしまった感がある。工場に多い金属製の折板屋根は日差しに当てられると70〜80℃の熱を蓄え、熱源となって屋内に暑さを伝えやすい。設備からの放熱もある。そうして外気温より暑くなった環境で長時間働けば、当然ながら熱中症の危険が高まる。そうでなくとも過酷な現場の離職率は高い傾向にある。暑さを放置することはすなわち、企業の継続運営における大きなリスクをたなざらしにしているのと変わりないだろう。

暑熱対策製品は多岐にわたるが、現場や目的に即した機器を選ぶことが重要になる。導入まで時間がかかるものも多く、検討や仕様決めも踏まえれば暑さの記憶が鮮明な今のうちから来夏の対策に取り組みたい。昨今のエネルギー価格や脱炭素の流れを考えれば省エネも重要な指標となる。

これから冬の寒さが本格化する。夏は暑く冬は寒いのが日本の特性で、特に床から冷気が這い上がる工場では厳しい寒さを感じやすい。遮熱材で建物自体に対策を施せば、寒さだけでなく夏の暑さにも対応できる(下に関連記事)。

暑さ・寒さの対策は直接的な利益を生まず、それゆえ今まで中小企業における投資の優先順位はいまひとつだった。ただメーカーや生産財を扱うディーラーは「今は人手不足で潮目が変わった」と口を揃える。この流れに遅れないようにしたい。


BXテンパル、オールシーズン快適な現場を遮熱シートで

夏は熱を遮断、冬は熱を逃がさず


2024年の夏も前年と並び、30年平均+1.76℃と観測史上1位タイの暑さだった。この状況にまったく無策の工場は少ないだろう。ただ暑気対策が狙った効果を上げているかはまた別問題。特に断熱に難があり屋内が熱しやすく冷めやすい状態では冷暖房が本来の効果を発揮できず、最悪、送風機も温風を届ける余計なドライヤーと化す。改善には建屋側で抜本的な対策が必要になる。

この観点で、BXテンパルの遮熱シート「はるクール」が導入を拡大している。純度99%以上の高純度アルミ箔を両面に貼ったシートで、基本的にアルミニウムは反射率に優れ、純度が向上するに伴い、その傾向は強くなる。また、特定波長において高い反射率を示す。これを建屋内、屋根や壁の裏に貼ることで屋内の温度上昇を抑えられる。冷房の効率も上がり省エネにもつながることから現在、導入を伸ばしている。

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はるクールの施工風景

遮熱対策が施されていない工場は外気温が35℃程度にも関わらず、室内温度は40℃以上になることがある。これは太陽光で屋根や壁が温められて熱源になり、そこから屋内へ輻射熱が伝わるからだ。はるクールはこの熱を反射。従来比で室温を「小さいと2℃、大きければ9℃」(同社測定、実績ベース)下げる効果がある。

体感温度ではより違いが出やすい。例えば気温が同じでも日陰と日向では体感温度が異なるが、これは太陽の輻射熱で皮膚が熱せられ熱源となることが一因だ。はるクールはこの輻射熱を反射し、日向を日陰にするのと近いイメージの効果が得られる。近年、多くの工場が重視する熱中症警戒アラートでも使われる暑さ指数(WBGT)では、輻射熱も計算式に含まれる。同製品はこの指数の改善に寄与する。

■魔法瓶のような保温効果

一概には言えないが、夏場に暑くなる工場は往々にして冬場も寒くなりやすい。暖房で暖められた空気は上へ向かうが、遮熱に難があるとせっかくの熱が片っ端から屋根を伝って逃げてしまう。はるクールは冬場、この熱を夏と逆に室内へ反射。魔法瓶のような保温効果も期待できる。オールシーズンで温度変化の少ない快適な環境を作り出せるのだ。

はるクールは21年の発売と比較的新しいが、昨今の記録的な猛暑を受けて販売を伸ばす。紫外線の影響がないため一般的な遮熱塗料と比べおよそ2倍(約10年)以上の耐久性があることや、国土交通省の不燃認定を受けた素材を用いている安全性も評価されているという。担当者は「夏は終わるが、ぜひ今のうちから工事を進めてほしい」と話す。夏場には案件が立て込むうえ、頭上に熱せられた屋根がある夏とそれ以外の季節では施工能率にも差が出るためだ。

年によって程度の差こそあれ、結局のところ日本の夏は暑く過酷だ。暑さが喉元を過ぎない今のうちに来夏に備えるべきだろう。


鎌倉製作所、地下水利用で50℃の現場が外気温レベルに


たとえ地上がうだるような猛暑でも、地下を流れる水は年間を通じてほぼ温度が変わらない。鎌倉製作所はこの天然資源に着目、エコな暑熱対策として「ジオ・アクアシステム」を提案する。地下水で外気を熱交換し冷却してシロッコファンで供給したり、水冷チラーに利用して冷水をつくり冷水ウェアに供給する同システムは、まだ発売から日が浅いが、省エネな暑熱対策という点がニーズに合致し全国で納入事例が増えている。

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一例として、アパレル商品やユニフォームに使う繊維の開発・製造を行う企業では地下水利用のユニットクーラーが稼働を始めた。この企業の工場では190℃の乾燥機が複数台並ぶ「仕上げエリア」があり、断熱を施しても機械の放熱により真夏の室温が50℃近くになっていたという。ゾーンニングによる空調も難しく、天井の換気扇で熱を逃がし給気口から外気を取り入れる対策も、うまく気流を制御しなければ品質に影響が出ることから思うようにはいかない。とはいえ暑さ対策は喫緊の課題。そこで浮上したのがジオ・アクアシステムの導入だった。

床面から3㍍の高さに背中合わせで地下水利用のユニットクーラーを2台設置したところ、外気温29.7℃に対し吹出口から3.5m地点の気温が27.5℃と外気温マイナス2℃に。体感温度は21.7℃(鎌倉製作所計算による)と大幅に下がった。ルーバーで風の向きを調整できるため工程に影響も出ず、導入企業は「想像以上の効果」と驚く。

採用難・人手不足はもはや製造業全体の課題で、導入企業も「働きがいのある会社」を理念に掲げている。「作業環境は働きがいに直結する要素で、会社が従業員のために対策することでゆくゆくは会社にも還元される」という経営者の思いも導入の後押しとなったようだ。

日本の地下には豊富な地下水脈があり生活用水や工業用水として活用されているが、暑熱対策としての利用はまだ半ば。今後の拡大が期待できる。


静岡製機、裸火NGな現場の寒さ対策


2年連続で記憶に焼き付く夏の暑さが続いた。作業者を過酷な環境から守る暑熱対策の必要性は「怪我の功名」ではないが、製造現場にかなり浸透した感がある。ただ、翻って冬の寒さ対策は一歩遅れているのではないかというのが記者の所感だ。熱中症と違い命の危険には直結しづらい、と軽視した結果、後回しの現場も多いのではないだろうか。

様々な暖房機器を手がける静岡製機も「暑さ対策と比べ寒さ対策は遅れている」と明かす。人手不足を受け、「働き方改革による作業環境の改善目的での寒さ対策に力を入れる企業は増えてきている」というが、取り組み状況にはまだ差がありそうだ。だが製造業を取り巻く人手不足は深刻。天井が高く底冷えしやすい工場の寒さを放置すれば今いる人材さえ離れかねない。冷えによる体調不良や作業ミスを減らすためにも対策を打ちたい。

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10月発売のパネルがワイドな遠赤外線電気式ヒーター「WPS46

静岡製機の遠赤外線電気式ヒーター「ほかっとe」シリーズの売上が年々上がっている。2022年に起きた火災では電気設備機器が原因の37.1%を占め(東京消防庁「令和5年火災の実態」より)、工場火災のリスクに配慮した暖房機器(灯油式や赤く光る赤外線電気式ではない機器)が企業の間で広がりつつある。ほかっとeシリーズは発熱体に紙が触れても発火しにくい、『裸火ではない』安全な電気ヒーターで、この点が評価されて裸火が使えない施設や工場で導入が増加する。ガード温度も90~110℃のやけどに至らない温度。東京消防庁 火災予防条例第23条に合致し、屋内での使用場所が制限されない。

同製品の暖かさを静岡製機は「太陽のようなぬくもり」と表現する。10月にはパネルが従来機比245㍉ワイドな「WPS46」(750㍉のワイドパネル)も発売。「太陽のようなぬくもり」をより広範囲に届けられる。

(日本物流新聞1010日号掲載)