深掘り! 作業工具の魅力
- 投稿日時
- 2024/11/25 15:04
- 更新日時
- 2024/11/25 17:41
作業現場で選ばれる工具
「手の延長」として職人の技術を余すことなく伝え、研ぎ澄ました感覚に応える作業工具。その機能性や作業性の進化が、現場の品質を支えてきた。精度はもちろん、耐久性や安全性の向上、軽量化や使い心地の改良による作業負担の軽減、あるいは多機能工具の開発など、メーカーによる現場目線の開発努力や細部へのこだわり。また実際に人の手を介すために生まれる作業工具への愛着もハンドツールならではの魅力だ。本特集では時代や現場を超えて愛される作業工具について深掘りし、改めて魅力を発掘して、光を当てた。またユーザーニーズの具現化や求められるファッション性に呼応し、注目を浴びた製品にも目を向け、選ばれる作業工具とは何かを幅広く探った。
労働力不足と働き方改革により効率性がいっそう求められる作業現場。モノ作り現場の機械化・自動化が進んでも、人の手による作業が必要な場面は数多く残る。しかし人材不足だけでなく職人の高齢化といった人にまつわる喫緊の深刻な課題が取り巻いている。
そのような状況で、2024年度の建設投資は、前年比で増加2.7%増加、約73兆200億に達すると予想されている。政府投資は前年から3.7%増で、インフラ整備など公共事業に重点が置かれ、民間投資はオフィスビルや工場などの非住宅建設投資が増えると見られている。その一方で、経済産業省「生産動態統計」をもとにまとめた2018年から23年までの販売推移では、一時的に落ち込みを見せたコロナ禍以降、伸長が続いていたが、23年は前年比で微減した。
建設投資見通しは堅調だが、足元の人材不足や職人の高齢化は現場を逼迫しつつある。いかに作業工具により作業効率を高めるか、連続作業の負担軽減が図れるか、メーカーはしのぎを削る。
■ニーズ掘り起こしやファッション性追求
SNSの発達などにより、以前よりもユーザーの声を拾いやすくなったという話を取材中いくつか聞いた。その声を基にニーズを分析し製品開発に活かしたり、ターゲット業界を明確にしたと言う意見も。「作業工具にもファッション性が重視されている」と、工具の外観にもこだわりを反映させるメーカーは多い一方で、あえてトレンドを追わずに「安心感、信頼感のようなダサさ」「見た目より機能美」を重視する姿勢に価値を感じる職人もいる、とトレンドを追わない姿勢も聞こえた。このように話すメーカーも、アパレルブランドやセレクトショップからの依頼でコラボレーションを果たしており、「ファッション性」というのは一概に捉えられるものではないようだ。
業界によっても特色が見られるそうで、あるメーカーはこう話す。「工具のデザインにこだわり、ファッショナブルで統一感のある格好を求めるのは電気工事士。水道工事は配管など水回りの設備をトラックに積み込んで移動し、現場でも服が水場で濡れたり汚れることも多い。電気工事士はハイエースで移動し、ハイエースにもこだわる。そういう違いが原因かもしれない」、「電気工事士だけでなく、とび職もファッションにこだわりがある。ニッカポッカのイメージがあると思うが、街でも着れるような服装と言うよりは『とび職のファッション』を追求する職人さんが多く、その延長線で工具にもこだわる。虹色のしの付きラチェットを使う人も。コンクリートを切ったりする水道屋さんは、工具の『本当の性能』を重視する傾向が強い印象」。
見た目の話だけでなく、これまでになかった製品ニーズを現場の声から掘り起こし、ヒットした成功事例も聞く。オーエッチ工業の「杭打ちハンマー」は、農作業で防獣フェンスを設置する際、ハンマーのパイプ状になった柄の中にすぽっと入れ、カンカンと打ち込むことで、振り上げず自然な体勢で高さのある柵を安全に打てる製品。農作業に従事する人からの困りごとに応え、同社が初めて出した農作業用ハンマーだが高齢者でも使いやすく、数年前の販売以降コンスタントに売れる製品になった。
また、フジ矢のKUROKINシリーズの「ギア付きモンキーレンチ」は「足場鳶さんに欲しいサイズ感やラチェット機能を聞いて開発した製品」で、モンキーレンチの口開きが最大38㌢と従来製品より大きくなり、サイズ違いの三つのラチェットを付けた多機能工具。「『フジ矢は電設工具』というイメージが強かった当時から、とび職の方にフジ矢と知らずに使っていただいており、長く人気の製品」と話す。
スーパーツール、配管現場の効率追求
「つかむ」と「回す」の利便性向上へ
「スリムヘッドウォーターポンププライヤ」と「オープンギアレンチ」の設計に携わった技術開発部 永屋貴之主任(左)と阪本良太係長
多彩な製品群を扱い、幅広い現場で使われているスーパーツールの作業工具。ウォーターポンププライヤとギアレンチをそれぞれアップデートさせ、作業現場の効率化を追求する。
ガスや水道、空調などの配管工事やボルト・ナット・継手の締め付けに使うスリムヘッドウォーターポンププライヤ。掴む径の大きさに合わせて自動調整できるフルオート機能をもたせ、作業性を格段にアップさせた。「47㍉メートルの最大口まで一気に開き、異なる径を調整要らずで片手で楽に使える。つかんだ部分を支点としてラックとカムが噛み合いしっかりとつかめ、外すときは内部のばねでスムーズに動く」(技術開発部技術1課永屋貴之主任)。創業100年にわたる同社が、長く現場に納入してきた一つのプライヤに時代に合わせた新機能・仕様を付与した。
最大口47㍉メートルのフルオート機能を加え片手で操作できるウォーターポンププライヤ
特長は樹脂に抗菌素材をまぜた抗菌仕様のグリップで、菌の繁殖を抑え(産業技術総合研究所で効果検証済み)、衛生的に作業できる。
「三枚合わせ構造のためジョイント部の遊びが少なく、がたつきが少ない。左利き・右利きにかかわらず、どちらの手でも同じように操作できる。特殊合金鋼を採用し最適な熱処理を施し、耐久性は抜群」(永屋主任)。
全長は245㍉メートル、質量は440㌘。ロック機構により使わない時は工具箱で広がらず収納できる。また、先端部を鋭角に削り込み、狭いところでも作業がしやすいスリムヘッドに仕上げるなど随所に使いやすさを持たせた。
このほか、国内外で強いシェアを持つラチェットレンチにおいてもラインナップを増やす。このほど本格販売するオープンギアレンチは、つながった配管のナット締め付けが行える。ソケットに送り角度5度のラチェット機能付きで効率的に作業できる。
「ギアレンチに開口部のような切り欠き部を設けた。エアコンと室外機を接続する冷媒配管など、ナットで繋がれた部分に通り、スムーズに締め付け作業ができる。ラチェット機能により早回で仮締めが行え、作業の負担軽減につながる」(技術開発部技術2課阪本良太係長)と話す。
ストレートタイプ「GCW」と首振り機能のあるフレックスタイプ「GCW―F」で作業場所によって選べる2種類をそろえた。
開口したギアレンチで繋がった配管ナットも締め付けられる
ベッセル、ネジ外しシリーズなどヒット
SNS活用で垂直立ち上げに
ハズセル ボールインパクタ
ベッセルの新ネジはずしシリーズ「ハズセル」や「2WAYシリーズ」、「電動スリムラチェット」などが発売直後から垂直立ち上げ的にヒットしている。これは「ユーザーのお困りごとを解決する商品開発」に加え「SNSを活用してユーザーの興味を高めたのちに発売する」という新たなマーケティング手法が奏功した結果だ。
4月に発売された新ネジはずしシリーズ 「ハズセル」 の新製品「ハズセル ボールインパクタ」「ハズセル ボールグリップ貫通」「ハズセル ビット」がヒットしている。「238HWハズセル ボールインパクタ」はハンマーで叩くと12度逆回転するインパクタ機能の差替ボールグリップだ。強力な打撃で固いネジを一気にゆるめることが出来る。ハズセル ボールグリップ貫通は変形しやすい箇所のネジや錆びたネジに適し、刃先を食い込ませてゆっくり外す。また新設計の先端くさび形状・抜け防止構造のビット「HZ16」がネジをがっちりとらえ錆びたり、ネジ山が潰れたネジにも対応する。
企画部の長田吉生氏は「ネジ外しは、HPの検索数もYouTubeの視聴数も多く、ユーザーが『ネジが外せない、どうしよう』と困っておられる」とし「ハズセルとジャンルは違うが、『ユーザーのお困りごとを解決する』という観点で、通常のドライバー形状からL型ドライバーに変形する2WAYシリーズも発売した。普段は普通のドライバーとして使い、増し締めや固いねじのゆるめはL型にすることで力を入れられる」とする。2WAYシリーズはスピードLハンドルもラインナップされ長軸側のソケットは首振りドライブに対応し回転グリップで軽快に早回し。ソケットでの本締めは短軸側を使用できる。
■お困りごと解決ネットで好感
同社は昨年よりSNSでの発信に注力しており、「お困りごと解決」を主眼にした商品開発との相性がよかった。「従来だと、販売店がユーザーにチラシなどを持っていき認知してもらって初めて商品が動くというスロースタートだったが、『こういうのが欲しかった』とSNSでユーザーの需要を直接喚起しているので発売と同時に商品が動く。販売店も最初から需要が見込める」(同)となった。
満を持して「電ドラボール」のラチェット版「電動スリムラチェット」を発売。「9月に発売して12月を過ぎても製造が追いつかない状態」(同)。発売直後に品薄になるという課題も発生しており「大変ご迷惑をおかけしている。SNS戦略による販売状況の変化に対応できるようにしていきたい」(同)とした。
ロブテックス、圧着工具もファッショナブルに
所有欲を刺激するエビ印工具
所有感を満たす洗練されたデザインをエビ印の品質で形にした、新たな工具シリーズ「J︱CRAFT99(ツーナインズ)」。並んだふたつの9には「常に百(完璧)を目指して進化を続ける」というロブテックスの思いが込められている。高級感のある黒で統一された見た目と高い品質がユーザーを捉え、取り扱い店舗が急速に拡大する新進気鋭の工具だ。
モンキレンチやプライヤなど様々な工具をラインナップするが、とりわけ「圧着工具の評判が良い」と国内営業部営業企画チーム 渡邉達哉チームリーダーは言う。近年、特に電気工事士はファッショナブルな見た目を追求し、腰回りをシックな色に統一するなど工具もこだわる傾向が強い。ただ圧着工具の場合「対応する端子に合わせてグリップ色は赤か青が採用されている」(渡邉氏)のが通例で、電気工事士がメインで使う工具にも関わらず、シックなデザインを選ぶことが難しかった。
「格好良い圧着工具が欲しい」。この声に応え99シリーズの圧着工具を発売したところ、服装にこだわる職人からかなりの好評を博した。先に発売したのは様々な端子を扱えるマルチタイプの工具だったが、官公庁関連や大型施設など一部の工事ではJIS認証を受けた圧着工具での施工が求められる。そこでユーザーの声に応え、JIS認証を受けた圧着工具をこの9月に3機種、追加で市場投入もした。
エビ印の圧着工具は今年で生産開始から63年目を迎え、すでに市場へ広く浸透している。むき出しだったラチェット機構をいち早く内蔵型にするなど「常にトレンドを作る新たなモデルの圧着工具を出してきた」という自負が同社にはある。実際、今回もデザインで先陣を切った結果、「所有したくなる圧着工具」が形になった。
ところで「完璧を目指し常に進化を続ける」という99シリーズならではのエピソードも聞いた。同シリーズの圧着工具は発売当初、握りやすくするためにグリップの上端が外側に出っ張っていたが、腰袋に引っかかるというユーザーの声を受けてスリムな形状へ発売後に仕様変更したそうだ。「99シリーズはユーザーの声を常に反映させることがコンセプト。今後も『ドンピシャ』を目指しユーザーの声を拾いたい」と渡邉氏は力を込める。
MCCコーポレーション、パイプ&コーナーレンチを軽く広く
サイズ展開も充実
MCCコーポレーションは「パイプレンチ アルミスリムワイド」(=写真)シリーズと「コーナーレンチ アルミスリムワイド」シリーズを展開。サイズも充実させている。
「パイプレンチ アルミスリムワイド」は「待望の業界初の薄型軽量パイプレンチ」で、強靭なアルミ合金鍛造ボディーと手になじむハンドルデザインが特徴。同300サイズで同社同等品と比べて歯幅が約30%スリム化し13㍉に。重量も約13%軽量化した600㌘で、今までレンチが入らなかった狭所配管に使用できると好評だ。350サイズもラインナップに追加されている。エルボ・チーズなど掴み幅が狭い継手の締め付け、ニップル、ユニオンなど二丁使いが必要な作業にも最適という。
コーナーレンチを業界に先駆けて開発し30年以上販売している同社が「自らを進化させ続けることが使命」(同社)と送り出した「コーナーレンチ アルミスリムワイド」シリーズ。同300サイズで同社同等品と比べて歯幅21㍉→13㍉、最大口開き44㍉→48㍉、重量600㌘→475㌘と軽量化とワイド化を両立している。フレームは錆に強いクロームメッキを施している。サイズは300のほか、350、250、450と発売。短ニップルなど掴み幅の狭い部材の締め付けに活躍する。
同社は「多くの作業現場の皆様の要望をそのまま取り入れた、21世紀型工具の新しい形」と自信を見せる。
エンジニア、切断力アップした電工ペンチにマルチ機能
あらゆる現場のトラブル解決
ネジトラブル解決のための独自工具を開発・販売するエンジニアは、ネジザウルスの新製品でさらなる作業効率アップを図る。
配線切断に特化した「ネジザウルスVAX(PZ―75)(=写真)」は抜群の切れ味とマルチ機能を搭載。ネジザウルス機能はもちろん、切断から圧着まで1本であらゆる作業が行える。「ケーブルを切断する様々な職人の方にすすめたい」(同社)。VVF線2・6㍉の3芯やVVR線5・5㍉×3芯の切断、溶接ケーブル22SQが切断可能。刃をすり合わせて切断するシャーリング構造と、刃付け職人による高い技術でエアコン用銅管も切断できる切れ味を実現した。また、股下の鉄線カッターでは、軟鉄線やステンレス線も切れ、釘の長さも調節できる。さらにアース線などの仮圧着も可能で、手元に圧着工具がなくても中断せず作業を行える。
「頭の潰れたネジ、錆びたネジが外せるネジザウルス機能は普通にネジ締めも可能で、 出番が少ないサイズのドライバーを持ち歩かなくて済む」(同社)。1本の工具に欲しい機能を盛り込み、職人の負担軽減を追求する。
車輌整備で使えるオートアジャスト機能付きのネジザウルスVP︱5(PZ︱68)は全長220㍉のボディで板厚最大36㍉、パイプ径7~36㍉まで対応する。
開き幅の調整が要らないオートアジャスト機能で、薄物も厚物も一度でロック。保持力の強弱が微調整できるネジ付き。
頭が全く出ていないネジを叩かず楽々外せる大好評のネジモグラはサイズ展開も豊富に。全長105㍉のロングタイプ、65㍉のミドルタイプ、18㍉の極短タイプとなり奥まった場所や非常に狭い場所のネジ外しに対応できる。対応するキャップボルトのサイズもバラエティを拡充。大きなボルトに対応するソケットタイプも用意した。ロングタイプとミドルタイプは電動ドライバーにもセットでき、効率よく作業できる。
東日製作所、Windows・iOSと通信可能なトルクレンチ
Excelや帳票電子化シスに自動入力
東日製作所の「CEM3-BTLAシリーズ」は、WindowsやiOS機器と無線通信可能な角度測定機能付きデジタル式トルクレンチ。Bluetooth搭載のデジタルトルクレンチ3機種(CEM3-BTS、CEM3-BTD、CEM3-BTAシリーズ)を1機種に統合した「CEM3-BTシリーズ」の特殊仕様品で、Excelへのデータ入力や市販の帳票電子化システムとの連携を可能にした。
CEM3-BTシリーズと同様に、単方向通信のBSTシリーズと双方向通信のBTDシリーズ、角度センサー搭載のBTAシリーズそれぞれの機能を追加購入なく使用できるだけでなく、トルクと角度を測定して2度締めや「かじり」検出のような高度な合否判定も行え、本質的な締付けの信頼性向上が期待できる。
現状、連携が確認されているシステムは、i-Reporter(シムトップス)、XC-Gate( テクノツリー)の2つ。ファームウェアバージョンがVer2・1以降であれば、送信データ末端のエンドコードに「TABキー」が選択可能となるため、XC-Gateへのデータ入力の自動化に貢献する。
TONE、ブランド買いしたくなるハンマー
ラインナップ強化中
「TONEの手動工具」といえばおそらく真っ先にトルクレンチが浮かぶのではないか。もちろん間違いではないが、総合工具メーカーのTONEはハンマーにも本気だ。2年以上前から少しずつハンマーのラインナップを刷新、さらに新機種を次々と投入して様々な用途に面で応える体制を整える。ハンマーはどちらかと言えばブランドの「指名買い」が少ない工具だが、同社のロゴをグリップにしっかり配置することで、その風潮にも一石を投じている。
同社のハンマーは刷新前まで黒一色だったという。しかし刷新後は赤と黒を用いたTONEらしい見た目に変え、グリップも握りやすい仕様に一新した。繰り返し作業の多いハンマーは振るうちに疲労が蓄積しやすく、こうした微妙なフィット感が最終的な使いやすさを左右する。いくら振っても頭が抜けないタフさも同社製ハンマーの売りだ。
本気のリニューアルに取り組んだ結果、先端の材質は鉄/プラ/ゴム/軟鉄/真鍮と専業メーカーもしのぐバリエーションに広がった。サイズも幅広く、30種以上のラインナップでユーザーのニーズを面で捉える。さらに今年9月には新たにコンビネーションハンマーも市場投入した。
同製品はスチールとウレタンの2つのヘッドを備え、叩く対象の硬さによって柔軟に使い分けられる1本2役のハンマー。ヘッドのウレタンは交換も可能で長く使える。握りやすく滑りにくいグリップで手の負担も軽減。次はどんなハンマーが登場するのか、楽しみになる。
室本鉄工、ケーブルタイの端面をRに
軽い力で軟材カット製品も
メリー印の作業工具、ナイル印の空気工具を製造販売する室本鉄工の「アールカットニッパ(CRN9)」。ケーブルタイの端面処理にRが付き、怪我を防止できるほか、角が出来ない為、結束後に締めるリピートタイに便利だと好評を博している。先端で掴んで増し締めにも使用可能で、W支点仕様により軽い力で切断できるのも特徴だ。バンド幅は7~8㍉程度、同厚は1~2㍉程度に対応する。(金属バンドには使用不可)。また先端アタッチメントは替刃品番RN9と交換可能だ。刃とボディーの一体型の「アールカットニッパ(JG695)」もラインナップされており、同製品は歯の研磨が出来る。同社は「仕上がりにこだわりませんか」と提案しており、作業のディテールのブラッシュアップは、ユーザー側の差別化にもつながりそうだ。
小型軽量タイプカッター「メリーカッタ(SX5)(=写真)」は、ゴム・ウレタン・ナイロンなど各種ホース、樹脂板、竹材、ベルトなど皮革類、ナイロン・麻などのロープ、電線など様々な軟材の切断作業に適している。送り構造にローラーを使用しており小さな力でもキレイな切断面になるのも特徴だ。開き止めフックもついている。なお「切れ味が悪くなったら新しい替え刃と交換してください」(同社)とする。替え刃品番はX5となる。
リングスター、頑丈で割れないプラスチック製ツールボックス
「今までにない」作業箱で職人と工具を守る
「SUPER BOX」を手にする唐金𠮷弘代表取締役社長
圧倒的な強度をもつプラスチック工具箱開発のパイオニア、リングスター。樹脂製でありながら「ハンマーで叩いても壊れない」という「SUPER BOX」を生み出し、頑強で軽く、持ち運びしやすい作業箱としてプラスチック工具箱の価値と信頼を高めてきた。
「今までなかったものを作る。認めてもらうまで時間がかかるが、認められればそれがスタンダードになっていく。私の感覚だと、ネガティブな意見が来る方が売れますね」と笑う唐金𠮷弘社長。「売れそう、と言うのは納得されているということ。既に世にある形ということですから」と付け加えた。同社は33年前、業界で初めて自動車のバンパー材を使用し、「プラ製は割れる」という認識を払拭する「最強のプラスチック工具箱」SUPER BOXを生み出している。頑強な強度は、素材の材質と構造の二つによるもの。適度に粘り気があり、柔らかくてしなるバンパー材と、蓋の裏のリブ構造などによりスチール製に匹敵する頑丈さを支えている。バックル部はポリカーボネートを採用し、フラット形状で破損を防ぎ、弓なりに締まることで落ちても開きにくくするなど工夫を重ねた。
当時、自動車以外では流用されていなかったバンパー材の成形実績はなかった。「粘り気がある分、成形後は金型にくらいついて離れない。成分を変えたり機械を調整したりで完成品のめどが立つまで1年はかかりました」(唐金社長)と先駆者の苦労と共に誕生したSUPER BOX。これに加え、「DOCUTTE(ドカット)」、「SUPER BASKET」の3シリーズが同社の看板製品となっている。どちらも収納性とプラスチック工具箱でありながら突出した強度で人気を博す。
深さがあり、大きな電動工具も収納でき汎用性の高いドカットシリーズは、高衝撃性コーポリマーを使用。イスや踏み台としても使える強度をもつ。
SUPER BASKETは従来、職人がスーパーのかごに工具を入れて持ち運ぶ風景からヒントを得て開発。わざわざお金を払って買うはずがないという当初の予想を覆し、今では年に50万台をコンスタントに売り上げる主力製品だ。特長はタテ積みできる点。取っ手を内側に倒すとバスケットが重ねられ、取っ手の溝にハマってスタッキング可能。「メーカー側としては取っ手にも強度を持たせなければならないので苦労はあるが、これが職人さんに受けている」(同社)と言う。
カゴの携帯性の高さと、現場を車移動する際の積載効率アップという潜在ニーズとマッチした。
建設現場や鳶職人に広く支持されている同社のラインナップ。「頑丈で安全な工具箱を使うことは、命を守ることに近い」と同社は考えている。高所の作業中に落として割れ、中身が飛び散ってケガをしたり、孔が開いて運搬中に工具を落とすということもない。 現場では20年選手の製品を目にすることもあるという耐久性は高さもメリットだが「1個売ると次が売れない(笑)」と唐金社長は明るく笑う。
職人にとって仕事道具であり、職人の技能を支える作業工具。その工具を収納し、持ち運び、保管する工具箱こそ、陰ながらも強い信頼性やこだわりが発揮されるものではないだろうか。
作業現場の環境・効率をアップする製品
ホーザン、導電性マットをオーダーカット
電子部品の台や保管棚の静電気対策に
半導体や電子部品、電子機器を扱う際、作業台や棚板の上に敷いて静電気対策として使われる導電性マット。そのラインナップを多様に揃えるホーザンは、導電性カラーマットのオーダーカットに対応し、1枚から希望したサイズで納品できる。
同社の導電性カラーマットはすべてRCJS-5-1規格に準拠しており、床面、机上、棚板などに施工可能で、耐久性や色、ツヤ、材質、厚みなどから選べる。
耐摩耗性、耐紫外線で耐久性が高く反りが起こりにくいPVC製マット「F-725シリーズ」や、サイズ展開が豊富で照明の反射が少ないつや消し仕様のNBR製「F-705」などでオーダーカットに対応。
最短で当日出荷が可能で、タテ×ヨコの寸法指定をするだけ、また10㎜単位で指定できる。1枚から注文を受付け、納品後すぐに作業机や保管棚に合わせられ、施工の手間を省ける。
新潟精機、従来品1/3の軽量小型メジャー
読み違え防止の独自の目盛りも
新潟精機が大成建設と共同開発した「スパイラルメジャー」。軽さを突き詰め、コンベックスの収納ケースや巻き取るためのバネを排し、従来品の約3分の1まで大幅に軽量化した。建設現場では、メジャー両端につけたマグネットにより鉄筋に貼り付けて配筋写真の撮影ができる。「重いコンベックスを持ち高所に上がって現場写真を撮るのは、女性作業者にとって負担が大きい。軽くて真っ直ぐに貼り付けられるメジャーが欲しいというニーズに応えた」(販売促進部の加藤優里氏・以下同)。
同社独自の「快段目盛」を採用しており、パッと見て数値を読み取れる作業者に易しい目盛り設計も特長だ。10㎝単位で赤と白で数字を着色し、1㎜単位で目盛りが階段状に表現されているため、視認性が高く読み取り間違いを防止する。ラインナップは1.1mと2.1m、標尺1.6m、尺相当兼用1.1m、2.1m。カラーは7色展開。スライダーパーツにカラビナに通す穴を設けており、「軽くてコンパクトなので現場で2個ぶら下げて使ってます、と言う声も聞く」と言う。
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オーエッチ工業 開発部 主任 受川 尚道 氏
フジ矢 マーケティング本部 プロダクトデザイン部リーダー 兼 デザイナー 林 淳美 氏
(日本物流新聞2024年11月25日号掲載)