JIMTOFブース訪問

投稿日時
2024/11/25 14:07
更新日時
2024/11/25 14:23
牧野フライス製作所のV900で加工した、深い立壁をもつインパネ金型

モノづくり総合ニュースサイトMono Queを運営する日本物流新聞編集部は、JIMTOF2024会期中に各社ブースを多数取材した。そのうちの5社をピックアップして紹介する。


牧野フライス製作所、金型向け3軸機で立壁もなんのその


4軸制御機並みに剛性を高めた5軸マシニングセンタ(MC)をアピールする一方で、牧野フライス製作所が力を入れたのは主力需要分野である金型向けの3軸MC「V300」(最大積載質量300㌔)、「V900」(6000㌔)だった。ソフト面の改良で同分野で求めれる高い加工精度を容易に実現し、安定した長時間自動運転に導く。両マシンは熱変位補正などで耐環境性を高め、「いつでも、どこでも、誰でも従来機V33i以上の加工精度を安定的に実現する。職人オペレーターが減っているので」と言う。

V300は名機V33発売から数えると25年ぶりの刷新(V33シリーズの販売実績は約7千台)。収納工具本数を従来の3倍の60本に増やした一方で設置面積は20%減らし、従来機から置き換えやすくした。

V900は自動車用金型が大型化していることに対応し、「6㌧のワークが載る加工機はそうはない。削る前のワークは重いが、それを余裕をもって載せられる」。従来機V77、V99よりY軸ストロークを伸ばし1300㍉とした(最大ワーク奥行きは1500㍉)。機械のすぐそばに同機で加工した、深い立壁をもつインパネ金型を展示。長尺工具を使って毎分10㍍以上の送り速度でも安定切削できることを訴えた。

検証JIMTOF・ブース訪問・牧野フライス製作所P1.jpg

V33発売から数えて25年ぶりに刷新したV300。間口を2280㍉に抑えた。


岡本工作機械製作所、脆性材加工をEV向け研削加工に新提案


岡本工作機械JIMTOF2024.jpg

UGM64GCとワーク搬送ロボット

EVのコアパーツとなる精密部品の加工や半導体製造装置向け脆性材加工にフォーカスした展示を行った岡本工作機械製作所。

半導体製造装置向け部品加工の高能率加工を実現する「UGM64GC」は回転テーブルに40番主軸と20本ATCを標準搭載した4軸駆動のグラインディングセンタ。摺動面を機械上部に配置し、スラッジが入りにくい構造にしている。

端面、内外周の研削ほか、コンタリング加工も担える機能性に加え、機械中心部からテーブルをずらすことで、ワークへのアプローチを高速化するとともに、ワークサイズの大型化に対応する。会場ではワーク搬送ロボットによる自動化デモを実施した。

立軸の砥石軸に回転テーブルを搭載した立軸ロータリー研削盤「VRG10DX」は、チャックサイズ1000㍉、37㌔ワットの砥石軸モーターを搭載。加工エリアの拡大とパワーアップで生産性向上に寄与する。

3点支持構造のコラム構造でカタメ、アヤメ模様の研削面が選択できるなど、加工面の調整が可能。コントローラには同社ベストセラー平面研削盤PSGシリーズでお馴染みのFXコントローラを採用。金属加工だけではなく、セラミックや石英ガラスなど脆性材加工にも向く。

このほか「大型高精度部品の加工やEVのモータコア金型向けに好調」という門形平面研削盤「UPG―208CHLi2」や省エネの新オプションを実装した汎用平面研削盤「PSG5 2SA11」などが多くの注目を集めていた。


北村製作所、ポリゴン加工とNC旋盤を融合


検証JIMTOF・ブース訪問・北村製作所P1.jpg

協働ロボットや自社製ロータリーストッカーと連結したKNC-280GA

ベストセラーくし形刃物台旋盤KNCシリーズで知られる北村製作所。最大加工径120㍉( ※)の「KNC-280GA」をガントリーローダー(※)、協働ロボット用架台、ロータリーストッカー(※)と連結した自動化システムとして実演した。同社は周辺装置にも力を入れる。測定器を一体型にした協働ロボット用の架台やロータリーストッカーは自社設計・自社製造しているため、顧客の工場内のレイアウトに合わせてカスタマイズできるのも魅力の一つだ。

このマシンに初めて搭載したのはポリゴン加工ユニット。展示した18角形のブレスレット状の加工品を示し、「加工素材が1回転、切削ツール1本が18回転しながら加工した。六角ナット等の六面体を切削加工する需要が多くあり、ポリゴン加工ユニットならそれを高速加工できる」と言う。

さらには、内面研削旋盤KGIシリーズでの実績から新製品には潤滑油回収機能が加わった。潤滑油消費量が年間80%も削減できるという。環境にも配慮した機械構造だ。

※)最大クランプ径70㍉

検証JIMTOF・ブース訪問・北村製作所P2.jpg

ポリゴン加工した18角形の加工品


日研工作所、ナノバブル生むツーリングと黒の防錆


日研.jpg

ナノバブル発生装置を内蔵している。検証中だが効果は上々で、工具寿命の伸長に「相当、効くのではないか」と担当者は話した


日研工作所のブースに見学者が絶えない展示があった。ナノバブル発生装置を内蔵したミーリングチャック(参考出品)と、同社のクーラント装置を組み合わせた「ナノジェットシステム」だ。微細なナノバブルをクーラント吐出時に発生させるもの。検証段階だが、電着ダイヤモンド工具の加工で工具寿命が大幅に伸長する効果が確認されている。面粗度やクーラント寿命も向上し、発売されれば半導体業界から注目を集めそうだ。

「黒のソリューション」も披露。同社は今までホルダに黒錆処理を施すことで赤錆を防ぐ「黒のホルダ」を、ホルダをマガジンに挿しっぱなしにする自動化の進む現場へ提案してきた。今回はこれに黒錆処理を施した円テーブルやプルスタッドを加え、ホルダや周辺機器全体で自動化支援を打ち出した。

「黒のテーブル」は長期的にもガタが少なく連続運転に向く、ローラードライブ構造の円テーブル。錆びやすい面板を黒錆処理し、本体もエア圧で外部からの異物を遮断。特に錆が発生しやすい、水溶性クーラント液を用いる加工やドライカットで効果的という。

高剛性でギガキャストの大型金型もビビらず削れるHSK長尺ツーリング「GIGAツーリング」シリーズにも、黒錆による防錆処理が施されていた。HSKはISO規格だが、メッキ処理による防錆では寸法が変わるため本来防錆が難しい。しかし同社の防錆処理はメッキを使わず寸法を変化させないため「標準品でHSK規格の防錆製品を用意できた」と言う。


育良精機、自動棒材供給機と周辺装置をワンストップで


検証JIMTOF・ブース訪問・育良精機P1.jpg

自動棒材供給機「OS20REⅡ」。高圧クーラント装置などの周辺機器をセット提案し、デッドスペースをなくす。

自動棒材供給機を始めとした自動旋盤の周辺装置や、各種電動工具など取扱製品が多岐にわたる育良精機。今回は出展テーマとして「ワンストップトータルソリューション」を掲げ、旋盤に欠かせない自動棒材供給機「OS20REⅡ」などを紹介した。同社は電気式ミストコレクターやパーツブロークリーナーなど自動旋盤周辺で使われる装置をワンストップで提案している。

20型旋盤向けのOS20REⅡは直径2~20㍉、長さ4㍍までの棒材に対応する。利便性が高く、棒材を送るためのレールを材料径に合わせてユーザーが簡単に交換できる。「ねじ止めをなくし、工具を使わずに取り付け・取り外しができる」と実演して見せてくれた。棒材供給機の下や上は通常、デッドスペースとなるが、ここにちょうど収まる高圧クーラント装置(これもやはり自社製)やミストコレクターも用意した。付帯装置はそれにとどまらない。チップコンベヤやスラッジバキュームクリーナーと様々な周辺装置をコンパクトで無駄なく、色も統一して配置できる。

検証JIMTOF・ブース訪問・育良精機P2.jpg

工具を使わずにレールを簡単に交換できる。 



(日本物流新聞2024年11月25日号掲載)