本気で取り組む「脱炭素」のモノづくり
- 投稿日時
- 2024/12/09 10:04
- 更新日時
- 2024/12/09 10:37
毎年のように「観測史上」が飛び出すように、近年の気候変動は有史以来と言っても差し支えないほど深刻さを増している。こうした中、企業にはより一層の脱炭素化が求められている。特に世界全体のCO2排出量で約3割を占める製造業においては、積極的に取り組まなければならない課題と言えよう。
サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現に向けて取り組むグローバル企業が増加するなか、経済産業省の調査によると取引先からカーボンニュートラルに向けた協力を要請された企業は2020年から2022年の間に倍増したという。
また昨今のエネルギー価格高騰の影響により、中小企業においても、脱炭素に向けた取り組みを実施した企業は2021年の10.8%から2024年に17.3%に拡大。脱炭素化を検討した企業は9.2%から26.9%に増加している。
一方で、脱炭素への取り組みの実施・検討を進めるうえで「現状で手一杯」、「導入コストが高い」、「現有設備では対応が難しい」といった具体的な課題をあげる企業も増加傾向にある。
これらの企業の脱炭素化に向けた取り組みを後押しすべく、政府は2021年に「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」を整備。一定の条件のもと認定を受けた企業は、脱炭素化と付加価値向上を両立する設備を導入するにあたり、税額控除または特別償却の税制優遇を受けられる。
この税制の適用対象となる条件は、「炭素生産性」。これは設備投資などによる付加価値額の向上と排出削減効果を算出したもの。営業利益と人件費、それに排出削減のために導入した設備などの減価償却費を足しあげた「付加価値額」を「エネルギー起源二酸化炭素排出量」で割り出した数値となる。
税制優遇を受けたい企業は、この「炭素生産性」を3年以内に15%以上(中小企業者などの場合は10%以上)向上させる計画を作成、申請する必要がある。なお、対象となる設備は、「設備単位で炭素生産性が1%以上向上する」もので、「機械装置・器具備品・建物附属設備・構築物・車両及び運搬具」とされている。
この税制の適用期限は2029年3月まで。以前は企業区分が設けられていなかったが、サプライチェーン全体の脱炭素化に向けた動きが加速していることや、中小企業が抱えるコスト面の課題に対応するため、2024年より中小企業者・中小企業者以外と区分され、控除率も見直されている。
■来年度の省エネ補助金は?
脱炭素化に貢献する設備を導入する上で、負担を軽減する公的な補助金について、政府は11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~」を閣議決定。総合経済対策では、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現を目指し、(1)日本経済・地方経済の成長、(2)物価高の克服、(3)国民の安心・安全の確保の3つの柱を掲げた。
この中では、(1)日本経済・地方経済の成長の中で、GXを推進するための省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業(以下、省エネ補助金)の施策例や、省力化・デジタル化投資を促進するための中小企業生産性革命推進事業(ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金、事業承継・引継ぎ補助金)の充実が明記されている。
それゆえ、2025年も2024年と同等の省エネ補助金が見込まれ、工場・事業場型や設備単位型、ものづくり補助金の成長分野進出類型(DX・GX)、省エネ診断などが活用できるだろう。
オーエスジー、GREEN TAP
転造タップ加工で脱炭素に貢献
GREEN TAPの開発に携わったオーエスジー・溝口哲也氏
再生可能エネルギーの活用から自社グリーンボンドの発行まで、サステナブル経営を推進しているオーエスジー。自社生産工具における脱炭素、低炭素化にも積極的に取り組んでおり、11月のJIMTOF2024では生産時からカーボンオフセットを行っているGREEN TAPを出展した。
開発に携わった同社の溝口哲也氏は以下のように話す。「これまで当社のタップは研削加工で生産していましたが、GREEN TAPは全く別の製法で作っています。これによって従来の製造法に比べてCO2排出量を約35%カットしています。従来の転造タップは形状が角ばっており、力が加わった際に亀裂の原因になることが多かった。新たにブラッシュアップしたGREEN TAPは全体の形状に丸みを持たせて亀裂を抑制します。また耐摩耗性を強化し、面粗度も向上していますので、加工時の抵抗が低くなり折損しにくくなっています」
従来品より工具寿命も長く、脱炭素にも貢献するGREEN TAP。「従来品と価格はさほど変わりません。工具寿命も長く、ワーク不良も起こりにくく、加工時の廃棄物も低減できるなど、メリットだらけの工具です」と溝口氏は自信を見せる。
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(日本物流新聞2024年12月10日号掲載)