【行政主導限界】身を守る防災・防犯対策
- 投稿日時
- 2024/08/07 17:00
- 更新日時
- 2024/08/07 17:08
トイレ対策が肝?
1月1日16時10分。石川県能登地方の深さ16㌔を震源とするマグニチュード7・6の地震が発生し、石川県の輪島市及び志賀町で震度7を観測した。政府は発災直後から被災地からの要請を待たずに避難生活に必要不可欠な物資を支援する「プッシュ型支援」を開始。翌日には石川県の広域輸送拠点に第一便が到着した。しかし、半島的特性や各種インフラの寸断もあり、十分な支援が届けられない状況が散見された。
公助を広く平等に提供することが難しくなる今、もしもに備え自分の身を守る取り組みがより一層重要になっている。本特集では防災・防犯対策の最新トレンドを追った。
6月14日に閣議決定された「2024年版防災白書」では、能登半島地震への災害状況・対応が詳報されている。5月8日時点で石川県の避難所では約4千人が避難生活を続け、上下水道も輪島市と珠洲市の約3110戸で断水しているなど厳しい被災地の状況が伝えられた。
そうした中、白書では「公助」頼りの防災対策への限界について言及している。特に今後発生が心配される南海トラフ地震などの大規模災害では公助に限界があると指摘。阪神・淡路大震災など過去の災害でも生き埋めになった人の約8割が自助・共助で救出されており、公助による救出は約2割程度に過ぎないなど、これまでにも公助の役割が限定的であったことを指摘。次のように自助・共助の重要性を説いた。
「地球温暖化に伴う気象災害の激甚化・頻発化、高齢社会における支援を要する高齢者の増加等により、突発的に発生する激甚な災害に対して既存のハード対策やソフト対策のみで災害を防ぎきることはますます困難になっている。行政を主とした取組だけではなく、国民全体の共通理解の下、住民の『自助』・『共助』を主体とする防災政策に転換していくことが必要である」
自助を行う上でまず何より重要となるのが、公助のリソースが人命救出に多く割かれる72時間をいかに自らの力で生き延びるかだ。
初動避難に役立つのが累計販売台数180万個突破の山善(グリーンオーナメント)の「防災バッグ30」。「とりあえず逃げる」を想定した製品で、一次避難に特化した必須アイテム30点(アルミシートやサランラップ、携帯トイレなど)がセットになっている。開発した山善・家庭機器事業部商品企画4部の小浜成章部長は「防災意識を高めるにはまず防災用品を一般に普及させることが重要だと思った」と開発当時を振り返り、「家に1つ」ではなく「1人に1袋」手に取りやすくするため、価格設定やカスタマイズしやすい収納空間、女性や高齢者でも持ち運びやすい工夫などを詰め込んだ。能登半島地震発生直後は「防災意識が高まった影響もあり、個人に限らず大きな引き合いがあり、一時完売するほど」だった。定番モデル以外に防水仕様や車用など様々なタイプを用意しており、防災対策の第一歩として手に取りやすい。
■水・トイレの 確保が最重要課題
防災関連の取材をしていると防災備蓄の最重要項目として「トイレ」をよく聞く。今回の取材でも(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事の鍵屋一さんや輪島塗の伝統工芸士である坂口彰緖さんもその重要性を説く。頻発化する災害でトイレ対策ノウハウが製品へ落とし込まれつつある。
山善が8月に発売した「サッと簡単トイレ」は折り畳み式で、収納時は厚さ7・5㌢とコンパクト。「ダンボールトイレなどもあるが、汚れたり濡れたりすると簡単に使えなくなってしまう。本製品は何度も使えて、汚れても丸洗いでき衛生的」(小浜部長)
8月から販売している「サッと簡単トイレ」
本製品と組合せて使いたいのが、避難所備蓄にも向く「配れるトイレ」(山善)。避難者1人が1日に必要な簡易トイレ(消臭抗菌性凝固剤×5、排便収納袋×5、集約用大型袋×1)が個包装になっているため、避難所で配布にも向く。
避難時のトイレで特に問題となるのが排泄物のにおいだ。避難所では1カ所に排泄物のゴミをまとめることが多く、堆積した袋の重さなどによって袋が破れ悲惨な状況になるケースが多々ある。そうした問題を解消しそうなのが山善(バイオステラ)の排便用バイオ消臭剤「排便慶」だ。仮死状態で保存された微生物が付いたもみ殻を排泄物に振りかけることで、においの原因となる物質や細菌を分解する。振りかけて30分ほどで消臭率・除菌率99%と効果も高い。開発担当者は「能登半島の応援レスキュー隊に使用いただいたが、排泄物のにおいでストレスを感じなかったのは初めてとの声をいただいた」と話す。
備蓄に注意が必要にも関わらず見落としがちなのがトイレットペーパーだ。保管方法によっては湿気にやられてしまったり、水害などが発生した際に使えなくなってしまった事例が過去にある。シロキが販売する「10年保証備蓄用トイレットペーパー(70㍍タイプ)」はロールごとにアルミ蒸着で密閉しているため、備蓄場所に水気があっても保管できる。1ロールで1人1週間分をまかなうが、大きさは直径約7.3センチと一般的なトイレットペーパーよりも約30%小さい。同社の担当者は「一般的な製品と比べて非常にコンパクトだが、使用感に変わりはない」という。
シロキが販売する「10年保証備蓄用トイレットペーパー(70㍍タイプ)」
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東北大学 災害科学国際研究所 災害評価・低減研究部門 津波工学研究分野 教授 今村 文彦 氏
(2024年8月10日号掲載)