タイ、変貌する「アジアのデトロイト」
- 投稿日時
- 2022/02/24 11:05
- 更新日時
- 2022/02/24 11:17

EV生産で中国が存在感
タイは世界11位の自動車生産国であり、ASEAN域内における最大の自動車生産国でもる。その先鞭をつけてきたのが日系自動車メーカーであり、同国内でのシェアは8割を超える。しかし、世界全体がEVにシフトしていくなか、タイでも中国系メーカーやスタートアップ企業などが存在感を高めつつある。
タイ政府は、2020年3月「タイランドスマートモビリティ30・30」を発表。これは2025年までにEV生産台数25万台、2030年までに75万台の生産を目標とし、自動車生産台数の約30%をEVとする計画であり、自国をASEAN地域におけるEV生産のハブとしてEV車の輸出拡大を図っていくものだ。
同年11月、タイ投資委員会(BOI)は、EVやEV関連部品のタイでの生産を促す投資奨励策を発表。投資額50億バーツ(約175億円)以上のバッテリー駆動EV(BEV)生産に対しては8年間、プラグインハイブリッド車(PHEV)の生産に対しては5年間、法人税を免除するもの。
タイのEVの新規登録台数(左)とタイの車種別新規EV登録台数(2021年)
また、投資額50億バーツ未満の場合は、BEV、PHEVともに免税期間は3年間となるが、2022年までに生産を開始、 3年以内に10万台以上生産するなどの条件を満たせば免税期間は延長される。 EV関連部品については8年間の法人税免除に加え、タイ国内でのEVバッテリー生産を促進するため、バッテリー材料は原材料の輸入関税を2年間 90%免除するとしている。
こうした施策に積極的に反応しているのが中国系自動車メーカーだ。2013年にタイ大手財閥CPグループと合弁企業を設立した上海汽車は、傘下のMGブランドをタイで生産・販売しているが、近年ではPHEVの生産にも着手。中国から輸入した自社BEVとともに市場投入し、タイにおけるBEV販売でトップシェアを記録している。
2020年に設立した長城汽車タイ法人は、ラヨーン県のGM工場を買収。最新設備を導入し2021年から生産を開始している。現在はピックアップとSUV中心の生産だが、今後3年間に9車種を市場投入するとしており、その大半はBEV、PHEVといったモデルにする計画という。
こうした中国系自動車メーカーの進出に伴い、2019年以降、中国系自動車関連メーカーからの大型投資(20億バーツ=70億円以上)案件も相次いでおり、今後日系自動車関連メーカーにとって大きな脅威となる可能性も否定できない。
■他業種からプレイヤーも続々と
異業種からのEVへ参入する動きも活発化している。2006年に設立された現地企業エナジーアブソリュートは、元証券会社社長でCEOのSomphote氏は「タイのイーロン・マスク」と呼ばれる実業家。バイオディーゼル燃料や太陽光発電、風力発電といったクリーンエネルギー事業で急成長を遂げている。
2017年にはEV充電ステーション事業を立ち上げ、民間企業として最大となる1000カ所の整備に投資すると発表。さらに2018年には台湾のバッテリー関連企業を買収し、タイで世界最大級のバッテリー工場を建設すると発表している。また2019年にはバンコクモーターショーで自社開発EVのプロトタイプを発表し、すでにタクシー会社から3500台を受注している。
タイ国営石油企業のPTTと台湾のフォックスコン(鴻海グループ)は2021年5月にEVおよびEV部品生産における提携を発表。9月にはEV生産の合弁会社を設立、2023―2024年にかけて年産5万台規模の生産を開始し、将来的には15万台の生産を目指すとしている。フォックスコンはEVにプラットフォームやアプリケーションの開発、バッテリーなどの部品生産を請け負い、PTTは組み立てやサービスといった領域を担う。
このような流れは車両製造にとどまらず、充電設備やバッテリーなどの部品製造でも見られ、今後は周辺分野を含めた競争が激化していくものと思われる。
こうした動きに対して、これまで絶対的な優位を保ってきた日系メーカーも安穏とはしていられない状況となりつつある。
タイ市場に投入されるトヨタの新EV「bZ4X」
タイにおけるシェア3割超を獲得しているトヨタタイ法人。「カローラクロス」をはじめハイブリッド、プラグインハイブリッドが好調な売れ行きをキープしているが、今後は電動化にも注力する構えを見せている。年内にもにも新型EV「bZ4X」を市場投入するとともに、タイを複数の電動化車両の主要生産拠点とするため、さらなる現地化を検討していくと発表している。
また、三菱自動車のタイ法人は2020年より「アウトランダーPHEV」の現地生産を開始。同社の小糸栄偉知社長は「充電インフラの整備等、BEV普及には時間がかかる。そうした点で当社のPHEVがタイ国内や周辺諸国でも大きな強みを発揮できる」と語る。
現地生産で市場でも好調の三菱「アウトランダーPHEV」
同社では今後、移動電源やスマートハウスへのEV活用といったV2X(ビークルトゥX)の提案もタイで展開していくとしている。
※取材協力:日本アセアンセンター/タイ投資委員会(BOI)