いま実現する高効率エネルギーライフ
- 投稿日時
- 2023/09/29 14:03
- 更新日時
- 2024/08/19 13:20
多機能・省エネな暮らしへ導く建材・最新住設機器
感染症流行による「家時間」の増加は、住宅への意識の変化をもたらした。住環境の見直しで高まったリフォーム需要は今も動きがある。一方で、新築のZEH義務化や電気光熱費の高騰、度重なる災害により、脱炭素社会実現に向けた断熱・耐震・バリアフリーなど住宅性能向上を目的としたリフォームがいっそう活発化している。
高付加価値提案や省エネ性能住宅の機運が高まる中、エネルギーを高効率に、そして新たなライフスタイルを実現する住設機器や建材、取組みを紹介する。
矢野経済研究所が4月から6月にかけて実施した「住宅リフォーム市場に関する調査」では、2022年の住宅リフォーム市場規模は前年比5.8%増の7兆2877億円と推計した。
コロナ禍での在宅時間の増加により高まったリフォーム需要が継続しており、加えて資材費や人件費の上昇がリフォーム工事単価を押し上げた。
特に断熱・耐震・バリアフリーなど「住宅性能向上リフォームへの取組みが活発化」(矢野経済研究所)。災害対応やカーボンニュートラル実現に向け、よりその動きは高まりそうだ。
住宅リフォーム関連各社も、住宅性能向上を目的とした、断熱性・耐震性の事前診断実施といったリフォーム提案を強化する。今年3月に開始した先進的窓リノベ事業など、補助額が高額な国や地方自治体の補助金施策の実施によりさらなる需要深耕も予想される。
■注目ワードはエネルギー効率
住宅設備機器市場に関する調査(矢野経済研究所が5月~7月に実施)では、市場規模は前年度比7.7%増の1兆9430億円と推計。
東南アジアなどにおける設備機器の部品生産国のサプライチェーン正常化により部品不足が解消、減産分の生産を取り戻したことと、原材料費の高騰に伴う製品価格の転嫁が、伸長の主要因に挙げられる。高価格帯の住宅リフォーム需要も堅調に推移した。
30年度以降の新築のZEH義務化を背景に、電気の自家発電・自家消費が可能な太陽光発電システムや蓄電池システムの市場が伸長。ヒートポンプ給湯器や潜熱回収型給湯器などの高効率給湯器への代替も加速していく。
23年度の主要住宅設備機器の市場規模は1兆9312億円(前年度比0・6%減)を予測しているが、創エネ関連設備機器市場は家庭用蓄電システムの好調な需要が牽引し、同2・3%増の3716億円となると予想。「電気代高騰を契機とした自家消費目的が顕著に増えていることも市場成長の後押しになる」と見る。
家づくりとインテリアデザインのプラットフォーマー「Houzz」がホームオーナー向けに実施した調査では、住まい改善にあたり重要視したことに「エネルギー効率」と全体の25%が回答した。また、22%が窓・天窓、15%が断熱の改修を施工。「それぞれ20年の調査の13%、12%と比べて増加。エネルギー効率に注目した改修が増加している」(Houzz)という。
住宅関連の多機能化、多様なライフスタイルなど、あらゆる動きが生まれつつある中で、特に設備の省エネ性や高性能住宅への意識が高まっている。
HEMS
窓周りもHEMS対応で省エネとライフスタイル充実
家電・住設機器とつなぎ、エネルギーの収支を監視・制御することで住宅のエネルギーマネジメントを実現するHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)。家庭部門の省エネルギーを推進するためエアコンや照明機器、給湯器などを重点機器と定め、政府はHEMSでの活用と普及を推し進めている。
そういった背景もあり、主に電気を多く消費する機器と接続し省エネ目的の制御が中心だったが、最近ではドアの施錠や建材など接続できる製品の幅が広がりつつある。
立川ブラインド工業はニーズの高まりを受け「ホームタコス用HEMSアダプタ」を上市。窓周り電動製品「スマートインテリアシェード ホームタコス」をHEMS機器での操作に対応させた。複数の家電をまとめて一斉に操作でき、より時短に。外出先からもスマホで操作し、製品の状態を確認できる。タイマー機能やカレンダー機能により自動で開け閉めでき、暑い夏でも西日が差す前に閉められ、省エネ効果も期待できる。対応HEMS機器はパナソニック製「AiSEG2」やリクシル製「Life Assist2」。
高断熱木製サッシ
防火認定を取得した高断熱木製サッシ 木の風合いが魅力
住宅性能評価にかかわる断熱性。開口部の窓やサッシの素材の断熱性能には特別配慮したい。
断熱性に優れ遮音性も高い木製サッシは、木の風合いなど空間づくりにも一役買うが、国内シェアは全体の1%未満という。理由はアルミサッシに比べ価格が数倍高いということもあるが、防火性能にも課題があった。木製サッシの製造販売を手掛けるアイランドプロファイル(東京都品川区)は、準防火地域でも使用できる木製サッシを提供する。
プロファイルウィンドーFPシリーズの「ヘーベシーベ片引き込み窓」での防火設備認定を取得し、最大高さ約3㍍の大開口を実現した。
「外壁に沿って室外側に障子を引き込む開閉式の窓で、木製サッシが防火設備認定を取得するのは業界初」(同社)
アルミに比べ、「熱伝導率が約1600分1」の木製サッシは高い断熱性能が特長。製造時の二酸化炭素排出量も少なく、廃棄時も環境に負荷をかけないとして、脱炭素社会に向けて建築業界は木質化に取り組んでいる。
「防火設備認定窓FPシリーズは、縦すべり窓、框戸、連窓等の開閉方式でも順次、防火設備認定の評価試験を受け、ラインナップの拡充していく」(同社)
オフグリッドハウス
電力インフラから独立した次世代エコライフ
電力会社の送電網から独立し、再生可能エネルギーなどで使用電力を自給自足で賄うオフグリッド。災害への備えや、エコな暮らし実現として注目が集まっている。グローバルインフォメーションによる市場調査レポートでは「オフグリッドソーラー市場は、2021年から2026年にかけて年平均成長率が8%を超える」と予測。
ポータブル電源やクリーンエネルギー分野の開発を手掛けるEcoFlow Technology Japan(東京都江東区)は、オフグリッド生活を体験できる施設「EcoFlow House」を長野県伊那市で始めた。
「山の中腹部や電力インフラがない場所でも、ソーラーパネルや『EcoFlowパワーシステム』を使用して自家発電することで、一般のご家庭と同じような空間をご体験いただける」(同社)
初期設備費がハードルでもあるオフグリッドハウスだが、同施設ではポータブル電源やソーラーパネルや、新商品のポータブルエアコンなど同社の主要商品を使える。新たなライフスタイルを気軽に体感できる。
(2023年9月30日号掲載)