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脱炭素化は進むのか

アジア・アフリカでは火力発電メインの国が多い

エネルギーをめぐる政策や取り組み、爆発的な人口増にどう対応するか

18世紀の産業革命による工業化とともに、エネルギー消費は爆発的に増加している。産業革命以前は約6億人だった世界人口は、現在では70億人を超えるまでに膨れ上がった。それに伴う大量のエネルギー消費は、地球温暖化の弊害を引き起こした。各国が脱炭素化に向けたアクションを起こしているが、なかなか歯止めがかからないのが現状だ。


現在の気温は、産業革命前の水準から約1・2℃上昇しており、世界の排出量はまだピークに達していない。国際エネルギー機関(IEA)がまとめた公表政策シナリオ(STEPS)は、エネルギー関連のCO2排出量は2020年代半ばにピークに達すると見ている。

現状のCO2排出量は依然として高い水準のままであり、このままだと2100年の世界平均気温はプラス約2.4℃まで上がり、パリ協定の目標をはるかに上回ることになる。

また世界の人口は2050年までに約17億人増加すると予想されているが、そのほとんどがアジアとアフリカの都市部になる。特にインドは東南アジアやアフリカを抑えて世界最大のエネルギー消費国となっている。これら経済圏のエネルギー需要増を満たすための低排出方法を見つけることが、世界の化石燃料使用量の減少に直結する。だが、現状は安価な石炭火力による発電がメインとなっている国が多いのが現状だ。

IEAの年次報告書「2023年版世界エネルギー見通し」では、太陽光や風力、電気自動車、ヒートポンプなどのクリーンエネルギー技術の驚異的な台頭により、電力供給システムが再構築され、この10年間で世界のエネルギーシステムは大きく変容すると予測している。

その一方で、これらクリーンエネルギーの進歩は、各国政府の現在の政策設定によるものと評価しているが、地球温暖化を1・5℃に抑えるという目標を維持するためには、さらに強力な対策が必要であるとも指摘している。

原子力については、2011年の福島第一原子力発電所事故後の10年間は世界的に新規建設が見送られたものの、「エネルギー需給状況の変化により、原子力復活の機会が生まれつつある」と分析している。各国が中東情勢やウクライナ侵攻などの地政学リスクに端を発するエネルギーリスクにさらされた結果、主に欧州を中心に「原発=悪」から一転「原発=クリーンエネルギー」へとマインドが変化している。

その原子力発電設備容量について、STEPSでは、2022年の4億1700万kWから2050年には6億2000万kWに増加し、その伸びは主に中国とその他新興国、開発途上国が占めるとの見方を示している。

昨今のエネルギー危機への対応は、クリーンエネルギー移行を加速させつつ、エネルギー安全保障上の課題に取り組むことに重点が置かれている。最近の政策展開により、中国、EU、インド、日本、米国などの主要国で再生可能エネルギー導入が活発化している。

太陽光や風力が、エネルギー供給をより迅速に脱炭素化するための再生可能エネルギー普及の中心的技術であるが、原子力発電の利活用も主要国で進んでおり、日本、韓国、米国などの国々では既存原子炉の運転期間延長を目指し、カナダ、中国、英国、米国、EUでは新規建設の計画が進んでいる。

■再エネ利用も着実に伸長

2023年に行われた調査によると、2022年度の全世界での総エネルギー発電量は2万9165TWh(テラワット/時)であり、そのうち再生可能エネルギーの発電量は、約3割を占める8538TWhだった。 

うち太陽光発電によるものは1323TWhであり、全体の4.5%にあたる。これは石炭の1万317TWhや、天然ガスの6631TWhと比べると物足りないが、前年度に比べると約300TWh伸びており、着実に成長を遂げている。こちらの発電量は中国が首位、アメリカが2位、次いで日本となっている。

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太陽光発電において日本の発電量は世界3

欧州を中心に採用が進んでいる風力発電は2105TWhであり、全体の7.2%に留まる。地球温暖化の進展を食い止めるため、2050年までのCO2排出量実質ゼロを達成するには、2030年までに7400TWhに発電量を増やさねばならない。

水力発電によるものは4334TWh、14.9%となっている。発電量では多くの川と国土を持つ中国やブラジル、カナダが多い。バイオマス・地熱発電は777TWh、2.7%。バイオマスによる発電は、7割ほどが木質ペレットやサトウキビの搾りかすを燃焼することによって行われているため、広大な森林や農地を保有している中国やブラジルの発電量が多くなっている。一方、地熱発電は火山活動が活発な地域でのみ行えるため、国際的にはあまり導入されていない。

日本全体の年間電力需要量に対する自然エネルギーの割合は、2023年(暦年)の平均値で22.3%となり、2022年の年平均20.5%から増加した。内訳は太陽光発電が10.7% 。風力発電の1.2%と合わせて自然エネルギー割合は11.9%となった。

太陽光は2022年の9.6%から増加しており、水力発電の7.8%より割合が大きくなっている。バイオマス発電は前年の1.9%から2.3%に増えている。一方、2023年の原発の割合は9.0%となり、前年の5.9%から増加している。これらを合わせると約3割が化石燃料由来のエネルギーではない電力供給に結びついている。

政府目標では2030年までに再生可能エネルギー電源構成比率を現在の「22〜24%」から「36%〜38%」と目標を掲げているが、年率にして約2%増ならば不可能な数字ではないと言えそうだ。

(2024年9月25日号掲載)