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インタビュー

YAMAZEN VIET NAM General Director 平田 天平 氏

多国籍の設備を使う時代に

山善ベトナムは2003年に駐在員事務所を、10年に現地法人を設立。ホーチミン、ハノイに工作機械や切削工具を展示するショールームを構える。顧客密着と技術サポート力をウリに事業を拡大する平田天平現法長に実情を聞いた。

2022年12月に赴任した平田天平General Director。ホーチミン、ハノイ、ハイフォン、ダナンと飛び回りながら、欧米の新規顧客開拓にも努める。海外勤務の魅力を聞くと「ナショナルスタッフ(現地社員)の成長です。彼らと一緒にビジネスを成功させ、その喜びを一緒に分かち合う。面白いですよ」と笑う。

ベトナムはグローバル拠点になり得る

2022年度まで右肩上がりであったベトナム経済は23年度に落ち込み、多くの企業の売上高も減少した。金属加工のお客様をメインとし、半導体業界に牽引されてきた山善ベトナムも例外ではない。経済に陰りが見え始めたのは私が赴任する直前の228月くらいか。受注が落ち込み、受注残も大きく減った。

それから1年以上経ち売上は持ち直し、底を脱した感触はある。だが、半導体関係はまだ回復していない。一部では回復を見込んで今後の投資計画を検討している会社も出てきているが。

当社は工作機械と機工商品、それに伴う消耗品を扱っており、総合力をウリにしている。事業の拡大余地はある。今後ハイフォン、ダナン、ゲアン地区などでは工業団地が拡大していく可能性が高く、当社にとっては地理的な拡大も課題となる。

我々はサポート力が強みでエンジニアを多く抱えている。機械単体でなく適切な周辺機器を付けてカスタマイズして販売することが非常に多い。そうした山善プレゼンスを認めていただきながら販売活動を行うが、やはり苦戦はしている。

ベトナムは中国に代わる生産、輸出拠点「チャイナ・プラスワン」の有力国の1つとされる。ベトナムは確かに中国よりも人件費が安い。おそらく30%以上安い。だがここで製造した完成品は中国より3割くらい高くなりがちだ。素材の費用が高いから。ただ、政治・経済を考慮して多くの会社は脱中国を検討している。ここはもうMUSTのタスクだろう。多少費用が高くついても。今後、さまざまな工夫をしながら中国でのモノづくりにより近づいていくのではないか。

■日本製品は数ある選択肢の1つ

欧米企業もベトナムに進出することが増え、ベトナムに拠点を設ける意味が変わってきた。モノづくりをサポートする子会社的な目的ではなく、ベトナム拠点がどんどん世界の仕事を取っていくグローバル拠点になり得る。人も日本では集まらない一方で、ベトナムには優秀な若者がたくさんいる。

日本からは理解しにくいかもしれないが、ここでは多国籍のお客様がどんどん進出し、彼らにとって日本製品は数ある選択肢の1つに過ぎない。ASEANで一番競争が激しい地域かもしれない。私の感触では、5年前よりも日系以外の中国、台湾、韓国製の機械が台頭してきた。しかも彼らは長期的なファイナンスでユーザーの囲い込みを実施してきている。それを一部のユーザーは採用している。日本においても最近は中国製や韓国製を使うお客様が少しずつ増えているように。

ベトナム企業も日本の仕事を見ておらず、今後グローバルの仕事を積極的に取りにいこうとしていることを強く感じる。日系企業も同様であり、今や日本の子会社ではなく企業戦略上の拠点、つまり日本でできない事業を行うグローバル拠点の1つと考えているお客様が多い。

日本製の機械は当然、価格帯として高くなるが、ベトナムマーケットにおいても今後、低価格だけではなく高品質、高精度への移行も始まってくる。そのなかで山善ベトナムとしては現在の取り扱い商品の中で特に複合加工機や精密加工機を中心にまだまだ投入出来るユーザーが増えてくることも予想している。高品質、高付加価値の日本製設備をきっちり提案し、販売を拡大していくことが我々の使命とも考えている。    
(聞き手・編集部)

9面アジア版ベトナム・山善ベトナム平田天平現法長P2.jpg

ホーチミン本社近くに構える新ショールームにはオークマ、ブラザー工業、シチズンマシナリーなどの様々な機械を展示する。

(2024年8月10日号掲載)