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インタビュー

UBEマシナリー 取締役 執行役員 ダイカスト事業本部長・押出プレス事業部担当 山根 隆 氏

投稿日時
2025/03/20 09:00
更新日時
2025/03/20 09:00

型締力9000トンのギガキャスト機 

型締力6500㌧の超大型ダイカストマシンを上市し、国内メーカーとして最初にギガキャスト機に参入したUBEマシナリー。昨年には型締力9000㌧とより大型のギガキャスト機「UH9000」を開発。山根隆取締役は「自動車のアンダーボディを9000㌧でリア側とフロント側ともに一体成形できる見立てだ」と語る。海外にはより大きな型締力のギガキャスト機を開発するメーカーもあるが、成形品の品質を握る充填力とカスタマイズ対応力で対抗する構えだ。

――EVの足踏みで自動車の投資が止まっています。ダイカストマシンも影響があるのでは。

「確かに新規投資は微妙な状況ですが、この1年で日系自動車メーカーのギガキャストを含めた検討が具体化しました。生産計画から逆算した設備検討が進み我々も具体的な提案を行っています。今後は米国の通商政策の出方を待って延期されていた設備投資が、米国またはその周辺国で一気に進む可能性も。北米はギガキャスト機のメーカーがなく輸送費を含め欧州勢と対等に戦える市場です。まだどうなるかわかりませんが我々も腹をくくり短納期の勝負についていく準備を進めます」

――型締力6500㌧に続き9000㌧のダイカストマシンを開発されました。

「大型部品の成形には大きな型締力が必要。自動車のアンダーボディは6500㌧でも鋳造可能ですが、車種によってはより大きな9000㌧が必要だとの見立てで開発しました。型締力6300㌧の射出成形機の製作実績がありその知見も活きています」

――中国では型締力2万㌧級のギガキャスト機を開発する動きも。

「機械構造的に型締力2万㌧のギガキャスト機は十分考えられる。ただ型締力9000㌧でも金型の重量は100㌧に及びます。重要なのはコストメリットで、後加工や搬送を鑑みると6500~9000㌧級が合理的だと考えます。ゼロから工場を立ち上げる中国と既存工場を活用する日系メーカーの立場の違いもあります」

――仮に型締力で並ぶ場合、ギガキャスト機の競争軸は何に?

「1つはアルミの溶湯を金型内に射出するパワーとスピード、つまり充填力です。アルミが固まる抵抗に打ち勝つ力で一気に充填しなければ鋳巣や成形不良が起き、ギガのように成形品が大きいほどその点が重要になるはず。最終判断はお客様ですが我々は他社より充填力を高める提案ができます。充填時の精密な制御や繰り返し性も強みです。またダイカストは金型が各社各様の仕様で、良品を作るにはお客様の要望を汲み取り最適なダイカストマシンを都度設計する必要がある。大型機ほどこの傾向が顕著で対応力が問われます。対応力は我々が最も強い領域だと自負しています」

――型締力勝負、というわけでは必ずしもないと。

「型締力が注目されがちですが、より重要なのは成形品の品質を握る充填です。我々は昔から鋳造技術に重きを置いてきました。鋳造に特化した部隊がお客様の工場に入り、設備の納入だけでなく良品を作るサポートまで行います」

■CT半減の新技術

――ハイサイクル技術を発表されました。

「成形品次第ですが部品あたりの製造時間を従来の工法からほぼ半減できます。コンバーターケースを模した当社オリジナル形状製品では、型締力850㌧のダイカストマシンで43秒だったサイクルタイム(CT)が22・5秒に。離型剤の塗布や型の開閉など様々な要素でCT短縮を図っており、個々の技術はギガキャスト機にも応用できます。ダイカストはアルミを溶かす炉の電力消費が激しいですが、仮にCTが半減すれば炉の運転時間も半減できる。生産性と省エネに相当、寄与します」

――ギガキャスト機の引き合いは。

「様々なお客様から頂いています。今は機械を工場に運べるか、など具体的な話ができる段階に来ています」

――実際ギガキャスト機はどうやって輸送する。

「自社工場が港湾の至近にあり出荷側は問題になりません。あとはお客様の工場の立地次第で、分割しても1部品あたり100㌧クラスなので運べる道路があるかどうか。そこさえクリアすれば輸送できます」

――ギガキャストは普及するのでしょうか。

「日系自動車メーカーと海外メーカーで判断も異なるためかなり悩ましいですが、逆に言えば『まったく検討しない』という判断も無い。その上でコスト的に有利なら採用されるでしょう。そもそもダイカストは非常に生産性が高く、エレベーターのステップなど世の中の様々なアルミ部品がこの工法で作られます。実は我々に最初に持ち込まれた超大型ダイカストマシンの引き合いも自動車部品以外の大型構造物のフレームでした。コストさえ合うならEV以外へのギガキャストの転用の可能性も残されています」

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型締力9000㌧の超大型ダイカストマシン「UH9000」を昨年8月に上市。いわゆるギガキャスト機では国内最大だ


新工法で強度部品を早く成形


ダイカストは生産性が高い工法だが、アルミの溶湯を横から金型に充填する際に空気が巻き込まれ成形品に鋳巣が生じる。そのため強度が必要な自動車の足回り部品は従来、生産性が劣る低圧鋳造で製造するのが一般的だった。UBEマシナリーが開発した「HFC(Hybrid Fill Casting )」は金型にアルミを下から空気圧で充填し、空気を抜いた上で油圧で加圧する新工法。強度が高い部品を低圧鋳造より早く成形できる。

  

(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)