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インタビュー

TONE 開発部企画課 藤井 匠 氏

ナットランナーは潜在力の塊、トルクレンチを使うあらゆる場面の省力化に

ナットランナーを一言で表すと「トルク管理ができる電動レンチ」。つまりトルクレンチを使う作業を電動化できるツールで、こう聞くと多分野で活躍するイメージが湧くのではないか。TONEの開発部企画課・藤井匠氏も「間違いなく便利」と太鼓判を押すが、使用シーンの広さゆえ潜在市場が多く、逆にPRに苦労する面もあるそうだ。ナットランナーという工具自体の認知もまだまだ途上。だがその殻を破れば「市場を今の倍以上にできるポテンシャルがあるはず」(藤井氏)と爆発力がある。

TONEの開発部企画課・藤井匠氏。手に持っているのがナットランナーをイラスト付きで徹底解剖したナットランナー読本だ

——コードレスナットランナーの新機種を続々投入するなど、ナットランナーに注力されています。

「非常に便利で幅広いユーザー様に使っていただける機器工具ではありますが、認知に課題がある『難しい商品』でもあります。パッと見ただけではどのような作業シーンでどう使うのかピンときづらいようです。ナットランナーはザックリ言えばトルク管理ができる電動パワーツール。大型のボルト・ナットを大きなトルクレンチで一生懸命締めている、あるいはこれからトルク管理がしたいと考えるあらゆるユーザーが対象です」

——インパクトレンチとの違いは。

「打撃機構で締結するインパクトはトルク管理ができず打撃音もします。ナットランナーはモーターと遊星歯車の力でググっとボルト・ナットを締めるので、トルク管理が可能で音も静か。ただ締結時に逆方向の力(反力)が発生するため、隣接するボルトや突起に反力受けを当てる必要があります。当社は反力受けの特注にも対応。場所を選ばず使えます」

——認知がなかなか難しい要因は何だと思いますか。

「使えるシーンがあまりに多いからかもしれません。それこそトルクレンチはトルク管理が必要なあらゆる場所で使われますよね。その作業を省力化したいなら、ナットランナーの出番です。つまり相当のポテンシャルがあるのは確実で、認知さえ広がれば市場もグッと広がると思います。23人がかりで巨大なトルクレンチを回す現場も相当あります。その作業を否定するわけではありません。ただ、ナットランナーに置き換えれば非常に楽になります」

——ナットランナーの売れ筋は。

 「やはりコードレスは人気。またパワーレンチという商品もあり、これはモーターを持たない『手動のパワーツール』です。トルク管理が可能で、遊星歯車機構で力を増幅するため締結時に強い力が不要。30㌢くらいのラチェットハンドルで500Nm級の大きなトルクを出せます(同じトルクを出すには1㍍級のトルクレンチが必要)。電動ナットランナーと比べ低価格で、締結頻度が低い現場におすすめ。狭所で使うヘッドの短いナットランナーもあります。トルクの大きなナットランナーをここまで豊富に揃えるメーカーは限られます」

——シェアはどのくらいですか。

「詳しい数字は出していませんが、そもそも今は既存の市場規模で高いシェアを目指すより、市場規模そのものを拡大すべき時だと捉えています。大型の機械やプラントのメンテナンスが最も多い使用シーンだと思いますが、もちろんこれはごく一部。我々も把握していないナットランナーの潜在市場があると思いますし、日々探っています。潜在力からすれば既存市場の倍ではきかない規模の成長が見込めるはず。もちろん我々がいかに製品の良さを伝えられるか次第ですが」

——認知拡大に向けた手は。

「『ナットランナー読本』という冊子を作りました。ナットランナーとは何かをイラスト付きで徹底解説したものです。様々な種類のナットランナーの持ち味を、RPGのステータス表示のように一覧でグラフにもしています。動画やWEBにも力を入れますし、連絡いただければ営業担当が車にたくさん実機を積んでデモにも伺います。製品も今が最高到達点だとは考えていません。どんどんアップデートします」

——看板製品に育てたい?

「パワーツールでは高力ボルトの一次締めに使う『建方1番』と本締めに使う『シヤーレンチ』という世界トップシェアの製品を展開しています。そのため看板商品の壁はなかなかに高い(笑)。ただ、ナットランナーがその牙城を脅かす存在になれば嬉しいですね」

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(写真=ナットランナーの使用シーン。TONEは中~大型のボルト・ナットに向くトルクの大きな機種を豊富に揃える)

(2024年6月25日号掲載)