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インタビュー

THK 代表取締役社長 COO 寺町 崇史 氏

丈夫で高品質な製品と困りごとを解決するサービス

今年1月1日付でTHKの社長に就任した寺町崇史氏。実に27年ぶりの社長交代だ。同社はLMガイドやボールねじメーカーとしての印象が強いが、搬送ロボットやロボットハンド、IoTサービスと取り扱う商品は広がった。1万3千人を超えるグループ社員のトップとして自社をどう導くのか。

てらまち・たかし 1978年東京生まれ。2003年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。住友商事、THKインテックス社長を経て今年1月1日付で現職に。本社で創部したサッカー部の初代キャプテンで現在は総監督。

――社長ご就任から5カ月が経ちました。気持ちに変化もあるのでは。

「私は取締役専務執行役員という立場で以前から経営には参加していました。でもやはり社長になってみて初めて体験することがとても多く、見える景色も変わりました。そういう意味では新しいことに日々チャレンジしてるような感覚です」

――202312月期の売上高は前期比で1割ほど減少しました。いまの貴社の景況感は。

2412月期の売上高は前期比で37%増加の3650億円を見込んでいます。今期は在庫調整、発注調整が済み、実需レベルでのオーダーがしっかり入ってきます。中国の需要も回復し、それに続いて他の国の需要も回復すると見ています。自動車やAI関連の需要増に伴い半導体市場が回復しつつありますが、下期にかけて半導体製造装置の投資が強くなっていくと見ています」

――半導体市場回復の兆しはありますか。

「今期第1クォーターの引合い受注傾向を見ると、それは見られます。また、半導体に限らず、中国の需要については前期第3クォーターを底に上がってきており、月次ベースでも今のところ上昇傾向です」

――チャイナ・プラスワンに見られるように製造業のサプライチェーンが変わってきています。

「生産地や設計拠点を分散させるお客様をしっかりフォローする体制を強化しているところです。やはりグローカルが1つのキーワードで、営業を起点にしながら技術・生産も紐づけし、世界中に拠点をお持ちのお客様をタイムリーにフォローします」

「社内的にはもう『国内』という言葉を使うのをやめています。日本以外のお客様が広がるなか、国内=日本とはならず、アメリカのメンバーからすれば国内=アメリカです。世界において日本はあくまで拠点の1つという意識を、日本にいる社員がしっかり持ち海外と連携していく意識を醸成するためです。グローカルを進めていく上で非常に大事な意識改革です」

――営業本部を構造改革されたそうです。

「今年3月に日本の営業本部をLMシステム営業本部とFAソリューション営業本部に分けました。LMガイドを中心とした製品は機械をつくるメーカー様、当社ではマシンビルダーと呼びますが、工作機械メーカー様や半導体製造装置メーカー様向けが中心のビジネスです。一方でロボットやIoTサービスはマシンビルダーの先にいるマシンユーザー向けです。これらの提案をさらに深めようと社内の営業体制から見直しました。まずは日本で、来年以降に海外の体制も変えていきます」

■長持ちする使い方まで支援

――どうしてマシンユーザーに目を向けたのでしょう。

「当社はものづくりサービス業への転換をビジョンとして掲げています。製造業のお客様は設備を導入していいモノを安くつくることに全精力をかけて活動してきたと思います。でも今はエネルギーをどうやって削減するか、カーボンフットプリントをどうするか。労働力が不足するなかでどうやって生産を続けるか、どこを自動化するか。と課題がどんどん複合化しています。2020年からスタートした当社のIoTサービスやサービスロボットなどはこれらの課題解決に役立てることが分かってきました」

「スマホなどのコンシューマー製品は、従来製品が新しくなれば、古い製造ラインは捨てて新しいラインを引くというのが一般的だったと思います。今はサステナビリティの視点から、次世代の生産にも使い回せる装置やラインを導入したい要望がでてきています。もともと減価償却し終わった設備を長く有効活用することでコスト競争力に繋げていくことは製造業ではあたり前にやってきたことですが、より多品種にフレキシブルに対応できるようにしていきたいというのが加わったのではないでしょうか。それにより部品についても、1年持てばいいという考え方から5年、10年しっかり持たせてほしいとなってきています。また自動化を進めるうえで問題になるのは、部品が突然壊れてラインが止まることです。部品交換の頻度が多いとメンテナンス要員も多く抱える必要が出てきますが、残念ながらここに労働力不足の課題があります。そのためドカ停を防ぐための予兆検知は非常に重要になってきますし、長持ちする使い方を指南してくれるツールも重宝されていくと思います」

――いま最も売りたい製品は。

「半導体製造装置や測定装置などの分野に向けて昨年発表した2製品があります。1つ目はISO規格に準拠した寸法で8条列構造の超低ウェービングLMガイド(型番:SPH、今夏発売予定)です。当社のベストセラー製品の世界標準寸法SHS形と取付互換も可能です。通常の4条ガイドと違い、上下方向の振動を抑えて滑らかな動きをします。もう1つの高加減速・低摺動ミニチュアLMガイド(型番:AHR、同)は既存ミニチュアガイドと取付互換を可能としながらも4条列サーキュラーアーク溝を採用しました。最高速度は毎秒5㍍です。これらはより高精度化・高剛性・コンパクトを追求したもので、装置の高度化・生産性向上に貢献していきたいと思います」

THK寺町崇史社長P2(8条列構造 超低ウェービングLMガイド).jpg

8条列構造の超低ウェービングLMガイド

(2024年6月10日号掲載)