インタビュー
スギノマシン 代表取締役副社長 経営企画本部・管理本部・法務知財本部・RI事業部・国内関係会社 管掌 杉野 岳 氏
- 投稿日時
- 2025/03/27 13:36
- 更新日時
- 2025/03/27 14:22
人口減や熟練作業者不足をロボ・AIで解消
日本で産業用ロボットの生産が始まった1968年の翌年に、スギノマシンも多関節ロボットを開発した。当時は「鳴かず飛ばずだった」(杉野副社長)が、それ以来培ってきた技術をベースに2016年に再び独自ロボット「CRb」を開発。21年には同社の産業機械をCRbやAI技術で結ぶことを目的にRI事業部を立ち上げた。「69年のロボットに使用された空圧技術はドリルユニットに展開し大成功。後に当社のマシニングセンタへと発展する。あの時の技術が連綿と続いて今に至る」と振り返る、スギノマシン・代表取締役副社長の杉野岳氏に同事業について聞いた。

――2021年にRI事業部を設立されました。立ち上げの背景や事業概要について教えてください。
「15年ほど前から、人口減少という確定的な未来と機械が単体で売れることが少なくなってきたという事実情報から、今後の製造業は機械をただ並べればいい時代からそれらをいかに繋ぐかという時代に移行すると考えるようになりました。どう繋いでいくかを考えた際、搬送装置やロボットというメカだけでなく、ソフトウェア・AIによる制御が競争力になると思いRI事業部を立ち上げました。現在、主に工場内と屋外の領域に対してそれぞれロボットを展開すると共に、シミュレーションソフトやAI技術を使って、これまでロボットと相性が悪かった現場にも導入しやすいシステムづくりに取り組んでいます」
――具体的にどういったロボットを手掛けている。
「屋外向けは走破性の高いクローラー式の半自走ロボットを原子力発電所やインフラ設備の点検・補修作業などに向けて展開しています。それに対し、工場など屋内環境に向けては、垂直または水平の柱に取り付けて工程間や各装置間を繋ぐ産業用ロボット『CRb』やAGV/AMRなどを用意しています」
――CRbの特徴は。
「元々、当社製品である工作機械間の連携によるシナジーに主眼を置いていたため、設備内などの狭いスペースでも設置と動作が可能な製品設計に特徴があります。また、直動軸をベースにロボットを動かすため、広い可動範囲を精度よくなめらかに稼働させられること、当社のコア技術である高圧水関係のノウハウを活かした防水防塵性の高さが大きな特徴となっています」
■CRbの特徴を活かす現場に訴求
――進捗状況はいかがでしょうか。
「設立から4、5年後を目途に売上10億、単年度黒字化を目標に掲げています。売上は若干届いていませんが、利益率は良いところまで来ており、黒字化や累計損失の解消といった目標はオンスケジュールの範疇にあると認識しています」
――昨年は市場が落ち着いている状況でした。
「ロボット市場全体は力強さに欠ける印象でしたが、我々は既存のロボットでは対応できなかった分野を開拓しているので、市況の影響はあまり感じず順調に事業を拡大できています」
――対応できなかった分野とは。
「例えば溶接です。溶接現場というのはスパッタが飛び散りますので、防塵性の高いロボットが求められます。また、特に薄板の精密溶接分野は、多品種少量かつ人間による補正が求められる作業が多く、自動化が難しい。しかし当社のロボット用シミュレーションソフト『CROROROS(クロロロス)』は、3DCADデータ上でワークの溶接個所や条件を指定すれば、オフラインでの動作検証が簡単にできます。そしてその際、自動生成されたロボットプログラムをロボット側に転送すれば、最小限の操作で自動溶接が可能になります」
ロボットや架台、シミュレーションソフトなどを一体で提案する溶接ロボットシステム。リアルタイムに溶接個所の状態をセンシングし、補正する機能に強みがある
「また、昨年発表したアクティブトラッキング技術は、溶接中の歪みなどをリアルタイムで自動認識・追従するシステムです。ファイバー溶接など線幅が細く歪みの影響を受けやすい領域は、これまで人手中心でしたが、この技術により、今後はロボット導入が進むと見ています」
――機械間連携ではない。
「もともとは当社の商品である工作機械と一体化して売ることを重視していたのですが、その分野は既存のロボットメーカーさんもやられているし、ユーザーさん側としても既にそうしたロボットを使われていて、慣れたロボットで納めて欲しいという声が大半でした。それ故、現在はその方向にはあまり力を入れず、当社のロボットの特徴が活きる分野での活用を進めています」
――今後の目標は。
「当社には現在、2つ事業本部(精密機器事業本部、プラント機器事業本部)がありますが、早くRI事業部も規模を大きくし、事業本部にしたい。事業本部というからには、30年前後を目途に最低でも年間売上20億円、できれば30億円は確保したいと思っています。人口が減ったとしてもモノづくりの質や暮らしのレベルを下げてもいいという話にはならないでしょう。人口減の中、当社のロボットシステムのような技術は急激に需要が伸びる可能性もあり、目標達成は不可能ではないと思っています」
次世代の技術と考え方を取り入れる
杉野副社長は毎月3~4社のベンチャー企業と話をする機会を設けている。「当社は技術に立脚する会社として、コア技術を深化させながら『何になるかはよくわからないけれども開発し続けてきた』という素地がある。ベンチャーさんとの話は通じるところが多く、そしてそこで得たシーズ・ニーズと当社のそれらを組み合わせて、新しいソリューションに繋げていきたい。」先月も、量子コンピューティング、ウェアラブルセンサー、自動バス運行経路システム開発など、多種多様なベンチャー企業と話をしたという。
(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)