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インタビュー

RAMPF Group Japan Machine Systems Division Manager 安永 昌史 氏

投稿日時
2024/09/12 09:00
更新日時
2024/09/12 09:05

ミネラルキャスティング『元年』に

昨年12月に国内大手工作機械メーカーが内製化を発表して以降、国内でも注目を集めているミネラルキャスティング(ミネラルキャスト)。鉄不足にあった戦後ドイツで1970年代半ばに開発された樹脂と骨材を固めたポリマーコンクリートの一種だが、高い振動減衰性やCO2の削減効果などによって鋳物の代替材料として期待がかかっている。今年2月、70年代末にミネラルキャスティング製のマシンベッドを開発した独EPUCRET社を前身にもつRAMPFグループが、かねてより業務提携してきたヒノデホールディングス/日ノ出水道機器の栃木工場(栃木県大田原市)で、国内初となるミネラルキャスティングの量産体制を整えた。同社・Machine Systems Division Managerの安永昌史氏に話を聞いた。

――今年2月、国内で初めて産業機械向けのミネラルキャスティング量産体制を整えました。市場からの反応は。

「昨年に国内大手の工作機械メーカーからの発表があったこともあり、非常に多くの反響をいただきました。お客様側からの問い合わせが増えただけでなく、『製品に占めるCO2排出量を減らしたい』や『ミネラルキャスティングによって機械性能を向上したい』など、明確なビジョンを持ってお話しいただくケースが増えていると感じます」

――国内でも要求が高まっていきそうですね。

「工作機械業界に限って言えば、既に大方のメーカーからお声かけいただいています。115日からのJIMTOF2024でも確実に1社が、当社のミネラルキャスティングを搭載した新製品を提案します。他にもいくつかのブースで提案いただく予定と聞いており、今年はミネラルキャスティング『元年』となると期待しています」

――ミネラルキャスティングの特徴を教えてください。

「ミネラルキャスティングは骨材(花崗岩などの自然石)と樹脂を固めたポリマーコンクリートの一種。配合の仕方によって様々特徴を持たせることができます。しかし、何か一つ大きな特徴を挙げろと言われたら間違いなく振動減衰性の高さです。これは石材にも負けない部分で、鋳物と比べると約10倍、板金製品とは100倍ほど性能が違います。一方、工作機械分野で特に期待いただくCO2の削減効果は、鋳物と比較して約75%削減できるとの結果もあります(同社調べ)」

――使われ方は。

「よく心配される『割れやすさ』は実際にあるので、我々は『できる限り静止している部分に使用してください』と提案しています。工作機械でいえばワークテーブルやスピンドルボックスなどは避けて、ベッドやコラムでの使用をお願いしています。マシンの動作で壊れることはほぼないですが、何かの拍子でワークやツールがぶつかるケースもあるので。ベッドやコラムは機械重量に占める割合も大きく、重量当たりのCO2排出量を削減するためにも、ここから取り組む方が多いです」

――貴社の独自の特徴は。

「材料の配合や振動のかけ方などにも独自性はありますが、当社が他社と大きく異なる点は『転写技術』を持っていること。金型を精度良くミネラルキャスティングに転写する技術ですが、転写技術がないと脱型後に追加工を行う必要があり、コストや納期の点で量産性に大きな差が出ます。現在、転写技術を持つのは当社を含めて2社だけであり、当社が世界で競争力を持っている理由の一つでもあります」

■半導体製造装置が先行

――ミネラルキャスティングの市場での立ち位置を教えてください。

「工作機械の分野に関して言えば、鋳物よりもコストが2倍ほど高くなるので、性能を追求するハイエンド機に対して、鋳物からの置き換えを検討いただいています。一方、半導体製造装置分野では石材が圧倒的に強いため、石材ほどの安定性がいらない量産機向けに提案しています。量産性や形状の自由度が高いメリットもあり引き合いが大きい分野です。基本的には石材と鋳物の間で活用を広げていると考えていただいて問題ないと思います」

――工作機械と半導体向けどちらが先行しそうですか。

「半導体製造装置が先行している状況で、年内には栃木工場で量産したミネラルキャスティングを搭載した機械が稼働する予定です。ミネラルキャスティングの振動減衰性の高さは、特に後工程のプリンティングやボンディングなどで加工速度や歩留まりの向上に大きく寄与します。強みが明快に反映されやすくユーザー様からの要望も大きいため、置き換わりは速いと見ています。工作機械分野は開発期間を長く取っているお客様も多く、現在お声かけいただいている企業の中には、JIMTOF2026に向けて開発を進めているところもあります」

――今後の日本市場での展開は。

「我々はミネラルキャスティングが国内でも間違いなく広まると思っています。まずは現在の欧州レベルでの普及(市場の3割程度)を目指していきたい。これは現在、栃木工場に設備している約4×3.5mの振動台1台での生産体制では全く足りない。来年ぐらいには第一工場を手掛けたいですし、30年には第二工場を持っていたいと考えています。これは絵空事ではなく、ある程度の数字に基づいて話を進めているところです」

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ミネラルキャスティングでは金属配管などを事前に埋め込むことが可能。後加工などを削減できる

■鋳物サプライヤーの減少が喫緊の課題

ミネラルキャスティングへの置き換え検討理由は様々あるが、その中でも特に喫緊の課題となっているのが「サプライヤー減少による鋳物の供給体制への不安」だ。国内のサプライヤーは安い中国製品への置き換えによって減少していることに加え、ここにきて中国からの輸入もコスト面などでメリットが出にくくなっている。メーカーとしては「背に腹を変えられない問題」となっており、「供給体制の安定化に向けてミネラルキャスティングを積極的に検討いただいている」(安永氏)



2024910日号掲載)