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インタビュー

淀川電機製作所 代表取締役社長 二井 功太郎 氏

創業75年、設立1年目

淀川電機製作所が新たなスタートを切った。1948年の創業以来、徹底した自社一貫生産システムを構築して送風機や集塵機、電動工具の分野で存在感を発揮。長年にわたり個人事業として歩んできたが、創業75年目を迎える2023年1月に新たな事業法人「株式会社淀川電機製作所」へ事業を全面移管した。法人の代表取締役社長に就任した二井功太郎氏に、抱負と目指す方向を聞いた。

にい・こうたろう 常務執行役員 事業本部本部長を経て、創業75周年の節目である2023年1月に法人・株式会社淀川電機製作所の代表取締役社長に就任。趣味はゴルフとキャンプと釣りで、「コロナ禍を機に更にハマった」というDIYなど多趣味な一面も。好きな言葉は「前後を切断せよ、みだりに過去に執着するなかれ、いたずらに将来に望を属するなかれ、満身の力を込めて現在に働け」(夏目漱石の小説「倫敦消息」より)。「過去に捉われすぎず、将来に夢を見すぎず、今できることや必要なことを精一杯やりたい。それが将来の財産になると考え、常に問題意識を忘れず、将来後悔しない仕事がしたい」

「歴史ある新しい淀川電機」が始動

――個人事業を法人に移管し、新法人の社長に就任されました。就任にあたっての抱負は。

「まずは社員第一で、彼らが幸せを感じられる会社にしたい。社員も私自身も楽しく仕事をすることで、お客様や仕入先様に『一緒に仕事がしたい』と思っていただける会社を目指します。今のお客様や仕入先様、そして社員は、まさに我々が創業から75年間築いてきた財産そのものです。昨今、時代の変化のスピードは非常に早くなっていますが、これまで積み上げてきたことから軸足は移さず、かといって歴史に胡坐をかくことなく良いものを生み出す。古き良きものを残して新しいものを取り入れる不易流行の精神を忘れずにやっていきます」

――強化したい点は。

「我々はモータをはじめコア技術を一貫して自社生産しており、短納期・低価格・小ロットでお客様のニーズに細かく応えられるシステムを構築しています。この強みにさらに磨きをかけるのがビジネス上の方針です。ありとあらゆるモノを自社一貫生産している状態ですが、将来を見据え、現在のモノづくりを変更した方が良いと感じる部分も多々あります。創業以来のポリシーであるお客様目線第一で従来の柔軟な特注対応を維持しつつ、可能な部分から、設計や部品の共通化、変更も複合的に進めていきます。また、新設はもちろん、既設加工機にロボット導入など、自動化・省力化への投資も様々な工程で検討しています」

――貴社の自社生産体制は昨今の部材不足にも有利にはたらきそうですね。

「まさにそのとおりで、大元の材料さえ入手できれば生産に大きな影響はないので、これまでのところ部材不足による納期面への影響はほぼ無風状態です。そもそもは細かなユーザーニーズに応えるために構築したシステムですが、おかげでコロナ禍のような突発的な事象が起きても方針を変えずに済みました。同時に、内製率が高い分、試作開発など何か新しいことにも素早く対応できます。これはコロナ禍で改めて実感した我々の大きな強みですね。自社の良さをしっかり理解し、良いものは徹底的に守り、変えるべきものは徹底的に変えていこうと考えています」

――提案を強化したい業界や分野はありますか。

「ありきたりかもしれませんが三品業界に向けた提案を強化したいです。製品仕様を一部変更しなければならず、正直なところまだまだ攻め切れていません。HACCP対応の製品など、クリーン環境に向けた展開を加速します。我々は様々な要素部品を内製化しており、試作も簡単かつスピーディに行えます。既にある製品の能力の底上げや時代に合わせた仕様変更も新たなユーザー層獲得に繋がるかもしれませんし、実は新製品のアイデアも頭の中には山ほどあるんです。今後はそれをひとつひとつ形にしていきたいと考えています」

――異業種にも製品を展開されると。

「生み出してきた技術や製品群を使い、異業種や形の違うものにアプローチするということです。もちろん独力では不可能ですから、社員と協力して納得感を醸成しながらトライ&エラーで進めていきます。日々の受注や見積の中にも、我々のまだ知らないような、新たな使用方法や新たなユーザー層のヒントがあります。そういった日々の営業活動の足元をしっかり見据え、製品開発を行っていきたいと考えています。どのように展開するにしろ、あくまで我々が培ってきたことから軸足を外すつもりはありません。我々の主力製品は売上面としても技術の根幹としても紛れもなく『送風機』です。そうした意味で、新たな展開とともに、完成品メーカーに搭載いただく『スペックイン』の送風機も今まで以上に注力し増やしていく方針です」

――個人事業から法人化することによる変化は。

「個人事業の法人化は事業と個人を完全に切り離すということですから、現会長の決断に感謝するとともにこれを叱咤激励と感じて身の引き締まる思いでいます。我々は創業75年ですが、設立1年目で法人としてはいわばルーキー。これをチャンスと捉えて改めてフレッシュな気持ちで新しいことに挑みたいですし、反面、創業者と現会長が培ってきた創業精神をしっかりと受け継がなければならないとも考えています。私一人では何もできません。社員と一緒になって、『歴史ある新しい淀川電機』をつくっていきます」

(2023年1月25日号掲載)