インタビュー
安田工業 技術本部開発部 新規事業開発課主任 山室 敏彰 氏/木下 祐輔 氏/中尾 裕生 氏
- 投稿日時
- 2022/12/21 15:34
- 更新日時
- 2024/08/19 13:19
ハード&ソフト両面で高精度の歯車研削加工を支援
「マザーマシンのマザーマシン」と呼ばれる、ハイエンドの工作機械を世に送り続ける安田工業。そんな同社が手がける歯車成形研削盤も「高精度・高耐久」のDNAが受け継がれている。その開発を手がけてきた技術本部開発部・新規事業開発課の山室敏彰主任、木下祐輔主任、中尾裕生主任に同社加工機のこだわりや強みについて伺った。
――近年の貴社歯車加工機における受注状況は。
山室「当社の歯車成形研削盤は上市して約20年になりますが、量産加工向けではなく、精度要求の厳しい加工向けとしてマシニングセンタと同様、随所にキサゲを施し機械を組み立てているため、年間で数台程度でしか機械を出荷しておりません。ただ最近は、高性能の歯車を求めるお客様からのテストカット依頼など、引き合いは増加傾向にあります」
――どのような業種からの引き合いが多いのでしょうか。
中尾「やはり自動車関係が多いですね。EV向けの歯車はこれまで以上に高精度の歯面が求められます。歯面の精度は動力の伝達効率に直結しますし、走行時の静穏性の向上にも繋がります。特に近年はモーターが小型化し、高回転で回す傾向にありますので、歯車の精度が良くないとギヤノイズが大きくなってしまいます。他にはプラ金型の電極歯車の作成にもお使い頂いています」
――どのくらいの精度が要求されるのでしょうか。
木下「厳しいものでは数μmの公差になります。その点、当社はもともとマシニングセンタをはじめ精度へのこだわりには自信を持っています。歯車成形研削盤も、MCやジグボーラーなど当社の高精度加工機と同様の作りこみを踏襲しています」
――歯車成形研削盤「GT30」の強みについてお聞かせください。
中尾「まずは高剛性、高精度が挙げられます。砥石軸にはビルトインタイプのスピンドルモータを採用し、スピンドル剛性を向上させています。 また研削液の温度コントロールと研削軸の冷却を行なうなど充分な熱変位対策も行っています」
木下「独自の砥石フランジ形状により、主軸とワークの干渉を最小限にしています。最小Φ50㍉砥石との組み合わせにより、干渉が気になる段付歯車の加工も難なくこなせます」
山室「もともとは中小の歯車加工メーカーさんをターゲットに開発されており、直感的な操作で動かせるユーザーフレンドリーな加工機になっています。専用のソフトウェアも使いやすさにこだわっており、歯車の諸元や使用する砥石の設定、加工工程を入力するだけで、ソフトウェアが自動でNCプログラムを生成してくれます」
歯車成形研削盤「GT30」
――プログラムの知識が無くとも操作できるのですね。
中尾「はい。狙いの歯形・歯すじをパソコン上でシミュレーションできます。また歯すじのクラウニングから歯形・歯すじの3次元的なバイアス修整まで、簡単な入力設定で対応できます」
――さまざまな強みを持つ貴社歯車加工機ですが、競合するメーカーは。
山室「このジャンルでは、ドイツををはじめとする欧州のメーカーが強みを見せています。日本国内でもかなりのシェアを持っていると実感しています。しかし、精度や生産性といった部分で当社の加工機は欧州メーカーに勝るとも劣らない性能を持っています。加えて、加工相談やメンテナンスなど総合的な部分を含めれば当社の加工機をお使いいただくメリットを感じて頂けると思います」
――昨今は更新需要も少なくないのではないでしょうか。
中尾「お問い合わせは数多く頂いております。多くのユーザー様は海外メーカーの加工機をお使いになられていますが、やはり保守の点で相当ご苦労なさっているようです。メーカーに問い合わせても『10年経ったら保守は終了』と言われたとも聞きます。電装部品の劣化で交換をお願いしたら断られた、というケースもあるようです」
木下「日本国内にサービス拠点が無く、中国にサービス拠点を展開しているメーカーさんの加工機ですと、修理に数ヶ月かかったという話も聞きます。その点、当社は国内各地に営業所を展開していますし、お客様に寄り添ったアフターサービスが可能です」
「GT30」による歯車加工
安田工業株式会社
1939年設立、社員410人
岡山県浅口郡里庄町浜中 1160
工作機械製造及び販売(マシニングセンタ、ジグボーラ、CNC歯車研削盤)、産業機械製造
1929年に安田信次郎が大阪市において「ストロング商会」を設立。国産初の自動車エンジンシリンダのボーリング加工及び各種ピストンを製造。1944年、戦時強制疎開で岡山県に工場移転、社名を安田工業株式会社と改称。1960年代には横精密中ぐりフライス盤、マシニングセンタを相次ぎ開発。歯車成形研削盤の上市は2000年代初頭と比較的新しいが、「YASDA」の機械作りノウハウがふんだんに盛り込まれているとともに、幾度となくブラッシュアップを重ねている。
(2022年12月25日号掲載)