インタビュー
シチズンマシナリー 代表取締役社長 中島 圭一 氏
- 投稿日時
- 2022/10/14 09:00
- 更新日時
- 2022/10/14 09:00
機械・IoT・技術でトータル提案
LFV(低周波振動切削)技術やATCを小型自動旋盤に初めて搭載したほか、IoTやロボットを活用してトータルソリューションを提供するシチズンマシナリー。ドイツやタイへの出張を再開し、今月には米国を訪れるという中島圭一社長に注力する事業を聞いた。
--今年度の貴社の受注環境は良好でしょうか。
「2020年は苦しくて半年ほど一時休業するなどしましたが、その年の夏を底に急激に立ち上がり、21年度は過去最高の売上高となりました。6月に実施した値上げの前の駆け込み需要もありましたが、過熱ぎみだった受注は一服しているものの、依然高い水準が続いています。9月12日から米国でIMTSが4年ぶりに開催されますから当然、それに向けた買い控えがあります。とはいえ地域別に状況を見ており、12月くらいまでは受注が大幅に減少するということはないと思います」
--タイ工場(アユタヤ県)の自動旋盤の累計出荷台数が5月に2万台を突破され好調です。
「7月に3年ぶりにタイ工場を訪ね、新ショールームと工場増床の進捗を見てきました。工場は予定どおり12月末に竣工する予定。タイは入国時に隔離が1、2日あったんですが今は入国制限がありません。タイ工場のコロナ感染者は私が訪問した時には1人だけで、日本より収まっているようです」
--EV・DX化への対応が求められます。貴社は何を重視されますか。
「EVについては悲観する必要はなく、たとえばエンジンにしても突然ゼロになるわけでなくしばらくはハイブリッドで広がるでしょう。一方でEV用プラグ類などの新しい部品、EVになってもなくならない部品、充電ステーション向けの投資があります。米国には砂漠が広がり町から町へ移動するのに数時間車を走らせる必要がある州もあり、EVでは不安になります。逆にシカゴやニューヨークなどの都心ではEVが見られ充電ステーションもあります。国や地域によって車の使われ方が違ってきます。EVになれば通信インフラが変わり、半導体はたくさん必要になります。それに伴い半導体製造装置の空圧機器やプローブピンが必要になり当社の仕事も増えます」
「DXは当社のモノづくりとお客様向けとの両方の取組みがあります。社内では様々なノウハウをデジタル技術を活用して見える化し、高度化しています。タイ工場では機械ごとに測定したデータの表示を紙からタブレットに移行しました。お客様向けのDXでも、紙で渡していた加工時間の見積りを今後は3Dの動きを確認できるかたちにしてデータで提出していこうとしています。DXというとハードルが高いイメージですが、敷居の低いものもあることを毎月発行する社内報などで社員に啓蒙しています。1つひとつの取り組みが束になれば技能継承にもつながります」
■ロボット提案をフレキシブルに
--貴社がいま最もアピールしたい製品は。
「ひと言でいうと『トータルソリューション』です。切削方法は多岐にわたりLFV、残材削減のための摩擦接合、自動旋盤の背面側に付けるATCがあれば、ネットワークを使ってサポートするアルカプリソリューションもあります。機械単体でなく様々なオプションを用意して総合的にお客様に提供していきたい。6~7月に愛知県で開かれたROBOT TECHNOLOGY JAPANでは他メーカーの旋盤にも対応可能なロボットシステムを出品し、加工したワークを測定・洗浄して次の工程へ移動させる様子をご覧いただきました。ロボットの載った台車を機械の前に置く、あるいは旋盤の上にロボットを付けて材料供給・搬送をする。そんなロボットをフレキシブルにお客様に提供する『FAフレンドリー』を様々な展示会で紹介しているところです」
--4年ぶりのリアルJIMTOFに出展者として何を訴えますか。
「機械とIoTと機械を使いこなす技術の三位一体のトータルソリューションでシチズンの機械をアピールします。ただ、いま受注残がたくさんあってフル生産しているので、通常なら展示会で注文いただき3月までに納品となるのですが、納期が長くなりそれが難しい。なので今回はすぐに受注いただくというよりは来年以降の受注に結びつくように訴える場になりそうです。ただ最近の工作機械関連展の盛況ぶりを見ていると、国内のお客様だけでも多くの来場が見込め、楽しみです」
後工程を自動化するFAフレンドリーのオンカートタイプ
(2022年9月10日号掲載)