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インタビュー

イワシタ 代表取締役社長 岩下 大介 氏

最新加工技術を携えたオーダーメイド専業メーカー

長尺材加工機から専用機まで、ユーザーニーズに合わせたオーダーメイド機を中心に製造しているイワシタ。受注生産メーカーならではの苦労と強みについて、岩下大介社長が語ってくれた。

――昨今、貴社の景況感についてお聞かせください。

「昨年から引き続き、受注環境は概ね良好ですが、ここにきて少し風向きが変わってきている印象です。4月あたりから納期が延びてしまっている関係で、決まらない案件が増えています。最近、中小の事業者様が『新たに工場を建てるからそちらに機械を入れたい』という話が結構あったのですが、計画自体が立ち消えになってしまうケースが数多く見受けられます。資材の高騰や生産設備の納期の問題などで、様子見に転じているようです」

――納入先の設備計画の進捗に影響を受けているのですね。

「大手メーカー様にも10月までに納入しなければならない案件があったのですが、工場建設の遅れから数ヶ月遅れる、といったケースもあります。こうした影響さえなければ、もっと受注が取れるのではないかと感じる部分もあります」

――貴社も調達面など納期には苦労されているのではないでしょうか。

「いまのところは納期に遅れることなくなんとか回せています。当社はカスタマイズ品やオーダーメイド品が大半なのですが、早いものでも6~7カ月、モノによっては1年ちょっと超えてしまう場合もあります。基本、受注生産ですが発注を受けてからではとても納期に間に合いませんので、ある程度売れ筋の機種は在庫も持つなどして対応しています」

――モノの流れが読み難い情勢です。

「半導体も以前から『あと半年で正常に供給されるだろう』という言葉を何度も聞いていますが、一向に解消されていないのが現状です。納期に関しても、調達品の納期に左右されるところが大きく、発注もなく事前に納期を詰めることが難しくなっています。ですので、お客様とは納期リスクについて何度も打ち合わせを重ねてご理解をいただくように努めています。

――調達価格も上昇の一途を辿っていますが、受注生産だと難しい側面もあると思います。

「受注頂いてから完成するまでの期間が長いですから、その間に調達価格が変動してしまうことも少なくありません。かなりシビアに計算しているつもりですが、いざ完成してみるとコスト的にきつかった、というケースもままあります。ですので昨今では、設計部門を中心に調達価格を予測する取り組みも行っております」

■脆性材加工へのアプローチ

――EVシフトが進んでいますが、貴社に対するニーズを教えてください。

「これまで当社にとって、自動車産業はあまり縁の無い業界でした。しかしEV化が叫ばれるようになってから、当社の持つ摩擦攪拌接合(FSW)機に注目頂いております。車体の軽量化やバッテリーケースの接合など、薄物のアルミを接合する上でFSWの活用が進んでいます。当社も協業先メーカーと一緒に開発に取り組んでおり、自動車のみならず、今後幅広い展開が期待できそうです」

――JIMTOFでは新たな技術の提案を行うそうですね

「今回は非金属の切削加工を提案します。ガラスやセラミックといったいわゆる脆性材に対応する超音波加工機です。今回、いろいろなメーカーが超音波による加工を提案すると思うのですが、当社で開発中の機械は他社とは一線を画す作りになっています。詳しくはまだ話せないのですが、刃物にも工夫を凝らして加工精度と加工速度の両立を目指しています。

「脆性材の加工においていちばん大事なのは『欠けない』ことです。この点において、他社より優れたものを提案できるのではないかと考えております」

――マルチマテリアル化において、非金属の加工は注目を集めそうですね。

「非金属の切削はまだ研究が進んでいない部分も多々あります。一般的にガラスを加工する際には硬いダイヤモンドが用いられていますが、それ以外の素材でも加工できるのではと思っています。その最適解を導き出すためにも加工試験を繰り返しています。JIMTOFには1㍍ほどの機械を出展しますが、当社はオーダーメイドが売りの会社ですので、お客様のワークサイズに合わせたカスタマイズ品にも対応できます」

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同社の代表的な製品でもある長尺NC加工機

2022910日号掲載)