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インタビュー

武田機械 代表取締役社長 山口 博徳 氏

「当たり前」を追求し続ける両頭フライス盤ニッチトップ

両頭フライス盤における国内シェア6割超を誇るニッチトップ、武田機械。従来は主に金型向けとして活用されてきた同社機械だが、昨今では部品加工をはじめ様々な現場で活用されている。多様化するユーザーニーズについて、同社トップの山口博徳社長に伺った。

――昨今の受注環境はいかがでしょうか。

「日工会の数字ほど恩恵を受けているわけではありません。理由のひとつとして外需が伸び悩んだ点が挙げられます。コロナ禍による往来の制限もあって、引き合いを頂いても据付検収がなかなか出来ず、受注を逃してしまう、こちらからお断りせざるを得ないケースも数多くありました。現在はある程度現地で行えるようになってきていますが、10日の隔離期間が必要な中国などは、行き辛さから受注に結びつかない、という側面もあります。また欧米に関しても他のメーカーほどは回復していない印象です。もっとも、従来から日工会統計に対して当社の業績が比例するケースは少ないです」

――国内需要はいかがでしょうか。

「様々な補助金が出ていますが、当社の機械は以前から補助金ありきではなく、必要に応じてお求めになるユーザーが大半です。コロナ禍前に多くのメインユーザーがだいぶ設備投資をされた面もあり、コロナ禍も含めて一服感があったのですが、ここにきて更新需要を中心にお話が増えてきています」

――主力の両頭フライス盤はやはり、金型需要に連動するのでしょうか。

「当社機械のユーザーは鋼材商やプレートメーカーが中心なのですが、彼らは金型向け専門で鋼材を卸しているわけではなく、ここ最近は装置もの向けなどのプレートを扱うことが増えています。鋼材商の在庫を見ても金型に使われるような特殊鋼の比率が下がっており、構造用鋼やSCSS材といったものが増加しており、顕著に日本の金型業界が縮小していることが如実に分かります。しかし半導体製造装置向けや自動車産業向け、電子部品向けのニーズも増加しており、こうしたところに様々な形状の鋼材を納入するほうが多くなっています」

「また、当社では『異業種』と呼んでいますが、こちらの販路開拓にも取り組んでいます。昨今では半導体関連から自動車業界、バルブやマニホールドの製造などにも当社加工機の導入が進んでいます。金属だけではなく、医療向けに樹脂の加工などにも活用頂いています」

■欧米市場を見据えた新機種開発

――貴社に寄せられる自動化ニーズについてお教えください。

「鋼材商で扱われるワークは少量多品種ですので、ロボット導入が難しい部分が多く自動化はなかなか進めにくい。一方で、前述した異業種で扱われているワークはサイズが決まっているケースが多く、自動化もやりやすい。こうしたニーズに対してロボットSIerさんと連携した提案も行っています。まだ開発中ですが、いずれ当社加工機とロボットをパッケージ販売できればと考えております」

――昨今、工作機械業界にも脱炭素化に向けた取り組みが重視されています。

「正直に申し上げると、現状でやれることは特段無きに等しいと考えております。当社の機械作りは、ユーザーの要望に応じてカスタマイズするのが当たり前になっています。標準品でも、常々新しい要望を取り入れてアップデートしています。同一型番のモデルでも半年前と現在の機械ではぜんぜん違うケースも珍しくありません。特に売れ筋の商品はメカもソフトも逐次改良を重ねて、よりよい機械に仕上げています」

「こうしたアップデートの積み重ねにおいて、消費電力の低減や歩留まりの向上といった脱炭素化に繋がる『やって当たり前』の取り組みは企業として弛まず続けています。工場の断熱性能の向上やエネルギーコストの削減なども、環境問題が叫ばれるずっと前から取り組んでいます。ですので、それをセールスポイントやブランディングとして活用するのではなく、今後も当たり前のことを当たり前に行うことこそが、脱炭素化に繋がって行くと考えています」

――4年ぶりの開催となるJIMTOFではどういった提案を。

「今回はプレート加工機を中心とした展示を行います。小型のプレートミルを1台、両頭フライス盤を大小2台出展します。大きいほうは新機種で、従来機より機械剛性やスピンドルを見直し、およそ15倍の切削能力を有しています。日本以上に重切削能力が求められる欧米の市場も意識した開発をしました。また、門形だったクランプをC型に変更し、作業性を向上させるなど使いやすさも高めています」

武田機械2.jpg

JIMTOF2022に出品予定の両頭フライス盤新機種


2022910日号掲載)