1. トップページ
  2. インタビュー
  3. サンドビック 執行役員 コロマントカンパニー副社長 髙宮 真一 氏

インタビュー

サンドビック 執行役員 コロマントカンパニー副社長 髙宮 真一 氏

投稿日時
2022/10/04 09:45
更新日時
2022/10/04 09:51

機械加工と前後工程の一括提案へ

グローバルでM&Aを推進するサンドビック。工具メーカーにとどまらず「Mastercam」開発元のCNC Software社なども傘下に加えるが、狙いのひとつはEV化を見据えたメニューの拡充だという。一方でGX(グリーントランスフォーメーション)・DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた提案にも力を注ぐ。一連の取組みについてコロマントカンパニー副社長の髙宮真一氏に聞いた。

――国内の景況感は。

「受注は第1四半期まで非常に好調でしたが、第2四半期から自動車の減産の影響を受けていわゆる『中凹み(東・西日本は好調で中部がやや苦戦)』の状況です。ただ業界で濃淡があり、半導体や航空機ではかなり大きく売上を伸ばしました。また工作機械の納期が伸びて工具の注文がずれ込んでいますが、部材不足が改善すれば受注の底上げが期待できます。自動車も足元では改善基調。仮にこの傾向が続けば好調な東南アジアの伸び率に比較的近づけるのではと考えています」

――EV化が進むなか、貴社はどのような取組みを進めますか。

「標準品から特殊品まですべてを網羅するため、グローバルでM&Aを推進中です。今年もスペインとスイスの中堅工具メーカーを買収しましたが、我々が注力したかった特殊ノウハウおよびソリッドエリアに強い企業。基本は我々自身で工具開発を行い、特殊なノウハウが必要な部分をM&Aで強化する戦略です。EV部品はエンジンと違い、いかにパッケージ全体を取り込めるかが勝負。スポット的な工具提供にとどまらず、全メニューをワンパッケージで提案できる『幅』の獲得に努めます」

――工具メーカーに加え、昨年には「Mastercam」開発元のCNC Software社をM&Aされました。

2020年にNCシミュレーションソフトを展開するCGTech社も買収しましたが、狙いは機械加工の前工程を取り込むこと。我々のユーザーでも生産技術は特に人手不足で、機械加工にCAD/CAM/CAEなど前後工程を加えた一貫提案が強く求められています。足元でも、CAMを含めた一括請け負いで受注を獲得するなどグローバルでM&Aの効果が表れてきました。日本でも営業自身がCAMを用いた簡単なサービスを行えるようになり、この営業技術力は我々のアドバンテージです」

■人の介在を 減らす工

――脱炭素に向けた取組みはいかがでしょう。

「様々なメニューを同時並行で進めますが、外せないのが超硬工具の再利用。我々の工具リサイクル率は他社を圧倒しており、最終的にリサイクル率90%を目指していますが決して無理な目標ではありません。イチからの生産と比べCO240%、エネルギーを約70%削減可能で、ユーザーは我々のチップを使うだけで間接的にCO2排出を抑制できます。加えて営業面では、EV向けなどに提案しているアルミ合金向けフライスカッター『M5シリーズ』の販売を強化中です。他社製品と比べた優位点はバリが圧倒的に抑制できること。バリを抑えるため工程を増やしたり、あるいはバリ取りを行う必要がなくなりCO2排出抑制に大いに貢献します。加工条件を上げることで機械稼働を短縮し、電力消費も抑えられます」

――M5シリーズの売れ行きは。

「以前から自動車のOEM企業やティア1メーカーなど量産ユーザー向けに提案してきましたが、ここにきて採用が増え始めました。アルミはテスト期間が長く他の工具より時間を要しますが、採用が決まれば後はスムーズです。EV化で自動車のアルミ使用量は増加傾向。今後は30番台のマシンユーザーに向けて提案を強めます」

――ユーザーのDXに資する取組みは。

「センサ内蔵の防振工具『Silent Toolsプラス』を提案します。これはびびりや面粗さなど、加工状況をリアルタイムで可視化するデジタル工具。従来は加工後に測定・分析を行い必要に応じて再加工しますが、Silent Toolsプラスなら異常を即把握して補正し、人の介在を減らせます。こうしたハードに加え様々なアプリケーションも展開中で、被削材や加工条件から推奨工具を導く『CoroPlusツールガイド』や、カタログにない準標準品の図面を簡単に出力するソフトなど加工をサポートするデジタルツールを広く揃えています。ハード・ソフトの両面でDXを支援する方針です」

――EVDXGXに対する取組みをうかがってきましたが、貴社の考えるこれからのモノづくりに必要とされる工具とは。

「やはり人の介在を減らすことがモノづくりにおける長年の課題であり挑戦。そこに貢献する、Silent Toolsプラスのようなデジタル工具が必要とされるのではないでしょうか。バリを抑えるM5シリーズもそうですが、工程全体で人の介在を減らし、間接的に脱炭素に貢献できる工具の需要が高まると見ており、我々も提案を強化します」

MAIN02.jpg

EV向けに提案を強めるアルミ合金専用フライスカッター「M5シリーズ」。様々な種類があるが、いずれも特長はバリの圧倒的な抑制だという

(2022年9月25日号掲載)