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インタビュー

スター精機 代表取締役社長 塩谷 陽一 氏

直交ロボットの総合メーカーへ

射出成形機用の取出ロボットでトップシェアを握るスター精機が、「直交ロボットの総合メーカー」を掲げ新領域へ攻勢を強めている。物流や工作機械業界向けの製品を拡充し、新たな成長の柱を模索。一方で、取出ロボットのモジュール化など社内の変革も推進する。「新領域で成果を出すためには確かなベースが不可欠」と話す塩谷陽一社長に、一連の取組みの狙いを聞いた。

 ――「直交ロボットの総合メーカー」を標榜されています。

「我々は射出成形機の取出に用いる直交ロボットに狙いを定め、その分野に精通し成長してきました。しかし現在、国内の射出成形市場は頭打ち。そこで今年から新たな中期経営計画を始動させ、広い分野へ技術を展開しようとしています。手始めに国際総合物流展で直交ロボットを用いたパレタイザーを披露しましたが、今年のJIMTOFでも工作機械メーカーと共同でガントリーロボットを出品予定。他にもSIer向けにロボットの走行軸を上市しています。今後は様々な領域に直交ロボットと直交軸の『良さ』を提案する方針です」

――ご自身の考える直交ロボットの良さは。

「動作範囲が明確で扱いやすい点です。動作が円弧の多関節ロボットと比べ、安全柵を設置しても圧倒的に小さく済みます。国際物流総合展にもロボットパレタイザPXTシリーズ』を出品しましたが、全高2㍍(20㌔可搬)で縦にも横にもコンパクト。とはいえ今後はこの製品のみを推すのでなく、需要を見極めラインアップの素早い拡充に努めます」

――開発の方向性は。

「物流向けに検討しているのは『非マスターレス』の求めやすいデパレタイザー。制御も含め内製し、マスターレスのデパレタイザーと比べ競争力のある製品に仕立てるつもりです。我々は直交ロボットを鉄の削りから自社生産しています。コストの要望に応える体力は十分備えていますし、ソフト開発を行うステルテックというグループ企業もあり様々な要望に対応できます。またロボットハンドの自社ブランドも展開しており、今後はTP箱に対応するハンドなど、新領域に向けた開発にも注力します。TP箱は箱同士が篏合するため把持が困難ですが、すでにTP箱のパレタイズロボットの納入実績もあります」

■製造のモジュール化も

――射出成形を手掛ける国盛化学やロボットSIerのスターテクノなどグループ企業の社長も兼務されています。どう協業しますか。

「スターテクノはSIerとして、多軸ロボットを使った一品モノの自動化システムを手掛けてきました。これはスター精機の手が及ばない部分を補う目的もありますが、新分野への挑戦を見据えた『試金石』でもあります。つまりスターテクノが手掛けた設備のうち、リピートが見込めるものをグループの力で汎用機化する考えです。また先述のステルテックは、生産のリアルタイム監視などIoTシステムが得意。こうしたグループの技術でまずは自社のスマートファクトリー化を進め、ゆくゆくはユーザーへ展開します」

――グループ内のニーズを開発につなげる。

「そもそもスター精機は国盛化学が成形した樹脂製品を取り出すロボットが出発点。常に社内課題を意識し、それに対するソリューションを内製して開発に活かすのが我々の発展の礎で、この方向性をさらに強化します。要は『自社が欲しい製品は他社も欲しいはず』という考え方で、ユーザーの役に立つ製品を提供するためにニーズを社内で産み出し、いち早く実践を行うことが重要です。また、並行してスター精機では主力の取出ロボットのモジュール化も進めます」

――モジュール化について具体的に。

「射出成形品の取出ロボットは現状、オプション対応のためある程度の都度設計が必要ですが、これをユーザビリティはそのままにモジュール化できるよう生産工程を変革します。モジュール化は24年発売の取出ロボットから実装する計画で、外部の識者を招聘して特務チームを結成し『設計レス・見積レス・部品レス・調整レス』の4レスを目指しています。その成果は物流や工作機械など新分野にも展開し、競合と一線を画す価値提供につなげます」

――新分野への進出と、モジュール化を同時に進めると。

「成長のために新分野に向けた展開は必要ですが、そのベースが強固でないと成果は出せません。有望領域の見極めとグループの力を活かした製品開発、競争力強化に向けた生産改革を並行し、3年後に新領域の売上を全体の1割に、6年後に3割に伸ばすことを目指します」

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2022925日号掲載)