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インタビュー

髙丸工業 専務 髙丸 泰幸 氏 
遠隔溶接ロボットポータブル化へ

投稿日時
2026/09/10 15:46
更新日時
2026/09/10 15:49

髙丸工業は、親子二代のバトンを経て開発した遠隔溶接ロボットシステム『WELDEMOTO』の初号機を納入した。同社の髙丸泰幸専務は、個人の能力強化、テクノロジー活用、共創の強化の3本柱を推進、事業拡大だけでなく「社員の幸福度向上」を目指す次世代リーダーだ。SIer業界の景況感から造船分野のリアルな現状、そして「ロボットで人を呼び込む」という中小企業の逆転採用戦略まで、同社の次なる一手を聞いた。

髙丸泰幸専務 工場には造船向け設備用の大型部品が並ぶ

――SIer全体の景況感と御社の状況についてお聞かせください。

「景気が悪い時期はSIer同士で『仕事はないか』と連絡し合うこともあるが、最近はそれが減った印象です。ナフサ不足などの供給網の混乱が一定の終息を見せ、案件が順調に回り始めた印象です。当社では1年前から造船関連の受注が増加しており、大型の特殊設備が得意分野のため、ロボットSIerなのに自社工場にロボットがあまりない状況です(笑)。また中小企業でも、大規模成長投資補助金などを背景に、ロボット6〜9台を使用する数億円規模の自動化案件が増えました。半面、人手不足を補うための小規模な自動化案件も増えており、直近の印象としては受注の規模感は二極化しています」

――造船業界の自動化はブルーオーシャンと期待されています。

「外からはそう見えますが、現場のリアルで言えば、本格的な多関節ロボットを組み込む案件はまだ少なく、ターニングロールやマニプレーターといった大型治具の納入が中心です。しかし、その先にある本格自動化は間違いなく巨大な市場です。そこで当社は兵庫県の補助事業に採択していただき、遠隔操作溶接ロボットシステム『WELDEMOTO』のポータブル(可搬)化の研究開発をスタートさせました」

「ファナックが協働ロボット『CRX』シリーズで打ち出した『ロボットを現場に持ち込んで移動しながら溶接する』というコンセプトには深く共感しています。一方で海外、特に中国では産業用ロボットをフォークリフトの荷台に載せ、現場を移動しながら強引に溶接させるような、日本では考えられないラディカルなトライ&エラーを回しています。当社の髙丸社長はSIer協会で『時代に即した安全基準のアップデート』の議論をリードしていますが、日本の安全確保とイノベーションのスピードの両立は大きなテーマです。強引な開発で知見を溜める中国勢に技術を確立される前に、日本ならではの高い信頼性を備えたポータブルシステムを完成させ、市場を獲得していきます」

――直感的に扱える『WELDEMOTO』が初納入を果たしました。

「初納入先は宝角合金製作所様です。従来は外部委託していた特定のワークを自社ロボット化する目的でしたのでティーチングプレイバック方式でもよいのですが、他の多品種少量品への展開や技術獲得、作業の属人化解消といった長期的メリットをご提案し、採用いただきました」

「さらに切実なのが『採用』の問題です。中小企業が『溶接作業員募集』と求人を出しても若手は集まりません。ところが同社が『溶接ロボットオペレーター募集』と打ち出したところ、わずか2週間で3人の応募があり採用に至りました。一般的には『AIやロボットに仕事が奪われる』と言われますが、人手不足に悩む中小企業の現場は真逆です。ロボットで人を減らすのではなく、『最新ツールがあるからこそ若い人を呼び込める』。これこそが、中小企業がロボットを導入すべき本質的な価値のひとつであり現場のリアルだと実感しています」

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宝角合金製作所に初導入された『WELDEMOTO』




ウエルディングショーに可搬溶接の概念機


髙丸工業は「国際ウエルディングショー」に『WELDEMOTO』のポータブル概念機を出品する(小間番号2-40)。ファナック製「CRX-5iA」とサーボロボ社のデータセンサーを組み合わせた台車型システムで、手押しで移動させ、電源をつなぐだけで溶接が行える。

髙丸専務は「展示会後にCRX3iAを用いた機器構成での開発を加速し、プロトタイプを年度内に完成させ、年明け1月には能力確認を実施。現場でブラッシュアップを重ね、来年度中に製品化したい」と意気込む。多くの開発が完全自動化を目指す中、同社はあえて遠隔で人間の判断を介入させる手法をとる。「全自動より、人の判断を簡略化・サポートする方が現場実装は圧倒的に早い」と見据えている。



(日本物流新聞2026年9月10日号掲載)