インタビュー
キャプテンインダストリーズ 代表取締役社長 山下 宏 氏
- 投稿日時
- 2022/03/30 14:21
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
ありそうでなかった機械連動型の録画・判別ソフト
「世界の一流商品に賭ける機械の専門商社」と自負するキャプテンインダストリーズ。創業からもうすぐ48年を迎えるいま、エンジニアリング会社の顔を見せ始めた。蓄積したノウハウで先月開発したというソフトはどんなものなのか。
――工作機械受注をはじめとする生産財マーケットはおおむね好調です。この好調はいつまで続きそうでしょうか。
「ウクライナ侵攻もあるので何とも言えませんが、コロナが収束してきているのでこの水準は維持すると思います。ウクライナ問題が収まればおそらく年末までぐーっと延びるのではないでしょうか」
――貴社主力製品である機上計測システムやデータ管理システムは販売好調と聞きます。
「当社はもともと工作機械周辺機器をメインで販売しているので、今は受注ベースで前年に比べて倍増しています。コロナに伴う部品調達やキャパの問題もあるので、生産ベースだと20~30%アップくらいです。ただ、工作機械の需要は単価の高い高機能機にシフトしつつあるので、工作機械受注額の拡大ペースほど当社の売上高が上がるわけではありません」
――生産財業界の課題として長らく生産性の向上がテーマとしてありますが、コロナが加わって、なるべく人を介さずに自動で生産して、しかも品質のばらつきをなくそうという方向です。
「そうですね。ビデオでの立会いだけで4千万円の機械を購入されるお客様がいらっしゃいます。以前購入した商品を追加でというパターンもあるのでしょうけれど、そんな時代が来ているんですね。ですから今までのようにモノを販売しているだけだと、目減りします。3軸や2軸制御のアジアの安い機械では日本は太刀打ちできないと思います。日本のエンジニアがアジアに流れているので、技術はできています。だから日本の工作機械メーカーさんは5軸マシン+DXと、デジタル技術を採り入れた自動化を急速に進めている感じですね」
――貴社は2月末に機械連動型の録画・判別ソフト「ディヴィーノ」を発売しました。
「このシステムはありそうでないんですよ。自動化で重要なのは状況を見る目です。でもカメラを機械の中に付けても詳しく見ることはできませんでした。切削油がかかると見えなくなるから。実際にカメラで見たいものは、ドライブレコーダーと同じように、事故が起こったときの瞬間ですよね。普通に問題なく動作している画像は見なくていいんです。何かあったときにその証拠が見たい。だから常時ずっと録画しておいて何かあったときの画像だけを残せばいいんです。そんなソフトと機内専用カメラを提案しています」
■クリアに見る独カメラ
――ドイツ製のロトクリアカメラを使うんですね。
「そうです、一昨年発売したドイツ製。システムには機能が2つあって、1つはドライブレコーダー。このカメラは本当に見るだけですが、非常にクリアに見える。主軸のすぐ近くに付けても、ザバザバ水がかかっても見える。レンズの前に付けたガラスのディスクが毎分4千回転するからです。船のフロントガラスに付けられたものと同じ原理です。今までのカメラは加工位置から遠く離して設置するので、全体しか見えませんでした。しかも曇ったりします。ロトクリアカメラを発売して1年半くらい経つと、これを使って自動化を進めたいというお客様の声が寄せられました。それに応えたのがディヴィーノです」
――ソフトは輸入品でなく自社で開発された。
「はい、当社オリジナルです。工作機械のプログラムと連動させました。加工が始まったら録画を開始、加工が終わったら録画を停止します。録画中に何かアラームが起こると、そのアラーム信号を受信して録画も止まり、動画が保存されます。それを加工のサイクルに合わせて10分だけとか20分だけに設定できるので、問題なく設定時間を過ぎれば上書きされます。ディヴィーノに残っている映像から何が起こったのかを確認できます。もう1つの機能はワークが正しいかどうかを判断し、ポカミスをなくします。加工前に加工すべきワークのマスター画像を先に撮影しておくことで。正しいワークでも位置がずれていることも判断します」
――営業活動にも力を入れていますか。
「新聞広告を打っているほか、営業担当者のトレーニングを行っているところです。実機にカメラを付けてソフトを動かすのは大変なので、パソコンについているカメラを使って、機械を動かしているのと同じように、そのシミュレーターで動画を撮るなどしています。場合によってはお客様のパソコンでそんなトライアルを1カ月くらいのライセンスで使ってもらおうと考えています。今年度100セットは売りたいですね」
「ディヴィーノ」で録画したリアルタイム画像(左)とマスタ画像(右)。人の目で見落としそうなマッチングエラーを指摘する。
(2022年3月25日号掲載)