インタビュー
ダイヘン 執行役員 中川 大輔 氏
溶接・搬送の「知能化パッケージ」で攻勢
- 投稿日時
- 2026/05/22 15:39
- 更新日時
- 2026/05/22 15:47
造船自動化と海外市場に活路
ダイヘンのFAロボット事業が、構造的な転換期を迎えている。国内自動車産業の設備投資の様子見や欧州景気の後退という逆風にさらされたが、米国でのデータセンター向けサーバーラック需要という特需や、中国・インドでの底堅い伸びが下支えした。中小企業に向け、1台で複数の工程を担える協働ロボットの提案やコンパクトなAMR「AiTran」の訴求で足元を固める一方、AIを実装した溶接パッケージの投入や、追い風が吹く造船業界向けの自動化提案など新たな分野でも自動化を加速させる構えだ。

ダイヘン 執行役員 FAロボット事業部長 中川 大輔 氏
――2025年度のFA・ロボット市況、足元の手応えをお聞かせください。
「25年度は国内自動車業界のモデルチェンジが少なく、自動車向けのライン生産のロボットが苦戦しました。一方、初めて自動化に取り組む層向けに協働ロボットの引き合いは増えましたが、自動車の落ち込みをカバーするには至りませんでした。M&Aを通して力を入れている欧州も、景気停滞で投資先送りが続いています。しかし米国では内需が拡大しており、特にAI関連のデータセンター建設に伴うサーバーラックの溶接需要が『特需』と言えるほど伸びています。中国もEV向けなどで前年度より伸長、インドも自動車向けで2割ほど増えました。25年度の売上は微増で、中国など価格競争の激しい地域の売上比率が高いため、利益面では減収となりました」
――26年度の見通しは。
「先送りとなっていた自動車の設備投資にもマイナーチェンジでの需要が戻りつつあるほか、造船分野の自動化を推進します。具体的には、自律走行搬送ロボット『AiTran(アイトラン)』に協働ロボットを搭載したパッケージを提案します。造船の巨大構造物に対し、ロボットが移動しながら溶接し、溶接ビードを用いて行われる『文字書き』などの付随作業もこなすソフトも展開します。 足場が悪い造船現場に対応するため、AiTranの4輪駆動の走破性をさらに強化します。現在は段差10㍉、傾斜6度ですが、より悪路に対応できるようスペックを引き上げます」
■コントローラーを小型化、AI搭載へ
――ロボットテクノロジージャパン(RTJ)の出展コンセプトは。
「名古屋という地域柄、自動車関連のユーザーに向けて溶接を主とした自動化ソリューションをしっかりPRします。協働ロボット1台にツールチェンジャーを活用し複数の役割を担わせた展示で、設備投資を抑えながら自動化できる取り入れやすい提案を見ていただきたい。物流・搬送関連ではコンパクトで全方位移動ができるAiTranを紹介します」
――実需を捉えた製品を訴求すると。一方で、フィジカルAIなど製品開発の方向性について教えてください。
「我々はコントローラー内部にAIを組み込んだ『知能化パッケージ』で差別化を狙います。例えば画像認識で溶接箇所を特定し、最適な角度や電流値を自動生成する機能を今年度中に確立したい。ゆくゆくは複雑な溶接条件や構造体にも対応できるよう高めていきたいです。また、コントローラー自体も容積を7分の1まで小型化し、設備の省スペース化を進めます。コンパクトかつ高い位置決め精度を持つAiTranの上に協働ロボットを載せ、狭い工場通路を走っていくロボットの開発も進めていきます」
――マザー工場である六甲事業所の自動化も進んでいますね。
「標準機種の自動化率は現在約85%ですが、今年度はAiTranを用いた配膳や工程間搬送を導入し、完全自動化を目指します。難易度の高い『ロボット筐体内の配線接続』についても、AIによる画像認識と把持技術でメドが立ってきました。『無理だ』と言われてきた領域まで、自社技術で自動化を完遂させます」
六甲テクニカルセンターがリニューアル
AMRと協働ロボットの実演デモスペース設置
ダイヘンは4月、六甲テクニカルセンターのショールームをリニューアルオープンした。今回の刷新では、「1台複数役」をコンセプトに、搬送ロボットと協働ロボットを組み合せたデモエリアを用意。ロボットが自ら移動し作業に応じてツールを持ち替えることで、1台で複数工程の自動化ができる様子を実演。研磨、検査、搬送、箱詰めという4工程を1台で完結させる様子を公開している。また、自動搬送の核となるAiTranも牽引型やリフトアップ型など3台体制で常設。独自制御による駆動で旋回半径の短さを活かした狭小空間での走行を実演している。

4月にリニューアルし、デモエリアが新設された六甲テクニカルセンターのショールーム。画像は協働ロボット「FD-VC8」とAMR「AiTran」を統合した「移動ロボット」による箱詰め作業の自動化の実演。
執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。
(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)