インタビュー
オーエスジーダイヤモンドツール 社長 青山 拓磨 氏
ダイヤ工具で金型手磨きを切削仕上げに
- 投稿日時
- 2026/04/08 09:00
- 更新日時
- 2026/04/14 09:57
単結晶ダイヤ工具製造は自動化ねらう
ダイヤモンド切削工具を手掛ける、オーエスジーダイヤモンドツール(滋賀県高島市)が新たな舵取りを迎えた。今年2月に社長に就任した青山拓磨氏は、オーエスジーUSAでの経験や、オーエスジーベトナムの社長を務めた国際派だ。グループ全体が微細加工分野を強化する中、熟練工の「匠の技」に依存してきたダイヤモンド工具の世界で、青山社長はいかにして「自動化・市場拡大」に切り込むのか話を聞いた。

プロフィール
青山 拓磨(あおやま・たくま)氏
1980年2月18日生まれ、愛知県岡崎市出身。岐阜大学院工学研究学科修士修了後、渡英を経て帰国後は英会話講師という異色のキャリアを持つ。2007年にオーエスジー入社。設計開発を経験後、オーエスジー USAに出向し、オーエスジーベトナムの現法社長という。2026年2月より現職。故・大澤輝秀前会長の「チャレンジを後押しする精神」を信条とし、「失敗を恐れない会社」作りを掲げる。
――社長就任にあたり、まず着手すべき経営課題は。
「全体を俯瞰して感じるのは、ダイヤモンド工具の工程には手作業が非常に多いということです。業界全体で見ても自動化は進んでおらず、いまだに『匠の世界』。職人技に頼り切っていては、事業としての継続性が保てません。製造面において『自動化』は最優先のキーワード。一方、ダイヤモンド工具は極めてニッチな領域で、裾野を広げていくことも重要なポイントです。生産技術を高めると同時に、業界の課題である自動化をきっちりとやり抜く。それが一番の課題で優先事項です」
――自動化が難しいとされる要因はどこにありますか。
「一般的にダイヤモンド工具にはPCD(多結晶)と単結晶がありますが、この二つは似て非なるもの。PCDは一部自動化が進んでいますが、単結晶はまさに職人芸。刃付けの要求精度がPCDのミクロン台に対し、単結晶はナノの世界です。スマホのレンズやコンタクトレンズ用では50㌨という輪郭精度が求められます。さらに、単結晶には原子密度が最も高く、摩耗しにくい面が存在します。この面は『加工しにくい=摩耗しにくい』という特性があり、逆にこの性質を活かせばこれまでにない耐摩耗性を持った工具を生み出す可能性もありますが、作る際には一番の障壁。これまでは職人が石の向きを見極めていましたが、ここをレーザー加工機の高精度化によって突破したい。レーザーであれば結晶方位に関係なく粗取りから仕上げまでをカバーできる。自社でレーザー技術を深め、単結晶工具の仕上げまでをも自動化の射程に入れたいと考えています」

標準品シリーズのラインナップ「N-Radius Mill」は鏡面加工を切削で完結できる
――青山社長が目指す「自動化」の定義とは。
「私が言う自動化とは、一工程を機械に置き換えすることではなく、夜間に人がつかずに完成品まで仕上がること。1個作って終わりではなく、複数のロットを一つの加工機で夜通し完成させるレベルを目指します。そのためには、ユニット自体の高精度化が不可欠です。例えばバイトのR旋回軸そのものをサブミクロン単位で動くよう作り込む。現在、従業員は約60人ですが、人数を増やさずに生産量を倍増させたい。採用コストや人件費が上がる中で、工程費を抑えて利益を確保するためには、『自動化』は必須です」
■ダイヤ工具で後工程を変える
――裾野を広げるという点では。
「単なる『切削工具の置き換え』ではなく、その一歩先にある『工程全体の変革』を狙っています。現在、多くの現場で最終的な鏡面仕上げや磨き作業は、熟練の職人による手作業。ここを当社のダイヤモンド工具による切削に置き換え、工数を劇的に減らしたい。『切削+手磨き』だった工程を、『ダイヤモンド工具による一発仕上げ』へと集約する提案です。局所的なコストダウンではなく、1本の工具で後工程まで変えていく。ユーザーとダイレクトにつながる技術サポートや、学術・工作機械メーカーとの共同研究を通じたコミュニティ形成も模索していきます」
――標準品の拡充と、グローバル展開については。
「当社の売り上げは国内が大半ですが、今後は世界の工場であるアジアや、市場が大きいアメリカへ展開させていきたい。その要となるのが標準品『N―BRAND』で、近々、単結晶の溝入れバイトやPCDドリルを拡充し、現在の28品目から増やします。『明日手に入る単結晶工具』としての地位を築き、オーエスジーグループの販売網という強みを最大限に活かします。特に得意とする半導体関係の、セラミックスや石英、銅加工の実績や知見を武器に切り込みたいです」
―― 一昨年にグループ化したコンツール社(本社・オランダ)やマイクロ・ダイヤモンド事業(神奈川県横浜市)とのシナジーは。
「マイクロ・ダイヤモンド事業は単結晶のミーリング工具、コンツール社はこれまで我々の領域外の単結晶工具による旋削加工のナノ市場に強みを持っています。製造面でも、単結晶のラップ加工や最終刃付けの技術など、相互に学ぶべき点が多い。匠の技を『自動化』に継承し、唯一無二のダイヤモンド工具メーカーを目指します。これから5年で売上2倍、そして利益率の向上が目標です」
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)